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表紙、◎、◎、◎、◎、◎
第2章 富山の舞台
第2節 人口動態の転換
第6項 社会動態 ―増加する外国人―
(1) 性別年齢別社会移動率
'10年代の人口東京一極集中再拡大の動きの中での、富山県の純移動(流出入差)について、年齢別に見ると、男では、大学進学時の流出、卒業時の均衡、20歳台半ばでの流出が目立ち、女では、20歳台前半の就職時の流出が目立つ。 過去の性別年齢別純移動では、20歳台半ばからのUターン人口流入超過が明確にあったが、現在では、これが消えている。
なお、ここでの統計には、外国人の流出が含まれていることに留意が必要である。
また、東京圏への人口集中で就職のための流入は女が多くなっているという内閣府の分析がある(2015.07.11.朝日新聞)。
⇒過去の性別年齢別純移動の分析
(Mar.14,2021Rev./Jun.05,2015Add.)
(2) 外国人の移動
これまで人口の社会移動について、日本人・外国人、都道府県間・国際間の転出入を包括的に把握する単一の統計はなかった。これに対して2016年(2015年10月〜2016年9月)から総務省が「人口推計」で包括的に整理した社会移動を提示している。また、外国人も住民基本台帳に掲載されることとなり、住民基本台帳によっても地域の人口が包括的に把握されるようになっている。
2018年10月までの1年間の富山県の人口の社会移動が転入超過であったと報道されているが、実際は、外国人の大幅流入超によるものである。
富山県の県境を越える人口移動のうち、まず日本人の移動で国内の都道府県間移動については、転出13千人強に対して、転入は2018年に12千人を割っている。一方、国際移動については転出入はそれぞれ5千人弱で均衡している。
他方、外国人の国内移動はそれぞれ千人台で転入が若干上回っており、国際移動では2018年に転出10.7千人に対して転入12.6千人と大きく上回っている。
以上のような移動の結果、2018年10月までの1年間において、日本人は1,574人の大幅な転出超過となったが、外国人は2,213人の転入超過となっており、総人口では639人の転入超過となった。
2018年はすべての都道府県で外国人が流入超過となっているが、日本人は東京圏の1都3県、愛知県、大阪府、福岡県の7都府県のみが流入超過であった。この結果総人口については、15都府県で流入超過となった。
富山県については、外国人の流入超過率(総人口比)が0.21%で都道府県の中で4番目に高く、日本人は-0.15%で18番目であったが、総人口では0.06%で10番目の位置となっている。
人口規模についての評価はともかくとして、外国人は景気変動により流出入が大きく変化する可能性が高く、結果として脆弱な社会となっていく虞がある。これを防ぐには、外国人を移民として受け入れ定住を促していく必要があろう。しかし、我々は、このような状況を理解し、覚悟をしているのであろうか。人手不足の補填ばかりに関心がいって、どのような社会を創っていくかの視点が欠けているのではなかろうか。
こうした中で、富山県としてはどのような方向に進むのか。現状は国による制度変更と地域の経済界の要望に沿い外国人の流入が進んでいるが、地域なりの検討・議論・行動が必要であろう。
⇒外国人の国際移動
⇒国籍別動向(第8項 外国人)
(統計データ)
(3) 県境超え移動
転入超過都道府県として、まず東京圏の4都県及び福岡県、大阪府の合計6都府県があり、さらに、これらの隣接県として山梨県、滋賀県、京都府、茨城県、群馬県がある。
ただし、後述するが、コロナ禍で、東京都の超過幅は縮小し、周辺県で上昇あるいは流入超過への転換が起こっている。また、愛知県は流出超過に転換している。
大都市圏への人口集中をどう評価するか。その他地域での人口流出そして人口減少が多様な問題をもたらしていることは間違いない。しかし、大都市圏自体も多様な厳しい問題を抱えている。
2018年の1月末に多少の積雪で自動車道等の大混乱があった。このように、大都市圏には、ちょっとした地震、暴風雨等の自然災害で大混乱をもたらす脆弱性がある。
それではなぜ大都市圏に人が集まり続けるのか、教育の場、仕事の場がそこに集中していることが大きな要因であろう。そして多様な施設・イベントがあり、魅力があることも否めない。
しかし、今後は、大都市圏の危険性を鑑みて、それ以外の地域に住もうとする人も増えてくるのではなかろうか。
大都市圏を離れた地域にあっては、働き所得を得れる場があることが前提だが、自分たちなりの、安全で住み易い場を築いていけばいいのではなかろうか。
⇒東京一極集中
⇒移住希望地ランキング
(Jan.30,2022)
都道府県毎の転入率について、全国で最も低いのは、北海道であるが、これを含めて、以下日本海沿岸の諸県が続いている。また、四国でも低い。
富山県で低いのは、地方中枢都市的機能を持たないこと、及び首都圏に適度に近く、各種の事業経営で駐在員を敢えて置く必要性が少ないことなどと説明できよう。
他方、転入の多いのは、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県と首都圏が並んでいる。
転出については、当然予想されることだが、転入と高い相関を持っている。
転出入の差について、富山県は、1.8人/千人の転出超過であり、超過率では、大きい県から数えて30番目である。
(統計データ)
住民基本台帳による人口の計算
地域の人口を捉える方法として、住民基本台帳に掲載されている者を数えることもできる。住民基本台帳に外国人も掲載されるようになり、2013年中の移動から日本人・外国人の国際移動も台帳掲載ベース把握できるようになっている。これにより、日本人・外国人の出入国・県際移動をを含む社会移動、出生、死亡が統一的に整理できる。
しかし、上述の総務省の人口推計とはいろいろと異なる結果となっている。
ちなみに、総務省の人口推計では、出入国については、入国管理の際に3か月以上の出国・滞在の申告者を計上している。
これに対して、住民基本台帳では、社会移動は、出生・死亡とともに住民基本台帳への申請ベースで計上される。また、これら以外に、その他の人口の異動として帰化・国籍離脱があり、さらに市町村長の判断で職権により掲載・削除されることもある。実際に富山県では、外国人のその他の人口の異動で削除されている者が年当たりでほぼ千人を超えている。
いずれにしろ、外国人の年々の異動については、利用する統計をしっかりと明記しておく必要がある。
(統計データ)
(4) 県外から県内への移住
2019年度の県内への移住者は、926人であった。ただし、県出身学生のUターンが192人含まれている。
いずれにしろ、この人数は、現時点での富山県での転出超過人口と同程度であり、転出超過人口を半減させている。
市町村別には、富山市が最も多いが、人口比では、小矢部市、朝日町、舟橋村と続く。
ちなみに、ふるとさ回帰支援センターがまとめた都道府県別の移住希望地ランキングでは、富山県は2019年で18位となっている。ただし、2018年は8位であった。
(Jun.11,2020)
(5) 県内市町村間移動
富山県の県内人口移動率(市町村間)は10.5人/千人で、秋田県、鳥取県に次ぐ小さな位置にある。
なお住民基本台帳人口移動報告は市町村間移動の統計であり、富山県では市町村合併が進み全国で市町村数が最も少ないことにも留意が必要である。
富山県と同様に県内移動率の低い県としては、さらに福井、島根と日本海沿岸の県が並んでいる。
この地域はかつて日本の穀倉地帯とも称され平野が広がっており、自動車を利用すれば域内の移動は比較的容易である。このため、仕事等を変わっても、敢えて転居する必要がないことが、域内社会移動の少ない大きな要因となっていると考えられる。(和歌山県の低さは、検討が必要である。)
一方、移動率の高い地域として、まず大都市圏地域及び宮城県、広島県、福岡県などといった地方中枢都市所在県とが挙げられる。さらに北海道、沖縄県があるが、これは、札幌、那覇への人口集中が進んでいるためであろう。なお北海道もこの分類に入れて考えることもできよう。
⇒県内での一極集中
(6) 過去5年間の社会移動 ―高い定住性―
富山県の人口の社会移動率(転居率)は、全国の中でも極めて低く、定住性が高い。
県内での移動率については、市区町村内での移動も含めた率でも、やはりかなり低い。
県境を超えた移動は、基調として流出超過を続けているが、転出入それぞれは次第に減少している。
2020年の国勢調査によれば、富山では5年間に住所を変更していない人の比率が83.8%で、全国で秋田に次いでいる。
⇒国勢調査の移動分析
東北から北陸にかけての日本海沿岸県の定住率は、石川を除いて、高い。これは、水稲栽培の広がる地域に共通した特長となっていると考えられる。
(統計データ)
(7) 社会移動の長期的推移
富山県の2020年1年間での県境を越えた人口移動は、総人口比-0.18%の流出超過であった。
これまで富山県では、1990年代半ばの団塊ジュニア世代Uターン期を除き流出超過が続いている。
富山県内の移動については、1990年代半ばから、団塊ジュニア世代の高校卒業後の就職あるいは進学、さらに大学卒業後の就職による移動があったが、その後次第に減少してきている。ただし、この統計は、市町村内移動は含まれておらず、2005年に移動が急減しているのは、市町村合併により、かなりの移動が統計に含まれなくなったためである。
他方、富山県の県境を超える人口の移動については、1990年代半ばに、団塊ジュニア世代の大学等卒業に伴うUターンによる流入超過があったが、その後は再び流出超過基調が続いている。そして2010年、2011年に一旦小幅のものとなった後、'10年代末に再び若干拡大した。2020年は若干減少しているがこれはコロナ禍による減少であろう。
【@域内移動】
富山県の人口当たりの社会移動数は高度経済成長期から、極めて低い水準で推移している。
ただし、県内移動は、各都道府県の区域内で, 市区町村の境界を越えて住所を移した者の率であり、市町村数の少ない富山や福井は移動が少なくなる傾向があることは避けれない。
各都道府県の年々の移動率については、大きな変動がある地域は少なく、それぞれ一定の水準で推移している。
ただし、兵庫県は、1995年に震災の影響で移動率が高くなったが、その後次第に低下してきている。これと同様に2011年でもまた、震災による移動の急上昇が見られる。
また、北海道では、札幌に向かった移動が進んでいる。宮城県は、1980年代末から移動率が一段高くなっている。
最近年の都道府県内移動率については、横ばいが続いており、コロナ禍の影響は明確でない。
【A域外移動】
(転入)
他方、県境を越えた移動を転入についてみると、全体として、沈静化に向かっている。
なお、東京都の転入については、概ね2000年代初めまで横ばいか続き、その後ゆっくりと低下している。
最近年の転入率についても、横ばいが続いており、コロナ禍の影響は必ずしも明確でない。
(転出)
県外転出率についても、当然ではあるが、沈静化に向かっている。
特に、東京都の転出については、急速な減少となっている。
各地域の転出の水準は、概ねと転入の水準に対応するものとなっている。
ただし、大都市圏を除き、転出は転入に比して、水準が一段高い。
過去半世紀では、1960年代央に団塊の世代が学齢期を通過し、高くなっているが、各都道府県概ね併行して変化してきている。
こうした中で、富山県では、全国の中でも特に低い水準が続いている。これは大学等の収容力が低かったにも拘わらず、働く場が充実しており、就職のための高卒転出者が少なかったためといえよう。
(転入超過)
これまでの推移では、富山などでは1990年代半ばに転入超過となっており、多くの地域でも転出超過率の低下が見られるが、これは、大学等に進学した団塊ジュニア世代のUターン期に当たっている。
過去半世紀の推移では、団塊の世代の移動時に特に純移動(大都市圏への人口集中)が大きかったが、それに較べれば、その後は沈静化している。
最近年の転入超過率については、東京都の大幅減少と周辺県での上昇が見られる。
富山県で流出超過幅の増加が見られるが、コロナ禍以前の2019年から起こっている。
富山県について、外国人の移動を見ると、2019年に転出と転入の逆転が起こっているが、これは景気動向によるものであろうか。
また、2020年からの転出入双方の低下はコロナ禍によるものであろう。
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(Jan.30,2021Rev/Mar.18,2020ReEd/Mar.20,2008Orig.)
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