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過去の性別年齢別純移動の分析
―パターン化した大きな移動―

 全国を範囲とした人口の社会移動の動向は、都市化、進学動向、景気動向の複合として捉えることができよう。同時に、実際の移動には、各世代(コーホート)の移動の履歴が反映されていることに留意しておく必要がある。
 かつて東京圏へ向かった人口の大移動は沈静化し、さらに景気動向の面からもバブル崩壊以降、移動全体が極めて低水準になっている。また、第二次団塊の世代の就学地からのUターン期のピークも既に終了しており、現在では、過去に転出した者のUターンがゆっくり進んでいる。

6つの社会移動要因
―年齢層別社会移動の要因―



 富山県の県境を超える人口の移動は、転出・転入それぞれ年々2万人の規模である。
 このうち国外との移動はそれぞれ5千人前後あり、差引きでは1千人の流入超過となっている。これは主として外国人の移動によるものと推測され、概ね外国人登録者数の増加と対応している。この外国人の年齢別分布は詳らかでなく、以下の説明は、この点を無視したものとなっていることに留意が必要である。外国人の年齢分布は、国勢調査からある程度推測できるかもしれない。

 右の図は、富山県の各年の性別年齢別人口と生命表にある性別年齢別死亡率から年当たりの社会移動率を推計したものである。

 日本人の社会移動の太宗は、会社等での日常的な転勤とそれに同伴する家族の移動であろう。こうした移動は、転出入が概ね均衡していると考えられる。
 これに対して、転出入に差異がでる移動要因をライフサイクルに沿って整理すると6つの内容に分けることができよう。

高校卒業時の大学等への進学
 最も大きな転出超過は、高校を卒業し大学等への進学期に現れる。
 大学等への進学による社会移動は、年々全国広範囲に行われるようになってきている。
 富山県については、県内の大学等への転入もあるが、合計では収容力率が0.5を割っており、転出超過となっている。
 性別には、男の転出が女より多い。
 なお、移動率については、大学等進学時に即座に移動を届けるのは半数以下と見られ、統計に現れた数値を鵜呑みにすることには問題がある。

大学等卒業時の就職転出とUターン転入
 次いで、大学等卒業時の移動がある。
 国土庁の調査では、富山県のUターン率は全国でも高く、かつてはこの年齢層では明確な転入超過が見られた。
 しかし、最近では、転出超過となっている。これは、就職期に最終的に移動を届けるケースがあること、また就職による転出があることなどと重なった結果であろう。
 なお、富山県では、高校卒業時に就職による県外転出が殆どない。また、かつての経済の高度成長期には中学卒業時の集団就職等による女の転入超過が見られたが、現在は消滅している。
 この年齢層の社会移動については、さらに精査が必要のようだ。

結婚時の男女の不均衡の是正等
 進学等を契機とした社会移動に男女間の格差があるため、結婚期には、それを調整する社会移動がある。
 大学等卒業後のUターンと厳密な区分はできないが、女の転入超過が大きく減少し、年齢によっては転出超過になっている。
 男に転入超過の山があるのは、大学等卒業後のUターンの山が単に分断されている可能性もあるが、結婚を契機としてUターンする者、短期間の修行を終えて帰って来る企業経営者の2代目など多様な事例があろう。

中年期の生活の転換を伴うUターン等
 30歳位いからは、男女とも転入超過が続く。これはUターンが主体と考えられる。
 歳とともにその率は低下しているが、男女比較では、女性の低下が若干先行しており、夫婦の年齢差に対応しているものと見られる。

幼少期の家族に同伴したIターン
 30前後からのUターンについては、家族同伴も多く、幼少期の年齢層では、若年ほど大きな転入超過となっている。

高齢期の退職Uターン
 60歳代以降の年齢層では、不規則な移動率を示すが、基調として転入超過となっている。これは、かつて転出した人たちが終の住家としてUターンしているものと見られる。
 以前は、この年齢層では、自立しての生活が困難となった高齢者が、かつて転出していった子息の近くへ転出している転出超過が見られた。さらにその前では、この年齢層の移動はほとんど見られなかった。


社会移動率の累積計算

 人口の性別年齢別の純移動率を1から引けば、それぞれの残存率になる。これを年齢に沿って積算していけば、その時点での移動率が続くとした場合の各年齢集団の長期的な残存率(移動率)となる。

 ただし、各年齢層の社会移動は当該コーホート集団のこれまでの移動の履歴に大きく依存していると推測され、結果として、性別年齢別の純移動率は次第に変動していくため、この累積計算は積極的な意味が乏しい。



 長期間の人口推計を行う際には、この変動を織り込むことも必要であろう。しかし、この変動を予測した人口推計はまだ試みていない。

(統計データ)

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(Mar.20,2008Re-Ed./Mar.25,2006.Rev./Jun.07,1997.Orig.)