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第2章 富山の舞台
第2節 人口動態の転換

第8項 外国人
―急増する東・東南・南アジアの人々―

(1) 外国人の受入れ制度の推移
(2) 富山県での推移
(3) 都道府県比較
(4) 市町村比較
(5) 技能実習の課題
(6) コロナ禍での変動

 富山県でも外国人が急増している。単に労働力の導入としてでなく、生活を営む人として受け入れていく態勢の整備が急務であろう。


(1) 外国人の受入れ制度の推移
 最近の外国人の流入の変化は、労働力事情等の変遷と大きく関連している。
 1980年代には、人口構造の変化による新卒労働力の漸減、若者の高学歴化、さらには単純労働の敬遠等により労働力不足が見えはじめ、1981年には、外国人研修制度が創設されている。
 東南アジア諸国における出稼ぎのための外国での就労は、中東のオイルマネーによる好景気の終了から日本が注目され、観光・興行ビザ来日による不法就労等が進んだ。この時期に富山県でもフィリピン等からの入国が若干進んでいる。

 さらに1980年代末のバブル経済の中で人手不足が明確になってきて、1990年には、外国人研修受け入れに商工会等による団体監理型が導入された。これにより、中国等からの研修生(実地研修を含む)の流入が増加し始めた。
 また、1990年に日系人職種制限なしの国内就労も受入れられた。これにより、親戚等のつてを頼りつつ来日し人材派遣会社等を通じて就業しているブラジル人等の流入が次第に立ち上がってきた。

 バブル経済崩壊から企業の構造改革へと進み、業種により差異はあるが、労働力の不足は過剰に向かった。これによりブラジル人等の日系人の流入は停滞した。他方、グローバル経済化の進展の中で、低賃金労働を強く求めるようになり、研修生受入れの拡大が進んだ。中国国内では就労者の流動化が進んでおり、日本での研修制度への対応が次第に拡大してきた。また、日本国内での学齢期人口の減少から大学等が留学生の受入れに積極化してきた。これに対して、中国等では相当程度の所得がある人口を擁すようになっており日本への留学生も増加している。

 しかし、リーマンショック後の2009年から、外国人は減少し始めている。国籍別には、ブラジル人は既に2007年から減少し始めており、その減少幅を一層拡大した。また、中国人は、2009年末に初めて減少に転じた。前者については、日系ブラジル人が所得機会を求めて来県しているものであり、派遣事業で働く者も多いが、この働き口が大幅に減少したためと考えられる。後者の中国人の主体は、研修として県内の企業が受け入れているものである。バブル経済期の最終段階(1990年頃)から外国人労働力をなし崩し的に導入してきたが、景気の長期低迷の中でその余裕がなくなり受け入れを減少させている。

 その後、緩やかな景気回復の中で、再び人手不足が次第に見え始め、'10年代に入って、技能実習生としての、ベトナムからの流入が次第に増加している。

 さらに、2017年には技能実習法が施行されており、今後の動向を注視していく必要がある。


(2) 富山県での推移
 上述の制度の推移に沿って、富山県でも外国人は急増している。
 1990年代の初めからブラジル人が急増し、その後中国人、フィリピン人が漸増、2000ゼロ年代に入って中国人が急増し、さらに'10年代にはベトナム人が急増している。

 なお、2020年度に減少している国が幾つかあるが、これはコロナ禍の影響であろう。


 現在、その他の国からの流入も次第に増加している。
 インドネシアからは、'10年代に入って急増している。
 パキスタン、ロシアについては、'00年代から漸増している。


 インド、台湾、ネパール、タイについても次第に増加し始めている。


 また、実数は小さいが、その他の東南アジア、南アジア諸国からの流入も次第に増加している。



(3) 都道府県比較
 都道府県毎の外国人の状況を見ると、総人口に占める外国人の比率は、中部圏、首都圏、近畿圏の都府県で高いことが明らかである。

 都道府県毎の外国人の国籍について見ると、南米の比率の高い県は、主として関東・中部等の製造業の卓越する県となっている。これは、南米からの流入は、日系人の主体的な行動であり、就業機会の多い地域が選ばれていることがうかがえる。
 こうした中で富山はアジアもある程度の比率となっているが、これは上述の技術研修の在留があるためである。香川、鹿児島など四国、九州の県では南米の比率は低くアジアの比率が高い。




 定住・永住者等を除く外国人の在留資格別の構成比を都道府県別に見ると、技能研修の比率が高い位置には、富山を含め製造業の卓越する県もあるが、四国や山陰の県も混ざっている。これは、積極的な受け入れによるものといえよう。





(4) 市町村比較
 富山県内各市町村の外国人国籍の構成比についても、全国と同じ様相が見られ、南米からの流入が多いのは、高岡・射水・富山であり、就労機会の多い地域であるとともに、既に流入している人が親族・知人等を呼び込んでいることがうかがえる。


 市町村毎の外国人の在留資格構成では、永住者・家族等を別にすれば、専門的職業に従事する人が多いが、技能実習生もそれぞれの市町にいる。また、富山市、高岡市、射水市では留学生も見られる。



(5) 技能実習の課題
 技能実習法の施行(2017年11月)により外国人技能実習制度が改正され、今後外国人の流入が一層増加すると予想される。しかし、技能実習という建前に対して労働力不足の補完という本音が顕れ、今まで以上に多様な問題が発生するものと予想される。 このため、これを移民の問題として正面から捉え、来日する外国人を「道具」とするのでなくと「人」として接する工夫していくことが求められている。
 どうも地方労働局は自らの問題と捉えていないように見える。
 富山県にあっても外国人が増え続けており、地域なりの対応を図り、予想される社会の混乱を防いでいく必要があろう。
 それぞれの技能実習生の就業先を考えると、こうした外国人の受入れが、必ずしも県民の日常生活の中での交流に繋がるものとはなっていないのではなかろうか。外国人が一層増えた場合、多様な課題が表面化してくる可能性がある。富山県人はもとより日本人は、異民族と対等に共生した体験がほとんどなく、その術をほとんど持っていない。決して排除するというのではなく、それらの実態を正しく把握し、課題を十分に配慮したうえで、外国人子弟の教育や社会保障制度の適用など適切な受入れ体制を形成し、共生していくための自覚した対応が求められているといえよう。
 ⇒日本語指導が必要な児童生徒の状況


(6) コロナ禍での変動
 2020年の外国人の変化を在留資格別で見ると、全体では2.5%の減少であったが、留学生等では24.3%、技能実習生では12.4%減少している。
 この変化はコロナ禍によるものが大きいであろう。しかし、日本への入国希望者がどの程度減少し、さらに希望していても入国できない者がどれくらいいるか、また、出国できない者はどうかなど詳しいことは分からない。


 ちなみに国籍別では、中国は留学生、技能実習生の減少、その他の東南アジア諸国は技能実習生の横這いないしは減少、ブラジルは家族滞在の減少がそれぞれ大きく影響していると見られるが、確実な統計は入手できていない。



(統計データ)

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(Jul.19,2021Rev./Nov.03,2001.Orig)