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第2章 富山の舞台
第2節 人口動態の転換

第5項 自然動態
―人口減少の加速―

(1) 人口の年齢構成と増減動向
(2) 出生数
(3) 死亡数


(1) 人口の年齢構成と増減動向
 人口の年々の自然増減は、出生数と死亡数によって決まる。
 このうち出生数は女の各再生産年齢(15-49歳)人口とそれぞれの年齢別出生率の積和で決まる。
 死亡数は性別年齢別人口とそれぞれの性別年齢別死亡率の積和で決まる。
 年齢別人口には、ベビーブームによる団塊の世代の形成等により、波(人口ウエーブ)があることに留意が必要である。


 団塊ジュニア世代の出産期通過により出生数の再度の減少が始まり、一方で高齢者の増加により死亡数は漸増し続け、2003年から富山県は人口の自然減の時代に突入した。
 さらに年々の出生数の減少、死亡数の増大が続き、結果として年々の人口減少が加速している。

 なお、2020年の死亡数は前年比163人減となっているが、これはコロナ禍の中でかえって風邪等から起こる肺炎等の罹患が減少したためとみられる。また、出生数については前年比85人減に留まっているが、2021年にはコロナ禍の影響がでて、かなり大きな減少になることが予想される。



(2) 出生数
 出生数は年々減少しつつある。富山県の2022年値は、合計特殊出生率の増加と団塊孫世代の出産年齢化により、減少が若干弱まっているようにもに見える。

(Sep.17,2023Rev.)



 コロナ禍の出生数への影響は、月次の変動が大きくはっきりしない。しかし、これまでの経年変化から見て、出産期年齢人口の減少に留まっているように見られる。


参考
 コロナ禍の死亡数への影響も、月次の変動が大きくはっきりしない。しかし、死亡率の高い高齢者の増加に沿った変化に留まっているようにも見られる。

(Aug.03,2021Rev.)



 年齢階層別の出生率をみると、20歳代での下げ止まり、30歳代での上昇がはっきりしている。

 このような変化は、結婚、離婚の動向が大きく影響している。
 さらには、日本ではあまり問題視されないが、人工妊娠中絶の在り方の影響も大きいであろう。
 ⇒結婚詳述
 ⇒人工妊娠中絶詳述
 ⇒子育て環境についての意識


 30歳代での上昇がどこまで続くかが関心の持たれるところであろう。



 女子の各年齢別の出生率の和は、合計特殊出生率と呼ばれ人口推計の基本的なパラメータである。この値は、現在の年齢別出生率が継続するとすれば、1人の女子が生涯に出産する子供の数に相当している。
 日本全体では、戦後ベビーブームを経た後、長期間2.1を超え、次世代の人口が増加する水準にあったが、1973年を境に低下し始めた。最近年は低下の趨勢が底を打ち、反転し始めているようにも見られたが、全国では2015年をピークに再び減少し続けている。
 これは2000年代の初めに全国の人口が減り始め、結婚子育てのできる社会への改革が議論され、これに応えて一端は出生率も増加したが、実態の変化が進まないため、再び減少に転じたのではなかろうか。直近年はコロナ禍の影響もありうるが、どの程度の影響かは定かではない。
 2022年の全国値は、1.26までに低下しているが、富山県については、1.46に増加し都道府県の中では12番目の高さとなっている。


 合計特殊出生率の全国の分布は、大都市圏で特に低いとともに、全体として西高東低の傾向がある。
 これは、結婚子育ての容易さとどう関係しているのか、むしろ矛盾しているようにも見られる。つまり出生率の都道府県間の差異については、経済的な問題というより、人の繋がり合い(支え合い)にあるように推測される。

(Sep.16,2023Rev.)


 このような推移により、団塊ジュニアの世代の子の世代は出生数の横這いとなり、その後急速に出生数が減少している。
 ⇒人口ウエーブ詳述
(統計データ)





 諸外国の合計特殊出生率の推移については、ドイツ、イタリア、韓国が日本と同様に低水準で低迷している。特に、韓国は1を割っている。これらの国では、家族を大切にし、子供の養育等を家族に求める度合いが強いためという見方がある。
 先進国の近年の動向を見ると、'00年代には増加気味に推移した国が多かったが、'10年代半ばから一斉に横ばいから減少に転じている。これは、世界経済の低迷とともに各国で社会構造の分断が起こり、生活が厳しくなっている人が増えているためであろう。


 なお、世界各国の一人当たりGDPと合計特殊出生率を見ると、負の相関がはっきり見られる。




(3) 死亡数
 死亡率の動向については、別途、健康に関連する項で詳しく整理する。

 近年の死亡率は、各年齢階層とも着実に低下している。ただし、高齢者層の低下度合いは低い。
 しかし、逆説的であるが、死亡率の高い高齢者が増加しているため、死亡数も増加している。
 なお、死亡率の今後の見通しについては、短期的にはかなり確実な予測ができるが、長期的には、各年齢階層での低下度合いがどのように緩慢になっていくか予想し難く、曖昧なものがある。






 なお年齢別死亡率を積算することによって平均寿命が算出されるが、その伸びは徐々に緩くなっており、2005年〜2010年の5年間では、1歳に満たなくなっている。



 ちなみに、諸外国の平均寿命も着実に推移し、概ね5年に1歳程度伸びている。
 男では、香港、スイスがかなり高く、これに日本が次いでいる。



 女では、香港、日本がかなり高く、これに次いでシンガポール、韓国などがある。




(統計データ)

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(Sep.16,2023Rev./Feb.25,2015Re-Ed./Jul.09,2001Rev.)