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第4章 堅実な生活
第6節 開かれた生活習慣
第3項 新たな行動

2.NPO
―伸び悩む承認数―

(1) 承認法人数
(2) 活動分野

 富山県ではNPOの立ち上がりが遅れ、行政の音頭取りで活発化してきた。現在は、全国と同様に伸び悩み、飽和が近づいているようにも見える。

(1) 承認法人数
 NPO法(特定非営利活動促進法)が制定されて以来、全国各地で多様なNPOが設立されてきた。
 2020年5月現在、富山県の承認NPO法人数は、376であった。
 人口当たりでは、都道府県の中では31番目の多さとなっている。

 地域毎の人口当たり法人数のパターンについては、相関のある指標が思いつかない。



 NPO法人制度創設の当初、富山県での法人認証数は、極めて少なかった。
 しかし、2000年代初めから着実に増加しており、現在では、人口当たりで福井県を超すまでになっている。この着実な増加の背景として、富山県民のボランタリィな活動に対する意識も次第に変化しつつあることは確かであろう。
 ただし、一般論として、自治体が、地方分権の流れの中で、住民との協働を促すとしてNPO法人の設立を奨励・支援している面もある。富山県では、特定非営利活動法人富山県民ボランティア総合支援センターがこの役割を果たしている。ちなみにこうした経緯で設立されるNPOをGONPO(ゴンポ)と呼ぶそうである。



 ただし、近年、全国とともに北陸各県でも伸び悩みから横這いに移りつつあるように見える。飽和状態に近づいているのであろうか。

 福井県と富山県で若干異なる動きがあったが、高齢者福祉への対応などで類似した違いがあり、福井では、地域社会の課題を社会的に解決していこうとする方向があるのに対して、富山では、各世帯を基礎として解決していこうとする方向が強いと考えられる。近年、富山では、行政に支援を要請する面も現れてきており、この性向は大きく変化していると見られるが、各人が、自発的に貢献していこうとする意識はまだ低いと言えそうである。
 ちなみに、富山県では、社会資本(社会的繋がり)が乏しいという報告がある。
 ⇒各都道府県の社会資本
 また、富山県内での子ども食堂の開設は相対的に少ないようである。
 ⇒子ども食堂の充足率
 ちなみに、地域社会の中で孤立しかつ無業の人は、県内に1万人弱いるという報告がある。
 ⇒孤立無業者



(2) 活動分野
 NPOの活動分野については、1法人が複数の活動分野を掲げる場合も多い。
 分野として、最も多いのは、全国でも富山でも、保健・医療・福祉(第1号)である。これに次いで多いのは、全国では社会教育及び団体支援(第2号)であるが、富山では子供の健全育成(第11号)となっており差異がある。

 偏見を持った見方の虞があるが、総じて、旧来からあった事業で行政を補完し共生していく活動分野で多く、新しい事業で行政と対峙し拮抗していく分野で少い傾向があると言えそうである。

 なお、保健・医療・福祉等の分野では、非営利ではあるが、いわゆるコミュニティ・ビジネスと関連してくる活動もある。このため、NPOについては、雇用の場といった観点などからも注視しておく必要がある。


 事業目的別の法人数の推移では、制度ができた当初は保健・医療・福祉、子供の健全育成のNPOが設立され、その後も着実に増加している。
 2000年代に入って、多様な目的のNPOが生まれ、それぞれ着実に増加している。


(統計データ)


 NPOの活動には多様なものが含まれる。しかし、今日NPOへの関心が高まり、法律の制定までに至っているのは、現在の市場資本主義の制度のみでは、達成できない地域社会に必要な機能を充足しようとする動きが高まっているためとされる。
 町内会等の従来からの地域社会組織が活動しておれば、新たな組織の必要性に乏しいかどうか。確かに活動の一面にはそうした部分もあろう。しかし、町内会等の地理的範囲を超えている課題も多く、新たな地域社会組織も求められていることは間違いない。
 このようなことから、ボランタリィな活動を展開する市民意識が概して低い富山県には、大きな課題があると言えよう。手短な議論は難しいが、魅力ある地域の作りのための重要な基盤が欠けているように思われる。
 ただし、次第に意識が高まってきていると見られることも十分認識しておく必要があろう。

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(Jul.06,2020Rev./Dec.30,2000.Orig.)