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第4章 堅実な生活
第6節 開かれた生活習慣
第4項 コミュニティシップ
1.コミュニティシップ ―繋がりの契機―
近代の政治経済は、公私を峻別し、私を表に出さないシステムとして展開してきた。私的な生活は専ら消費者として資本主義市場に絡め取られて登場しており、生活の太宗は、所得のための仕事が中心であり続けてきた。また生活に不都合がある場合は、保険あるいは措置としての行政施策に依存してきた。そして家族地域社会の機能は、次第に衰退してきている。こうした中で、資本主義市場経済の暴走と民主主義政治の機能不全により所得・資産格差が厳しいものとなってきている。
現代社会で、一人一人が生活を如何にして取り戻すか。私をある程度表に出し、普段の生活の中で地域社会に開かれた行動を取り、人と人との繋がりを再形成し、結果として自ずと必要に応じて互いに支え合える、足腰の強い地域社会を形成していくことが課題となっている。
パットナムによるソーシャルキャピタルの分類 |
性質 | Bonding(結合型) 例;民族ネットワーク | Bridging(橋渡し型) 例;環境団体 |
形態 | Formal(フォーマル) 例;労働組合 | Informal(インフォーマル) 例;バスケットボールの試合 |
程度 | Thick(厚い) 例;家族の絆 | Thin(薄い) 例;知らない人に対する相槌 |
志向 | Inward Looking(内部志向) 例;商工会議所 | Outward Looking(外部志向) 例;赤十字 |
(資料)内閣府「ソーシャル・キャピタル: 豊かな人間関係と市民活動の好循環を求めて」 調査委託先(株)日本総合研究所 平成14年度 |
現代社会の中での人と人の繋がりの重要性を喚起したのは、R.パットナムであり、「ボーリング・アローン」の出版等を契機に我が国でもソーシャルキャピタルの議論がなされている。
ソーシャルキャピタルを論じたR.パットナムの分類に沿えば、これまで富山県では、結合型がしっかりしているが、橋渡し型が弱いと捉えていたのだが、認識を改める必要があるのかもしれない。結合型もかなり崩れているようである。
「人々が力を合わせて協働しながら好ましい結果を生み出す姿勢」をH.ミンツバーグは、コミュニティシップと呼んでいる。
⇒コミュニティシップ
(1) 多様な繋がりの契機
地域社会に開かれたボランタリィな活動を議論することには、本来、行政・市場が担うべき機能を押し付けられているという危うさがある。また、ボランタリィでなく強制されているとの指摘もある。しかし、今日なりに実現可能な社会をどう創っていくか。これは個人で判断して、多様な地域社会に開かれた(他者と接点のある)活動を自発的(ボランタリィ)に展開し、人と人の繋がりを形成していく中で、住みよい社会を築いていくことが大事なようだ。
地域には、こうした活動を直接行い、さらには支え、促す様々な組織が従来からある。また富山県民ボランティア総合支援センター(NPO支援センター1997年設立)のように新たに整備された組織もある。
また、人々が集まる場の整備も進められている。例えば、富山市では、グランドプラザの活用が効果的に行われており、今般、富山駅南口広場が開設され、さらに街中のトランジットプラザが企画されている。県にあっても環水公園や海王丸パークなど、人の集う場の整備をかなり意識した事業を展開している。
⇒県民活動組織・支援組織
以下は、取り敢えずの断片的で整合性に乏しい説明であるが、県内での多様なボランタリィな活動である。今後、さらに情報を収集し、体系的な描写を試みたい。
福祉
・高齢者支援
介護保険制度の事業の一部が市町村事業に移されるのに伴い、地域の社会福祉協議会等中心となって、様々な高齢者の生活支援体制を整備している。例えば南砺市では、自治振興会単位で住民を担い手とした仕組みを作りつつある。
また、孤独死等を契機として、見守り隊などによって地域の絆を再構築する議論も起こっている。
高齢者の居場所の整備として、空き家や自宅の活用も行われ、カフェの開設などもある。
高齢者の買い物等を支援する移動販売やタクシー運行などの動きもある。
他方、団塊の世代が高齢期に入り退職しつつあるが、ボランタリィな活動を含めて、地域デビューを模索している人が見られる。
また、行政では、医療福祉の一帯となった展開のために地域包括ケアを呼び掛けている。
・子供の見守り
富山県では、相対的には子供の貧困は少ないと考えられる。保育所の待機児童もいないこととなっている(全国11県で待機児童ゼロ)。
しかし、シングルマザーの増加なども見られ、地域での子供の見守りはきめ細かく行っていく必要がある。
これまでPTA等が大きな役割を果たしてきており、通学の安全を守る仕事も地域の多くの人によって担われている。
さらに、高岡子供食堂のように子供の食事の世話なども行われている。
また、学校では、地域と協働した子育てを進めることを模索している。
環境整備
地域の美化は、数多くの町内会等で担われてきている。市町村からそれなりの手当てが支払われているが、多くの人はボランティア活動と認識している。このため、富山県ではボランティア活動をする人が多い(行動者率が高い)。
地域の公園や街路の花壇の整備も行われている。これは、従来から花と緑の銀行が支援してきており、年々のコンクールも行われている。
里山整備なども行われている。これについては、草刈り十字軍が先駆的事業になっているとみられよう。
文化・スポーツ
県内には、数多くの文化・スポーツ教室があり、それぞれの成果発表などが行われている。
こうした活動が国際的交流へと発展している例もいくつもある。
また街頭でのパフォーマンスも見かけるようになっている。
観光振興事業と関連させ、祭りを再活性化させる動きもある。
国際交流
国際交流を主目的とした活動(各交流協会)や海外での災害等への支援活動もある。
また文化活動が国際的交流へと発展している例もいくつもある。
多様なボランタリィな活動を基礎に、皆でワイワイと楽しく過ごすコンビィビィアルな社会を形成していくことこそ地域創りの目標であろう。そして地域創りの主役は各自それぞれである。まずは、内にこもらず外に開かれた様々な生活を楽しむことが大切であろう。
(2) 地域情報の入手 ―富山県のみで新聞発行部数が世帯数超え―
地域での活動の契機として、まず、地域で起こっていることをいろいろと知る必要がある。
地域社会の情報については、テレビ・ラジオ等でも可能であるし、スマートフォンなども活用されるであろう。だが、より深い情報としては新聞が重要な役割を果たすであろう。
新聞協会の調査によると、世帯当たり新聞発行部数を都道府県別に見ると、発行部数が世帯数を超えているのは、富山県のみであった。ちなみに2番目の福井県については、四捨五入で1.000となるが、ごくわずか1を下回っている。
世帯当たり平均1部といっても、1世帯で全国紙、地方紙などと複数部を取っている世帯も多いだろうから、1部も取っていない世帯も相当数あるだろう。しかし、少なくとも富山県では地域の情報が相対的にはしっかりと流布していると予想される。
ちなみに都道府県毎の世帯当たり新聞発行部数は世帯の規模と若干の相関がある。
(統計データ)
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(Apr.27,2020Rev./Apr.12,2016Orig.)
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