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各都道府県の社会資本
―相関のない2度の試算結果―

 内閣府「ソーシャル・キャピタル:豊かな人間関係と市民活動の好循環を求めて」(調査委託先(株)日本総合研究所、2003年3月)があり、いろいろと解釈してみたが、その後、(株)日本総合研究所の2007年試算値があり、双方を比較すると、相関が全くなく、この調査からの知識は取り敢えず白紙としておく必要がありそうだ。

 下図は、両年の試算値を並べたものであり、富山県については、2003年値は負で都道府県順位では降順で33番)であったが、2007年値(5番)は正で5番となっている。
 地域的には、関東の都県が負、九州の4県が正で両年の試算値が揃っている様にも見えるが、その他の地域での一貫性は見られない。


 ちなみに両年の試算値の相関係数はR2=0.04で全くない。



(統計データ)

低い社会資本の水準
―内閣府委託調査(2003年3月)―

 従来、富山には、結合型の社会資本が豊かにあったのだが、それが崩壊し、新たな橋渡し型の社会資本がほとんど形成されていない。

 社会資本(Social Capital)とは、社会的繋がり(Social Network)を資本と捉えるもので、物的資本、人的資本と同様に生産性に寄与する。社会資本は、個人間のつながり、相互間の形作られた行動(規範)及びこれらから生まれる信頼に関係している。

 内閣府「ソーシャル・キャピタル:豊かな人間関係と市民活動の好循環を求めて」(調査委託先(株)日本総合研究所、2003年3月)で試算されている都道府県毎の社会資本の統合指数によれば、富山は、全国で15番目に低い地域となっている。
 従来、富山は人と人のつながりがしっかりしている県だと自認されていたし、今日も多くの人がそう考えていると思われるが、この結果はどう捉えればよいのだろうか。
 調査の標本数は富山県では31であり、標本誤差がたまたま大きかったとの解釈もある程度できるが、1996年のNHKによる県民意識調査も類似した結果を出しており、やはり実態が変わってきているとの解釈に分があるように思われる。


 この統合指標が低い地域は、大都市圏を中心に分布しており、富山県はそれに次ぐ位置にある。


 指標の個別的内容については、つきあい、信頼で総じてマイナスとなり、社会参加で若干のプラスとなっている。
 ただし、ここでの各項目は、旧来の地域社会が持っていたものと、新しい地域の中で形成されつつあるものとが混在しており、社会変化という視点からは、意味が不明瞭なものとなっている。


パットナムによるソーシャルキャピタルの分類
性質Bonding(結合型)
例;民族ネットワーク
Bridging(橋渡し型)
例;環境団体
形態Formal(フォーマル)
例;労働組合
Informal(インフォーマル)
例;バスケットボールの試合
程度Thick(厚い)
例;家族の絆
Thin(薄い)
例;知らない人に対する相槌
志向Inward Looking(内部志向)
例;商工会議所
Outward Looking(外部志向)
例;赤十字
(資料)内閣府「ソーシャル・キャピタル:
豊かな人間関係と市民活動の好循環を求めて」
調査委託先(株)日本総合研究所 平成14年度
 近年「社会資本」への関心を喚起したR.パットナムによれば、社会資本には、結合型と橋渡し型があるとされる。
 富山の状況について解釈すれば、従来、結合型の社会資本が豊かにあったのだが、それが崩壊し、新たな橋渡し型の社会資本がほとんど形成されていないということではなかろうか。
 ただし、他の地域でも橋渡し型の社会資本の形成が量的に進んでいるとはいえないが、その趨勢が富山では極めて弱いと考えられる。例えば、NPOの設立の少なさなどはこの典型的な例であろう。











 富山の社会資本の水準がなぜ低いのか。上述のデータからいろいろと語ることができる訳ではないが、地域の今後にとって懸念される話題であるので、想像を逞しくして、幾つかのことを述べておく。
 実は、四半世紀前では、むしろ富山の社会資本はしっかりとしており、豊かさの重要な背景となっていると考えられた。具体的には、家族・地域社会が支えあっており、足腰の強い生活があった。
 しかし、こうした生活は、人口の社会移動が進む中で次第に崩壊してきている。実は、県内の人口の社会移動は、相対的には全国の中でも特に少ないのだが、県全体としては、富山市に向かった移動があり、具体的な定着先としては、富山市内の周辺部と周辺の市町村で、都市内の人口集積は極めて低くなってきている。これは、広域都市計画地域の市街化区域の設定があるにもかかわらず広範囲に分散して居住することを許容してきたことが背景となっている。この結果、一方で、都市内での人と人の繋がりが弱くなってきている。これとと共に、一方で、新しい住宅地では、夫婦共稼ぎで自動車通勤する状況があり、子供の学校等での繋がりを除けば、人と人の新たな繋がりが積極的に形成される訳でもない。このため、今後、県全体の人口減少が次第に加速していく中で、都市にまとまって住むための工夫(コンパクトシティへの指向)がなされなければ、都心、郊外双方のゴーストタウン化が進み始め、このような人々の繋がりは一層弱いものとなっていくことが懸念される。
 他方、このような推移の中で、婦人会、青年団など地域社会の多様な組織は次第に組織率を低下させており、また、世帯も核家族化からさらに単身化へと進んでいる。こうした中で、特別養護老人ホームを中心とする社会福祉施設を急速に整備しており、また、療養型医療施設の数も著しく増加し、これとあいまって、県民は、高齢者の介護を社会福祉・医療施設に施設に依存し、在宅介護を避ける方向へと急速に転換してきた。かつての家族・地域社会の支えあいの傾向は、県民の本性に根ざすというより、単に多くの人がそのように行動するからそれに合わせて行動していたに過ぎず、一旦、施設依存の風潮が高まり始めると、多くの人がそれになびいていったという頻度依存型行動に過ぎなかったと解釈されるのであろう。こうしたことを背景に、富山では、全国の中でも介護保険料が特に高くなっている。今後、人口の高齢化が一層進む中で、高齢者を支えるために、どのような地域社会をつくっていくかの選択が迫られているといえよう。
 いずれにしろ、以上のような変化が、富山の社会資本の水準を一層低いものとしていると考えられよう。

(統計データ)

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(Jul.12,2015Rev./Mar.27,2005.)