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第4章 堅実な生活
第1節 絆の強い社会
第4項 強い繋がりの地域社会

1.地域社会の紐帯
―残る強い繋がり―

(1) 他人と同じことをする
(2) 助け合う
(3) 和を乱さない
(4) これまでの行動を変えない
(5) 相互に監視する

地縁社会の強い規範の例
@他人と同じことをする高い老人クラブ加入率
A助け合う低い生活保護率
B和を乱さない少ない公害苦情
Cこれまでの行動を変えない少ない女性管理職
D相互に監視する低い犯罪率
 富山県には地域社会の繋がりがよく残っているといわれる。
 地域社会の強い繋がりの説明は、具体的な事例の列挙となり、県民性の議論の場合のように、深い検証を伴わない思い込みの議論になりがちである。以下もこうした思い込みが入ると思われるが、関係すると考えられる幾つかの特徴的な統計指標を列挙してみる。
 ⇒地域社会の捉え方



(1) 他人と同じことをする
 富山県の老人クラブ加入率は極めて高い。加入率の低いのは、南関東の3県、宮城県などである。
 かつての経済企画庁の国民生活指標では、老人クラブ加入率を「交流」のあかしとして積極的に評価しているが、富山では必ずしもそのように評価していないと思われる。
 地域社会で生活するにあたって、他人と同じ行動をとるという処世術が現れている面も強いと考えられる。
 また、他人と同じ行動という面は、かつて全国に先駆けて大学進学率が高くなった要因でもあったと思われる。

 国民年金保険保険料納付率が高いというのもこの性向の現れかもしれない。もっともこの指標と老人クラブ加入率の相関はあまり高くない。
 ⇒国民年金保険保険料納付率


 かつては、婦人会活動も盛んであり、その食生活改善運動は、富山県の死亡率を著しく低下させた。



(2) 助け合う
 富山県の生活保護への依存度は全国でも最も低い。
 全国では、中部地方の県が概して低い。この地域では、それなり安定した生活があり、それなりに支え合っているとみられる。
 行政が生活保護を受け付けないようにしているという揶揄があるが、これは検証できない。



(3) 和を乱さない
 地域社会の繋がりが強い結果として、「ことあげ(言挙)」しないことも一つの特徴となっていると考えられる。
 例えば、富山の公害苦情の件数は極めて低い。これは、公害が少ないと同時に敢えて申し立てないことにもよると考えられる。
 一方、他地域と比べて、多様な市民運動も低調であるようにも思われる。


 結婚や離婚の状況でも、他と同じく行動し、和をみださない傾向があるといえよう。
 例えば、富山県の離婚率や未婚率は全国平均に比して低い。



(4) これまでの行動を変えない
 地域社会の繋がりが強いことから、行動を変えない(保守的)という特徴も見られる。
 例えば、富山県の女性管理職の割合などに見られるように女性の評価が低いのもこの現れであろう。
 ただし、女性の職場進出は拡大しており、公務等から採用の差異がなくなりつつある。
 なお、政治面においても、保守政党の強い地域となっている。




 ⇒ジェンダーギャップ



(5) 相互に監視する
 地域社会の繋がりが強いことは、相互に監視することにも現れる。
 この結果、犯罪等の件数は極めて少ない。


 以上のような繋がりは、お互いに支え合う大切な面も強いが、一方でお互いに監視し合うような側面がある。
 他方、富山県でも意識が大きく変化してきているのだが、従来の意識も残り、結果として新しい社会の構築が遅れているとの見方もある。


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(Sep.25,2017Rev.)