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第5章 ゆとりある郷土
第1節 都市集中と過疎化

第2項 都市の再構築
―郊外立地から都心回帰へ―

(1) 都心回帰―旧富山市地区の人口変動―
(2) 県全体でのDIDの状況
(3) 分散居住の課題

 団塊ジュニア世代の世帯形成期である2000年頃に人口のスプロールがかなり進んだ。その後スプロールは収まり、人口の都心回帰も見られる。しかし、年々の人口減少が大きくなり、コンパクトな都市の形成はなかなか難しい。


(1) 都心回帰―旧富山市地区の人口変動―
変動内容地区典型的な校下
@長期減少北部、水橋岩瀬、浜黒崎、水橋(中西東部)
A2000年頃増加、後減少南部東、西部北、西部中央月岡、太田、呉羽、草島
B継続増加南西部、東部堀川南、新保、新庄、藤ノ木
C減少から横這い中心部北西奥田、奥田北、愛宕、安野屋
D減少から増加中心部南東五番町、八人町、総曲輪
 旧富山市の範囲の校下(小学校区)毎の人口の推移を見ると、近年の都市変動の経緯が分かる。
  ⇒富山市富山地区の人口変動

 @海岸線の校下では、古くから人口が密集しており、住環境改善の中で人口の減少が続いている。
 A団塊世代ジュニアが新たな世帯を形成した2000年前後には、郊外で農地転用による小規模団地の形成が進み、人口増加があったが、その後再び人口減少に転じている。
 B都心部に繋がった地区では、人口増加が継続して続いている。
 C都心部では、その空洞化で一旦人口の減少が進んだが、2000ゼロ年代半ばからは横ばいに転じている。
 さらに、D都心中核部では、積極的な集合住宅(マンション)の建築により、人口の増加がみられる。

 以上のように、旧富山市地区では、県全体からの人口の集中の下で、2000年頃に外縁部へのスプロールがあったが、その後コンパクトシティ策等により都心部への回帰が見られている。



(2) 県全体でのDIDの状況
発散する都市
 富山県では、かつてDID人口の増加とともに、DID面積も増加し、結果としてその人口密度が漸次低下していた。1990年代前半でも、DID人口は約8,500人程度増加している。
 しかし、1990年代後半では、地区面積はほとんど変化しなかったが、DID人口が大幅に減少し、人口密度が一層低下した。これは総人口が頭打ちから減少に転じたとともに、居住地のスプロールが進んだことによる。
 さらに、2000年代には、DID面積は概ね横ばいで推移し、DID人口は富山、射水、砺波で増加したが、その他では減少している。
 人口のスプロールはかなり収まったが、県全体での人口が一層減少する中で、その集中が見られている。
 (この統計だけでは実態は十分には読めない)


各都道府県のDID人口比率の推移
 全国では、DID人口は総人口の増加を上回って増加しており、都市集中の進んでいることが見られる。これに対して、富山県と同様に、DID人口の減少が進んでいる県もある。しかし、富山県のDID人口の減少幅は特に大きい。

 富山県でのDID人口比率は1990年の39.1%から1995年には39.8%と若干上昇した後、2005年までに35.8%へと低下している。
 しかし、2005年から2010年までの間では新たにDIDに組み入れられた地区もあり、37.1%に増加し、2015年は37.8%であった。
 都道府県毎のDID人口比率の推移を見ると、富山県での低下は際立ったものであることが分かる。
 この結果、都道府県の中での低い方からの順位では、富山県は1990年には17番目であったものが、2005年には10番目低下し、2015年、2020年は11番であった。



各都道府県のDID人口密度の推移
 全国各都道府県のDID人口密度の推移をみると、富山県は極めて急速に低下を続けており、既に全国の中でも最も低い水準になっていることがわかる。

 なお、山口県で人口密度が4000人/km2を下回っているが、瀬戸内海沿岸の埋立地に工場地帯が広がっているためである。富山県の密度の低さの一因として、工場地帯の広がりがあるが、これは密度の急速な低下の要因ではない。

 ⇒高齢化する団地人口


(3) 分散居住の課題
 DIDの定義は都市地域を抽出するためのものである。都市のイメージをどのように描くかにもよるが、ここに人口が集中していない地域というのは、都市機能を形成していない分散居住の地域であることを意味している。

 都市機能の充実を指向しない分散居住は、住生活での空間的ゆとりを享受できることが最大のメリットであろう。また各種施設の整備においても土地利用が容易である。
 しかし、ディメリットにも留意が必要である。
 分散居住の生活を支える各種基盤施設の整備等にはそれなりに経費が嵩む。
 富山県では人口当たりでみた各種施設が多いが、これは、平野に分散して居住する県民の需要に応えるためであり、施設当たりの人口で考えれば、経営効率が悪いことは明白であろう。さらに、施設数が多いとしても、県民それぞれの住宅から施設までの距離も、概して遠いようである。
 また、各種の給排施設の整備維持にはコストがかかっている。特に、下水道の整備には多大の費用をかけてきた。
 さらに、日常生活に車が必要となっており、多様な負担がある。また公共交通が衰退しており不都合が生じている。これらについては、高齢時代、地球温暖化時代において課題が多い。
 一方、都市のもつ諸機能が欠けることの問題点にも留意しておく必要があろう。
 商業・サービス業を中心とした経済活動の課題は多い。さらに、現在新たな社会資本の議論が起こっているが、人と人、事業者同士のネットワーク社会の形成についても好ましくないことを認識することが重要であろう。
 他方、食糧危機時代における農地の保全の観点からも分散居住の弊害が多いことはいうまでもない。

 分散居住も一つの選択ではあるが、魅力ある都市の形成には、懸念される面が多い。
 これに対して、コンパクトシティが提唱されている。ただし、人口動態から見れば、住宅建設が進む団塊の世代の世帯形成期の前、さらにはバブル経済の前に主張すべきことであり、タイミングが遅すぎたといえる。としても、今後のあり方として指向すべきことは間違いないだろう。
 ⇒コンパクトシティ考

 しかし、人口が減少していく中で、どのようなメカニズムを通じて実現していくか困難が多い。
 市街化調整区域や線引き都市計画区域の外側に住宅の整備が進んできたこれまでの動向が、各種の土地利用計画に違反しているというわけではないが、土地利用関連の計画・制度がその趣旨に沿って機能していないことは明らかであろう。このため、早急に県内の土地利用の実態を明らかにし、県民が共通認識を形成し、しかるべき方向に進むことが必要である。

(統計データ)

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(Jun.05,2022Rev./Oct.09,2000.Orig.)