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コンパクトシティ考

 富山県では、古くから人々は富山平野に散らばって住んでいた。さらに近代に入って会社勤め等をするようになっても、転居せず、生地に住み続ける傾向が強かった。また、結婚による新たな世帯の形成で家を取得する際には、農転によって形成された都市郊外の小規模住宅団地の安価な土地を求めることが多かった。この結果、都市への人口の集中は他県に比べて少なく、富山県なりの都市のスプロール(拡散)を招いてきていた。
 現在、このような人口の拡散した都市の不都合さが見えてきており、コンパクトシティの形成が提唱されている。特に、森富山市長は、コンパクトシティの形成を主張し、公共交通の整備や都心住宅・商業施設などの整備を進めており、国際的にも評価されている。
 しかし、このような方向性は、これまでの趨勢と逆方向ともいえそうであり、望ましいコンパクトシティの形成が進んでいくか懸念される。

コンパクトシティの必要性
 近年、日本でコンパクトシティの形成に関心がもたれるようになったのは、まず人口減少の影響であろう。様々な都市的基盤施設の整備維持を効果的に行うためには、人口が一定範囲に集積していることが望まれる。
 また、人口の高齢化が進む中で、自動車の利用が困難な人が増加していくが、公共交通の利便性が高い都市地域に居住を進める必要がある。
 この公共交通の整備による自動車利用の軽減は、地球温暖化対策としても進めていく必要がある。
 他方、今日、人の繋がりが希薄となり、問題視されるようになっているが、お互いが繋がりを持ち支え合うためにも、ある程度の人口集積が前提であろう。
 まとめれば、歩いて暮らせ、人々の触れ合いがあるのがコンパクトシティでの生活のイメージであろう。
 なお、農地の保全の意味でも、既存の農地を宅地化することは、厳しく抑制していく必要がある。

現在取られている施策
 富山市がコンパクトシティの形成を目指して具体的に展開している施策としては、まず公共交通の整備がある。JR旧富山港線の路線変更(高架化)の決定に際して、LRT化を選択し、一躍脚光を浴びることとなった。これに続いて、路面電車環状線の敷設などを展開し、さらにJR駅との接続(新幹線開業時)、北側のLRTとの接続を企画している。
 また、都心部の再開発を支援し、マンション建設の促進(住宅取得への助成)や都心施設の整備を図っている。これにより都心の幾つかの地区(小学校区)では人口が横ばいに転じているようにも見られる。

都心人口の減少・高齢化
 都心マンション等の建設があれば、その時点でそれに対応した人口の増加が見られるが、総体としては、都心部の人口減少、高齢化が進んでおり、これに対して郊外部での人口増加が見られる。(右図再掲)
 郊外での宅地開発が旺盛であり安価に供給されるため、個々人は必ずしも既存市街地内に住もうとしない。自動車を利用することを前提とすれば、郊外での生活に不便はない。
 また、現在空き家が増加しているが、この再利用は進んでいない。これは、既存住宅の評価体制が形成されておらず、住宅を新たに求める人は、専ら新築を指向しているためである。
 なお、近年では市街化区域内の残存農地の宅地化も進んでいるようにも見られる。これは、人口減少の中で、宅地転換の契機を逃したくないという意向によるものであろう。
 なお、都心の再開発により幾つかの地区(小学校区)では人口が横ばいに転じているようにも見られる。

コンパクトシティ形成のための施策
 都市のコンパクト化を図るためには、既存の施策のみでは不十分なことは明らかであろう。
 まず、土地利用計画の考え方に基づいて、土地利用規制を明確に展開していくことが求められる。農地転用の厳格な規制、都市計画用途区域以外での住宅等建設の抑制など法の運用を明確化すれば実現できるはずである。しかし、票で選ばれる首長を始めとした為政者はこうした施策を忌避しがちである。
 また、都市的利用を想定しない地域での都市的サービスの拒否があってもいい。道路や下水水道の整備をそれほど高水準にしなくてもよいのだが、現在は、平野部全体で充実した基盤施設の整備を図っている。
 さらに、公共交通の整備については、都心部の自動車交通を多少規制することとなっても、路面電車新線の敷設を図ることも考えられる。ちなみに、人口減少・高齢化の中で、自動車交通の減少が予想され、若干の減少で混雑度が一気に低下すると見られる。
 他方、新たな都心居住の形成に関し、中層アパート形式では、良好なコミュニティが形成されるか懸念される。もっとも、人間関係に煩わされない生活を求める向きもある。

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(Jan.12,2015)