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第2章 富山の舞台
第2節 人口動態の転換
第4項 人口変動 ―2024年に百万人割れ―
2024年10月1日現在の富山県の人口は、前年より1万人以上減少し、995,955人で百万人を割った。
2010年代は社会減の縮小などによって、減少幅の横這いがあったが、2020年代に入って再び大きくなっている。
(1) 総人口の変動
富山県では、1998年から人口減少の時代に入っており、2024年には百万人を割った。今後、年々の減少幅は、さらに大きくなっていく。
右図の人口の推移に不規則な変動があるが、これは人口推計の曖昧さによるものである。推計人口統計における人口総数は、基本的には直前の国勢調査の人口総数に自然増減、社会増減を加減して求められる。ただし、異動に際しての住民登録の無届出分が調整されるため、5年毎に不連続なものとなっている。ちなみに2020年時点では、国勢調査で942人増加の調整があった。
(統計データ)
| 総人口 | 純増減 | 自然増減 | 出生 | 死亡 | 社会増減 | 転入 | 転出 |
2015 | 1066328 | -6,061 | -5,164 | 7,667 | 12,831 | -897 | 16,744 | 17,641 |
2016 | 1061393 | -4,935 | -5,161 | 7,582 | 12,743 | 226 | 17,352 | 17,126 |
2017 | 1055893 | -5,500 | -5,858 | 7,251 | 13,109 | 358 | 17,822 | 17,464 |
2018 | 1050246 | -5,647 | -6,166 | 7,088 | 13,254 | 519 | 18,388 | 17,869 |
2019 | 1042998 | -7,248 | -6,435 | 6,771 | 13,206 | -813 | 18,878 | 19,691 |
2020 | 1034814 | -8,328 | -6,428 | 6,491 | 12,919 | -1,900 | 15,972 | 17,872 |
2021 | 1025394 | -9,420 | -7,418 | 6,242 | 13,660 | -2,002 | 15,109 | 17,111 |
2022 | 1016323 | -9,071 | -8,374 | 6,149 | 14,523 | -697 | 17,902 | 18,599 |
2023 | 1006367 | -9,956 | -9,536 | 5,807 | 15,343 | -420 | 18,652 | 19,072 |
2024 | 995,955 | -10,412 | -10,012 | 5,296 | 15,308 | -400 | 18,961 | 19,361 |
右表では、2019年の総人口に2020年までの純増減を加えても2020年の人口とはならない。
⇒人口推計の錯誤
⇒これまでの各都道府県の人口減少
(2) 人口変動要因別検討
人口動態のこれまでの変化を総括すると次のようになろう。
まず、1990年代における増加幅縮小傾向の小康状態については、団塊ジュニア世代のUターン期で説明されよう。ただし、人口の東京圏集中の流れがバブル経済崩壊により一時的に停滞したこととも重なっている。
次いで、1990年代半ば以降は、団塊ジュニア世代の出産期に差し掛かっている。ただし、この間、合計特殊出生率の低下と重なり、出生数は約10年間以上にわたって1万人前後の水準で横ばいが続いた。
これらの動きに加え、不規則な変動として、インフルエンザ等による高齢者の肺炎での死亡の年々の変化が重なっている。
2000年代に入ってからの動きについては、人口の東京圏集中による社会移動の流出基調の増勢に加えて、高齢者増加による死亡数増加、出産期人口の減少と合計特殊出生率の低水準横這いによる出生数減少が進んでおり、人口減少が加速した。
2010年代は社会減の縮小などによって、減少幅の横這いがあったが、2020年代に入って再び大きくなっている。
人口の増減の内訳について、自然増減は、2003年に減少に転じ、次第に年々の減少を加速している。
社会増減は微減の基調が続いている。2016年前後に若干の流入超過があったが、その後再び減少基調に戻っている。
人口の自然増減のうち、出生数については、概ね1990年代は年間ほぼ1万人で安定していた。これは1990年代後半が団塊ジュニア世代の出産期であったにも拘らず合計特殊出生率の低下があり、変動要因が相殺されていた結果である。幻の団塊第三世代と言えよう。しかし、2003年からはこの時期から抜け、出産世代の人口の減少により、出生数が次第に減少していた。ただし、幻の団塊第三世代が次第に出産期に入るとともに、合計特殊出生率の横ばい傾向があり、今後、若干横ばいとなることも考えられる。
死亡数については、人口の高齢化とともに増加していくことは間違いない。しかし、年々の死亡数については、その年の寒暖の状況、流行性感冒等の程度などによって、大きく変動する。コロナ禍の影響も若干混ざったようにも見られる。
このような出生、死亡の結果、今後の長期的趨勢として自然減少が大きくなっていくことは確実である。
人口の県境を超えた社会移動に関し、団塊ジュニア世代は、1990年代前半に大学進学し、1990年代半ばに卒業している。これに見合う団塊第三世代は、その最後尾の大学進学が間もなく終わり、以降進学による人口転出は次第に減少し、これに対応して、大学卒業時のUターンも次第に減少していくこととなる。そして、この時間差で転出超過が若干緩和されることとなる。ただし、移動時に確実に住民登録を変更している訳ではない。
なお、2003、2004年の転入人口の増加の大きな要因は、中国人を中心とする外国人登録の増加がある。ただし、景気が後退局面に入って、2007年後半からブラジル人が流出し始めており、さらに中国人も減少している。しかし、ベトナム等からの技術研修生を積極的に受け入れる企業があり、外国人総数では2010年代半ばに増加を見せている。
また、別の要因として、1990年代後半以降の移動については、県内に立地する全国ベースの大企業の構造改革の中で、人口の流出超過があり、さらに、大都市圏に向かった人口移動の趨勢が強まっていた。しかし、近年は、地方創生の掛け声の中で、富山の拠点を積極的に拡充している企業もあり、転出の趨勢が弱まってきている様相も見られる。
2020年代の初頭にはコロナ禍の下で、東京一極集中、外国人の移動に影響が出ていると考えられる。しかし、転出入双方が大きくなっており、実態は判然としない。詳細な分析が必要であろう。
⇒全国人口の変動
(統計データ)
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(Jan.21,2024Rev.)
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