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第4章 堅実な生活
第3節 健やかな暮らし
第3項 人口動態

1.死因
―やや鈍い死亡率の低下―

(1) 粗死亡率
(2) 年齢調整死亡率
(3) 年齢調整死亡率の変化

 人口の高齢化とともに粗死亡率は増加するが、年齢調整死亡率は着実に減少している。ただし、富山県の低下速度はやや鈍くなっている。


(1) 粗死亡率
 2015年の富山県の人口の粗死亡率は1,206人(対10万人)であった。全国や石川県、福井県と比べるとかなり高いが、都道府県の中では、高い方から17番目の位置にある。ただし、健康度の目安としての死亡率を都道府県間比較する際には、それぞれの年齢構成を配慮する必要がある。ちなみに、富山県の高齢化比率は都道府県間の中では9番目(2015年)である。




(2) 年齢調整死亡率
 死亡率の水準を地域間で比較する際、粗死亡率(死亡者数/人口)では人口の年齢構成に左右されるため、年齢構成を一定とし年齢階層別死亡率を加重平均した年齢調整死亡率を用いることがある。
 厚生労働省では、都道府県毎の死因別に分けた年齢調整死亡率を5年毎に発表しており、現在は、1985年の年齢構成を基準にしている。ちなみに、年齢構成の基準は、男女共通にしているため、男女の全体死亡率には、大きな差がある。


 富山県の男の年齢調整死亡率は、全国平均よりやや低く、都道府県の中では、低い方から18番目の位置にある。
 一般に、本州中央部に低い都府県が多いが、北関東や関西には高い府県がある。

 ⇒粗死亡率と年齢調整死亡率


 富山県の女の年齢調整死亡率については、全国平均よりやや低く、都道府県の中で、低い方から20番目の位置となっている。
 都道府県別の分布については、男と同様であるが、東海等で若干高い県が目立つ。


 都道府県毎の男と女の年齢調整死亡率には当然のこととして相関があるが、決定係数は0.64となっている。


 都道府県毎の男と女の年齢調整死亡率について男を説明変数、女を被説明変数として、予測残差を求めると、北関東から、東京圏、中京圏、関西圏に至る太平洋メガロポリス地域で明確に大きくなっている。
 これは大都市地域で女は生き難い(あるいは男は生き易い)ということであろうか。逆に大都市を離れた地域で女は生き易い(あるいは男は生き難い)ということであろうか。それぞれにいろいろと理由は並べられそうだが、明確な証明は死因を含めて具に検討する必要があろう。


 富山県の死因別死亡率を全国と比較すると、まず男については、心疾患での死亡が低く、都道府県の中では5番目の低さとなっている。
 逆に不慮の事故の死亡率はかなり高く、都道府県の中で2番目となっている。


 女については、やはり心疾患が低く、都道府県の中で2番目である。
 また、癌(悪性新生物)のうち肺癌は特に低いが、逆に胃癌は高くなっている。
 不慮の事故は、男と同様に、高くなっている。

 ⇒高い自殺率



(3) 年齢調整死亡率の変化
 年齢調整死亡率の長期的な推移については、富山県はかつては都道府県の中で相対的に高い位置にあったが、20世紀後半を通じて改善し、最も低い位置までに移ってきている。

 ⇒死亡率低下の趨勢
 ⇒死因別年齢調整死亡率


 しかし、2000年代に入って、死亡率低下の速度が相対的に鈍っている。
 特に、2010年では男女それぞれ、都道府県の中で19番目、9番目の低さであったが、2015年には、28番目、15番目となっている。


 2010年代の富山県での男の死亡率の変化について全国と比較すると、悪性新生物、心疾患、自殺等で死亡率の低下が小さかった。


 女の死亡率については、胃の悪性新生物、不慮の事故で全国より低下が小さかった。
 ちなみに、人はいずれ死亡するので、他の死因が減少し老衰が増加することは評価していいのであろう。

 ⇒がんによる死亡率の推移


(統計データ)

 富山県の死亡率の改善が相対的に鈍くなっていることについては、原因をしっかり検討して対応していく必要があろう。また、不慮の事故の削減も課題である。


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(Jun.16,2017Rev.)