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第3章 モノづくり指向の産業
第5節 21世紀産業の構想
第2項 地域生活を支える産業の形成 ―新たな社会の要請に応える事業の展開―
県民の生活を支える各種サービス事業を企業化し、地域で所得が循環していく健全な産業を展開していくことも欠かせない。
グローバルな事業展開を図る産業クラスターの形成については、地域社会が生きていくために必要な所得を得るのに不可欠である。これと同時に、地域の皆で生きていくためには、地域内で所得を循環させる地域なりの多様な事業活動が欠かせない。具体的には、地域社会での創造的な生活を支えるものであって欲しい。
(1) 中心商店街の再生
これまで、自動車社会の展開の中で、買い回り品から最寄品までが郊外大型店で購入されるようになり、町の中心商店街が崩壊してきている。
しかし、いろいろな意味で自動車の利用が危うくなってきており、また大型店の元々の核であった衣料販売は、多様な量販店の展開等によって経営が厳しくなっている。こうした中で、郊外大型店の先行きも必ずしも確実なものではないだろう。
これに対して、我々の生活の在り方を変えて、街中(まちなか)への回帰を図っていく必要があろう。
いかにして、街中を活性化するか。その第一は、交通の便の再整備であろう。そして、多様な物販と共に各種のサービスの提供も欠かせない。さらにこれらの事業の経営は、個人経営でなく会社経営へと移行し、企業的展開が図られていくことが前提である。
なお、都心で中層住宅を整備し居住者を増やすことは、購買力を拡大することとなるが、居住者のコミュニティが形成されていく仕掛けのあることが前提である。
富山市中心商店街については、2007年9月にグランドプラザ・総曲輪フェリオ・富山大和が開設され、10年経過している。その来街者について見ると、天候やイベントの開催状況等で変動があるが、かつての減少趨勢には歯止めがかかったようである。また、富山駅周辺も新幹線開設により活性化している。このように森市長の提唱するコンパクトシィの形成が進み都市の再生の兆しが見られるようである。
これに対して、高岡市については、市全体としての成長力が乏しい中で、旧来の都心部と新幹線駅周辺との2つの核を意識したまま活性化を図ろうとしており、極めて危うい状況にある。
(統計データ)
(Dec.09,2017Add)
(2) 日常生活支援産業の形成
地域での事業は、他者に喜ばれる財・サービスを提供し、その対価を受け取り自らも生きていく活動でありたい。そして、企業経営とは、このような財・サービスを生産することによって付加価値を形成し、そこに働く人に配分することによって、共に生きていける組織を運営することである。その成果の指標として企業の所得が使われるため、ややもすると顧客・従業員の視点を忘却しがちだが、これを忘れては、企業経営の意味がないのではなかろうか。もちろん、株主利益等の維持も企業存続には欠かせないが、それだけになっては、守銭奴にすぎない。
このような事業の展開は、既にいろいろな形で行われており、内容をことさら限定する必要はない。以下は、あると面白いと考えられる事業、既にある事業を思いつくままに列挙したものである。
――事業化の契機がある多様な創造的活動――
【モノ創り活動】
農林水産 自然栽培、天蚕、山菜、直接販売
食品加工 パン焼き、各種醸造、漬物
手工芸 機織り、編み物、刺繍、家具製造、紙漉き、ガラス
伝統工芸 菅、一貫張り、土人形、和紙加工
3D印刷
【日常生活支援活動】
(福祉サービス)
福祉施設 介護、子育て
在宅支援
(地域密着型サービス)
食事支援 コミュニティレストラン、コミュニティ喫茶
買い物支援 食材配送、食事配送、各種宅配
その他移動支援 シェアカー、代行タクシー
(家事サービス)
家事支援 掃除、洗濯、炊事
修理・修繕
(その他の支援)
各種コンシェルジュ
リーガルサービス
【生活イベント支援活動】
冠婚葬祭 セレモニー支援、写真撮影
中古販売 ガレージセール
各種レンタル 貸し衣装
【文化・スポーツ・娯楽活動】
(授業型サービス)
学習 学習塾、家庭教師、各種教養技能授業・各種習い事
博物館 各種イベント
(技能向上支援サービス)
各種文化団体活動 学習会、発表会
スポーツ 各種種目インストラクター、各種スポーツ施設
各種スポーツ団体活動 練習会、競技大会
(健康サービス)
健康 スーパー銭湯、各種療術、各種セラピー
(娯楽サービス)
興行 街角ミュージシャン、大道芸人
ペット 飼育、一時預かり
【環境整備活動】
住宅リフォーム バリアフリー化、世帯変化対応
住宅斡旋 シェアハウス、住み替え支援、空き家流通
住宅管理 警備、ビルメンテナンス
居住環境創り ガーデニング、里山つくり
各種発電 水力、風力
【地域情報活動】
ミニコミ 地域放送、地域新聞
地域研究 郷土史家
デザイン支援
情報システム支援
【その他の地域活動】
コミュニティ活動 町内会活動、祭事、公民館
各種団体活動 老人クラブ、婦人会
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このような活動が事業化され、地域での生活を豊かにすると同時に所得機会、さらには雇用機会として活かされていくことが期待される。こうした事業はコミュニティビジネスあるいは地方発ビジネスなどと呼ばれ、地域活性化の軸となるものとして注目されているものである。
既に業界が形成されているもの、個人等が事業化しているもの、NPO等によって担われているもの、行政施策として展開されているもの、個人等がボランタリィな活動として行っているものなど様々なものが含まれる。
こうした活動は、地域の人が互いに繋がりを形成していく契機ともなる。
具体的な事業化については、創造的な生活をする者が、その知識を深め、技能を磨きプロフェッショナルになっていくことであろう。自らの創造的生活を磨いていく中で事業化を図り、地域社会の生活を豊かにしていく産業群が想定される。このような起業が叢生する社会を期待したい。
起業の方法について、ことさら枠組みをはめる必要はない。
ことさら対価を求めない活動もあろう。年金生活者等であれば、利益があがらなくてもリスクさえなければ事業化可能である。
利益を求めないNPOの活動もあろう。既に県内でもいろいろな事業が展開されている。
生業としてそれなりの利益を求めることもあろう。
さらに企業化し人を雇うまでに展開していくこともあろう。このような起業については、富山県新世紀産業機構が「とやま起業未来塾」として2005年から支援を行っており、その成果もホームページで掲載されている。
(3) 変革の試行錯誤がなされている分野
福祉サービス等の産業化
人口の高齢化の中で既に大きな産業となりつつあるが、福祉の目的を維持しつも、企業的事業展開が行われ、所得を得ることができる産業として発展していくことが必要である。
⇒介護産業コンプレックス
新たな生活を支える小売商業等の展開
情報通信システムの革新の中で事業者間での熾烈な競争があり、業態が急速に変化しつつあるが、県民生活を支えるために、単なる物販でなく周辺の多様な事業を取り込んで展開していく必要がある。
実際に、宅配事業、その他を含め、コンビニエンスストアはこうした事業を模索しつつある。
⇒コミュニティ型コンビニ
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(Dec.09,2017Rev./Apr.04,2016ReEd.)
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