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第3章 モノづくり指向の産業
第5節 21世紀産業の構想

第1項 グローバル社会で生きる産業の形成
―地域企業の相互連携による産業クラスターの形成―

(1) 産業クラスター概説
(2) 医薬品関連産業クラスター
(3) 住宅関連産業クラスター
(4) 国の政策フレームに基づくクラスター計画


(1) 産業クラスター概説
 企業組織とは、元来、様々な取引コストを極小化するために、永続的取引を行うメンバーを一つの固定的集団としたものである。企業は、個々人の能力をしっかりと発揮させる組織を形成しつつ、その企業自身の得意分野(コアコンピタンス)を明確にした事業を展開していかなければならない。組織の活動の中核的な部分が明示され、さらに組織外にも情報が伝達されるようになれば、組織間の取引コストは低下し、組織の境界は融解していく。こうした経緯から、情報通信技術の深化もあり、各企業は、積極的に社外委託(アウトソーシング)を行っていくこととなる。


 これに対して、地域社会には、質の高い受託業務ができる企業の集積が必要である。社外委託する企業自身の業務も他社の事業の一部を請け負うものであり、結局は、企業相互の緊密なネットワークを形成していくこととなる。こうした産業を支える集積については、単に営利企業だけではなく、教育研究活動等を含めた幅広いものが期待される。
 地域において、個々の企業や大学、各種の試験研究機関等が連携して、相乗効果を発揮していくことを念頭に置けば、地域に一定の分野で知的集積が形成され、それを核としてさまざまな産業活動が展開されることが期待される。
 下図は、1988年に富山県庁内の「とやま21世紀研究会」で描いた、富山での既存の知識集積を基礎とした構想「産業コンプレックス」の概念図である。


 例えば、情報デザイン分野では、下図のような企業の集積が見られた。
 情報をデザインする多様な企業は比較的規模が小さく、それぞれのスタッフの能力を直接表に出しながら市場競争を展開しており、ベンチャービジネス的性格が強い。富山市城南地域(山室等)を中心として、その集積と相互連携が図られており、優れた知識を活かす体制がある程度整備されていた。


 M.ポーターによれば、世界の元気な都市は、いずれも地域に有機的に繋がり合った産業群があり、それが国際的に活躍しているそうだ。この集積は産業クラスターと呼ばれ、今後の地域産業の在り方として注目されている。
 富山でもこのような産業クラスター形成の契機となると企業群は存在しており、これを核として、地域に足腰の強い産業群が形成されていくことが期待される。
 具体的には、医薬品製造を核とした幅広い産業の集積や住宅建設・関連資材製造業の連携と積極的な事業展開などが考えられ、以下に掲げておく。
 既存の企業経営者はそれぞれその事業展開を精魂を込めて考えておられ、門外漢が産業クラスターの形成を提唱したところで事業者に示唆するところは少ないだろう。しかし、関係者(為政者、行政スタッフ、マスコミ、その他)が地域なりの産業クラスターのイメージを共有することによって、それぞれが産業群の形成を助長するよう行動していくこと、また世界に発信し地域の地位形成に資していくことには意味があろう。
 もちろん、こうした産業群から離れた事業を否定する必要は全くなく、それぞれが身近に関連事業者が集まるよう努力していけばいい。


(2) 医薬品関連産業クラスター
医薬品製造(県内には多様な内容を持った数多くの企業がある)
  開発新薬
  ニッチ薬
  後発医薬品
  特殊製剤
  請負製薬(バルク)

原料有機化合物 立山化成
繊維・・シップ用基板 ← トリコット(高伸縮)
    エイゼット、今井機業場

容器 阪神容器、タケウチプレス、キタノ制作
アルミパッケージ ホクセイプロダクツ

製薬機械 スギノマシン、三晶MEC
洗浄機械 スギノマシン

印刷・パッケージ スガキ印刷、朝日印刷
自動包装機 岩黒製作所
梱包 ハナガタ、ジャパンパック


関連製造物
 診断材
 健康飲料
 各種家庭薬剤

薬膳

健康観光


 ⇒増加する医薬品生産

(3) 住宅関連産業クラスター
 (リフォーム、バリアフリー化、各種環境対策の提案)

ホームビルダー
  (富山県では他地域に比して数多くの地場企業が活躍している)

富山発祥の総合建設業
 清水建設、佐藤工業、松井建設

住宅素材産業
   三協立山アルミ、YKK、住生活グループ

  ガラス
  プラスチック
  木材(北洋材・国産材)
  銅器

環境機器 トヨックス

各種身障者用機器、リハビリ機器



 ⇒活躍するハウスビルダー




(4) 国の政策フレームに基づくクラスター計画
 いずれも先端的な研究開発を主眼としており、必ずしも、多様な地域企業の相互連携を軸としているものではない。この意味でM.ポーターの産業クラスター構想とは異なるものである。

◎産業クラスター計画 (経済産業省の政策フレーム)
「北陸ものづくり創生プロジェクト」
 北陸地域において、多様で特色ある既存産業集積を最大限に活用し、バイオ分野、高度精密加工分野、新素材分野等において高度なものづくり産業クラスターの創生を図る。
◎知的クラスター創生事業 (文部科学省の政策フレーム)
「とやま医薬バイオクラスター」
 先端的なバイオ技術を活用した大型共同研究プロジェクトの推進・バイオ分野へのでの県内企業の進出や県外の誘致と連携の促進・バイオ関連の新製品開発・製造のための設備投資に対する融資や民間研究所の立地に対する奨励金の交付・バイオベンチャーを育成するためのバイオ人材育成トレーニングの実施。


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(Apr.11,2014)