次頁(第4節)、節目次、章目次、表紙、◎
第3章 ゆとりある郷土
第3節 交通
第5項 港湾 ―変動が大きい港湾貨物―
富山伏木港の取扱品目は必ずしも多くなく、中古車など少数の貨物の動向で、貿易総額が大きく変動している。
富山県内の各港(伏木富山港、富山空港)を経由した貿易については、財務省の「貿易統計」で詳細に知ることができる。「貿易統計」には、年月別・相手国別・品目(9桁分類)別・税関(富山県内は伏木税関支署で本所、富山出張所、富山空港出張所がある)別に通関した貿易の金額及び個数・重量が掲載されている。
この内、金額については全体を集計できるが、為替レートの変動に留意しておく必要がある。物量については品目によって掲載事項が異なるため、港湾の荷役量を単純に集計することはでない。
また、県内企業の生産活動に伴う貿易については、企業自らあるいは他企業により他県経由での貿易もあり、県内企業全体の貿易の実態も把握できない。
さらに、膨大な統計であり、また分類名で即座に品目が推測できるとは限らないので、港の現場にいればごく普通に分かることでも統計から拾い出すことは容易ではない。 以上の事情から、「貿易統計」の県内税関分を集計しても、マクロ的な全体像を導き出すことは困難であるが、いろいろな国と多様な品目の取引がなされていることを伺い知ることはできる。
(1) 輸出金額
これまでの輸出額の推移については、リーマンショックの落ち込みからある程度回復したが、'10年代半ばに頭打ちから減少の様相が見らる。
2019年の伏木税関経由の輸出総額は、1775億円であった。
品目別には、2000年代に入ってロシア向けの中古車が急増したが、リーマンショック後に大きく落ち込み、一旦ある程度回復した。しかし、ロシアの政策により2015年には再び大きく減少しており、その後若干回復している。
金属製品については、中国向けの銅屑、銅線の構成比が大きい。
この詳細な内容は、グラフには表わしてないが、貿易統計で確認することができる。
国別には、2019年ではロシアが最大で、ロシアがこれに続いている。韓国は政治的摩擦もあり減少したようだ。
品目では、ロシアへの中古車の輸出が目立つ。中国へは、銅くず等の金属製品等と機械類が多い。
(2) 輸入金額
これまでの輸入額の推移については、リーマンショック以前に盛り上がっていたものが、ショックで落込み、その後ある程度回復してきている。
なお、富山港でのアラブ首長国連邦からの原油の輸入は、リーマンショックを契機に中止されたようで、富山港の輸入額は極めて少なくなっている。
2019年の伏木税関経由の輸入総額は、1992億円であった。
輸入については、これまで石炭・原油等の鉱物性燃料が太宗を占めていたが2009年に急減している。
ロシアからの木材・同製品は、かつて最も多い輸入品であったが、減少後、横這いで推移している。
国別には、中国が最大で、ロシア、マレーシアと続いている。
品目では、原燃料が多く、特に、ロシア、ニュージーランド等からのアルミニウム、インドネシア等からの石炭、ボリビアからの亜鉛鉱、さらにロシア等からの木材などが目立つ。
また、中国、東・東南アジア諸国からは、一般機械、電気機械等の輸入もある。
なお、マレーシアからの輸入は、特殊取扱品が太宗を占めている。
(統計データ)
(Feb.28,2016Orig.)
(3) 重量ベース取扱量
2018年の港湾貨物取扱量(海上出入貨物量)は、全国で2,221百万tであり、うち富山県は6.7百万tで0.30%であった。
臨海39都道府県の中では32番の低い位置にとどまっている。
伏木富山港での貿易貨物量について、輸出は現在1百万t前後で推移し、輸入はリーマンショック以前はかなりあったが現在は3百万t台で推移している
他方、移出入については、前者は2百万t程度であり、後者は0.1百万tと少ない。
輸入品の構成については、木材チップが最も多く、次いで石炭、LNG、その他石油製品とエネルギー関連が続いている。
輸出品の構成については、完成自動車(ロシア向け中古車)が最も多く、次いで金属くず(中国向け銅くず等)となっている。
輸入の推移については、現在、ロシアからの木材チップ、インドネシアからの石炭が多いが、リーマンショック以前はアラブ首長国連邦からの原油が極めて多かった。原木については、漸減し2018年ではゼロとなっている。
輸出の推移については、完成自動車がリーマンショックでかなり落ち込んだ後、乱高下している。また、金属くずは、0.2百万トン水準で推移している。
(この部分の説明は上述の財務省「貿易統計」を参考にしている。)
移入品の構成については、石油製品、重油、原油とエネルギー関連が太宗を占めている。
移出品の構成については、その他石油製品が最も多い。なお、これに次ぐのは水である。
移出は、重油、石油製品がリーマンショック時以来ゼロとなつている。
(統計データ)
(Dec.27,2019)
(4) 港湾の概要
伏木富山港
伏木地区、新湊地区、富山地区の3地区からなり、国際海上コンテナ、国際フェリー・国際RORO船、外航クルーズ(背後観光地クルーズ)の機能を持つ国際拠点港湾(2011年指定)
伏木地区
内港部;1万5千トン級船舶4隻、1万トン級船舶2隻が係留できる岸壁
外港地区;-10m岸壁1バース、-7.5m岸壁1バース、-14m(暫定-12m)岸壁1バース
新湊地区
5万5千トン級岸壁、1万5千トン級船舶が7隻係留可能な岸壁、
クレーンなどの荷役設備、コンテナ荷役機能
旅客船バース、海王丸パーク、海竜マリンパーク、元気の森公園、新湊大橋
背後に、広い野積場や貯木場、臨海工業地帯
⇒新湊大橋の通行料仮試算
富山地区
1万5千トン級船舶4隻、1万トン級船舶1隻
沖合に28万トン級タンカーが係留できるシーバース
富岩運河
⇒環水公園バーチャル博物館
(統計データ)
このように港湾の取り扱い品目、量は経済変動の中で、大きく変動しており、時代の要請に合わせた施設整備の切替を続けていく必要がある。
また、現在、新湊大橋の建設や富岩運河の整備など港湾周辺の環境整備に力が入れられており、地域なりの対応が必要である。
日本の港湾整備は、1970年代の初めには概成しており、建設事業関係者は海外事業に目を向けていく必要があるという認識があった(小生は、当時の運輸省港湾局の技官から聞いたことがある)。その後も各種の新たな需要に対応する必要はあったが、一方で、港湾周辺事業に目が向けられ、富山県では、伏木外港、新港海岸埋め立て、新港大橋、灌水公園などに予算が振り向けられている。それぞれ意味のある事業ではあろうが、地域社会全体、国全体の資源配分への配慮が欠けている。
(5) 貿易統計の入手方法 ―詳細なデータを入手し分類コードで集計―
インターネットで詳細な貿易統計が入手できる。
輸出入別、年(月)別、税関別、品目別、相手国別、金額(千円単位)
別途重量等の数量データもある。
例えば2014年の富山県内税関データであれば5,000件超となる。
具体的にExcelで集計するには、
まず各種分類コードの付いた個々のデータを行として並べた「貿易額一覧」を準備する。
次に、「集計表」の表頭・表側に分類コードを並べる。
SUMIFS関数を利用し、分類コードを検索キーとして、「貿易額一覧」から抽出集計する。
なお、それぞれの分類コードもインターネット入手できる。
税関コード
4400伏木税関支署
4420伏木税関支署富山出張所
4430伏木税関支署富山空港出張所
|
品目コード(9桁分類)
上2桁 部の分類
00 特殊取扱品
01-09 動物製品
10-14 植物製品
15 油脂
16-24 その他食品
25-38 鉱物
28-38 化学製品
39-40 プラスチック・ゴム
41-43 皮革毛皮
44-49 木材
50-59 繊維
60-61 編物
62-63 衣服
64-67 身の回り雑貨
68-70 陶器ガラス
71 宝石
72-83 金属
84 一般機械
85 電気機械
86-89 輸送機械
90-92 精密機械
93 武器
94-96 家具等
97 美術品
|
次頁(第4節)、節目次、章目次、表紙
(Jun.08,2020Rev./Mar.15,2009)
|