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第3章 ゆとりある郷土
第3節 交通
第4項 空港 ―コロナ禍でわずかな東京便のみに―
富山東京便の乗降客総数は、北陸新幹線の開業によりほぼ半減したと見られる。さらに2020年のCOVID-9により、国際便はなくなっており、国内便も定期では東京便のみとなっている。さらに地球温暖化対応等にも配慮すれば、空港経営のあり方について再考が必要である。
以下では、これまでの乗降客の推移を見ておく。
(1) 乗降客数の推移
東京便のこれまでの推移については、空港のジェット化、便数の増強といった契機毎に増加を示してきていた。実際には、需要増が見込まれる時期に便の充実を図ってきたともいえよう。最近では、2002年7月に、日本航空便が開設され1日8便となり、乗降客数を一層増加させた。しかし、この増便は、経営的に必ずしも思わしくなく、2006年3月で日本航空便は廃止された。さらに2015年には北陸新幹線が開通している。この結果、乗降客数は大幅に減少している。
東京以外の国内便は、札幌便のみとなっており、横這いで推移している。
国際便は不透明たが、台湾便などて増勢が見られる。
しかし、コロナ禍により、2020年には、国内では定期は東京便のみ、他にわずかなとチャーター便となり、国際便は皆無となった。
東京便以外の国内線の合計乗降客数については、1997年をピークに急速に減少している。
このうち、札幌便(1便/日)の乗降客が最も多いが、2000年代に入って漸減傾向が続いている。また、これに次ぐ福岡便(1便/日)も1996年をピークに漸減気味に推移し、廃止に至っている。
さらに、名古屋便、函館便、沖縄便は、既に廃止となっている。
他方、国際線については、かつてはソウル便の乗降客数が最も大きかったが2000年代に入って減少気味に推移している。2006年夏期から増便(5便/週)となり、乗降客数の回復があったが、再び漸減している。
また、大連便については、2006年夏期から増便(4/週)されたが、横ばいが続き、さらに2010年代に入って大幅に減少している。
他方、2012年度に台北便が開設され、2016年度は46千人で国際線では最大となっている。また、上海便の伸びも大きい。ただし、これらの便が今後とも伸びるかは定かではない。
(Sep.27,2021Rev.)
(2) 国内各空港の状況
全国の都道府県毎の空港での国内線乗客数を見ると、東京が最も多く、大阪、北海道が並び、さらに福岡、沖縄と続く。これらは概ね常識的に予想されるところであろう。
一方、本州中央部の多くの県については、空港がない(あるいは営業されていない)ところが多い。
(統計データ)
(3) 富山空港の経営状況
平成25年度県収支内訳 千円 |
歳入 | 着陸等収入 | 392,698 |
土地建物等貸付料収入 | 55,380 |
国庫補助金等 | 336 |
航空機燃料譲与税 | 29,544 |
その他 | - |
歳出 | 空港整備事業費 | 42,048 |
環境対策費 | 12,421 |
空港等維持運営費等 | 515,611 |
建物借料 | 29,026 |
国有財産等所在市町村交付金 | 5,050 |
収支 | -126,198 |
富山空港の利用促進に関する検討会」の報告より |
北陸新幹線開設により、東京便は大幅に減少した。
この結果、空港の経営事態が厳しくなっているが、どのように対処していけばよいのだろうか。
「富山空港の利用促進に関する検討会」の報告(平成21年3月)では、富山空港の将来のあり方とともに活性化方策が検討されている。また、「富山きときと空港活性化検討会議」の報告(平成27年2月)では、空港活性化方策とともに経済効果等の検討がなされている。
このうち後者には、経済効果として時間短縮効果、観光入込客数増加により財サービス売上増加効果が試算されている。しかし、かなり多くの仮定を置いた計算とならざるを得ない。また、そのメリットを誰がどのようにして支払うべきなのかも難しい問題である。さらには、空港利用促進は温暖化ガス排出の拡大を促すことにもなるのだが、これは議論の仕方がかなり難しい。
ちなみに2016年度全便の乗降客数は、2013年度に比して6割弱となっており、仮に着陸等収入がこれに比例するとすれば約168百万円の減収で、県収支の赤字は倍以上となる。当面は県財政の持出し増加が避けられないだろうが、そのメリット・デイメリット等を透明にして伝えていくべきであろう。
なお、現在(2020.6.3)、COVID-9の影響により、先行きが全く見えなくなっている。
かつて、富山国体が開催された際に、富山駅から空港・競技場までの鉄道敷設を実現していれば、小松空港に勝る利便性の高い空港となる可能性があった。笹津線跡地がかなり明確に見えている間は、敷設がかなり容易であったと思われる。もちろん財政的な対応が大きな課題であった。しかし、最早、繰言である。
(4) 地球温暖化と航空
地球温暖化の中で、炭酸ガス排出の課題があり、大局的な視点からは、航空機使用の抑制が求められている。
具体的には、民間企業や個々人の行動は、炭素税の導入等によって抑制されるシナリオが早急に準備され実施されるべきであろう。
空港経営に関与する県としては、どのような行動が求められるのだろうか。自発的な抑制行動と地域発展施策が矛盾するという事態に直面している。
多分、地域発展に関する従来型の発想が変化すべき時期に来ているという解釈が必要なのであろう。
この課題については、広範な議論を興し県民の合意形成を早急に図っていく必要があり、施策の転換が求められているといえよう。
飛行機の炭素排出量はどれ位いか、整合性のある資料を持ち合わせていない。
航空会社の資料で、1座席km(ASK)当たり25gだという情報がある。また、車と飛行機は単位重量距離の運搬に同じエネルギーが要るという情報もある。この二つの情報は、1.5人乗った車がガソリン1リットルで17km走るとすると同等の意味を持つこととなる(ガソリン1リットルの炭素の重量を630gとする)。
1ASKに25gとした場合、例えば、東京・ニューヨーク間は、10,000km強であり、仮に往復すれば、0.5tの排出ということとなろう。
「ロンドンからカリフォルニアまで運ぶ旅客一人につき大気中に1トン近い炭酸ガスを排出する。」という言説があるが、炭素ベースでは約1/4となり、概ね整合性があると考えられる。
ちなみに、全世界で一人当たり炭素排出量は1t/年、中国で0.5t/年、日本は2.4t/年である。
このような数値を並べてどう判断するか。地球上で、炭素排出量が満杯になっていると考えられる今日において、ニューヨークへ往復することが、犯罪的な行為と考えられても、容易に否定できないだろう。
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⇒航空の在り方再検討
(Jan.08,1998.Orig.)
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(Sep.27,2021Rev./Jan.05,1998.Orig.)
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