航空の在り方再検討
(1) 空のモーダルシフト 空港の利用は今後どう変化していくのか。 基本的には経済の動向によって決まっていこう。この意味で極めて不確定である。 さらに、不確定な要素は、地球温暖化対策と人々の行動変化である。 具体的な温暖化防止対応の行動は、炭素消費的な行動の中で比較的容易に代替行動が取れるもの(限界的な行動)から順に転換が起こっていく。炭素(炭酸ガス)排出削減手段が、炭素税であれ、直接的規制であれ、あるいは各自の主体的協力であれ、いずれであっても、限界的な行動からの転換を避けることはできない。 富山・東京間の移動については、鉄道便の代替手段がある。鉄道と空港では、炭素消費に10倍以上の格差があるとされている。東京へJRで行くのは、時間的には劣るが比較的代替容易で、我が国の中では、限界的な行動の中に入るのではなかろうか。 新幹線の整備は、この視点で求められるものであり、現在の北陸新幹線が、さらに延伸し、時間距離が近くなれば、東京便は相当程度解消していく可能性がある。 こうした中で、空港経営をどう展開していくか、困難ではあるが、将来を見据えた対策を展開していく必要があろう。 温暖化対策の展開のもとで、仮に空港利用量の維持を狙うのであれば、既存の航空需要の富山空港への集約を仕掛ける方策があるかもしれない。 富山市内の交通体系の見直しの中で、駅・空港間の軌道を整備し、これと新幹線整備と合わせて広域的にも利用の便に優れたものとしていく。これによって、ソウル経由等海外への日本側のハブ空港化というシナリオとなろう(ただし、国内側では、鉄道・航空便の乗り継ぎであり通常ハブとはいわないであろう)。なお、現在空港へのアクセスが便利で、国内のハブ的な地位を持っている空港としては福岡板付があるのではなかろうか。 (Jan.10,1998.Add.) (2) 公共投資と利用者負担 交通関連施設の整備には、様々な形で公的投資が行われている。 また、利用者の交通手段の選択に影響を与える重要な要素として、料金がある。 このため、利用者負担の水準をどう設定するかは、交通手段のあり方に関する哲学の反映と考えざるをえない。 飛行場については、例えば、新たに着工された能登空港の例では、総事業費 270億円、年間利用者30万人で、総事業費について5%の金利を払い続けるとすると約5千円/人の支援、さらに、空港維持費については、旅客機の空港利用料ではもとより賄いきれず、1人当たり何千円かの補助がなされている計算になる。 このようにして見ると、飛行機の利用者には、1人1利用当たり数千円の支援を公的に行っていることとなる。 これは、鉄道や高速自動車道のように施設建設費を入れて自立採算が建前となっている交通手段と比較してどのような意味をもっているのであろうか。 飛行場は地域の振興にとって重要な基盤施設であることは間違いない。 利用者負担の実態から勘案すれば、飛行機を利用する人は、他の交通手段を利用する人より、地域にもたらす影響の大きい人であり、公的に便宜を図っておくことが大切であるという哲学があることとなる。 なお、実態の問題としては、利用者への支援でなく、航空会社への支援という捉え方も十分可能である。また、各地域間の競争があり、それぞれは不本意ながら支援せざるを得ない状況に追い込まれていることも事実であろう。 しかし、地域に航空会社を支援するいわれはなく、国家的見地から解消されるべき問題であろう。また、地域間の競争はいいわけであって、そうした競争の中でなおかつ地域が主体的に支援を選択しているとみなす必要がある。 (Nov.07,1998.Add.) 小生の回答;現況は、航空会社の取り分が多すぎる。このため規制緩和の中での自由競争によって生産性を上げる必要がある。 この生産性向上分は、利用者というより、空港経営者に還元するのが正統である。 地域間競争の中で特定の地域が空港利用料を引き上げることは困難だが、国段階での誘導か、あるいは実態を明白にして、各地域の住民が要求し始めることを期待する。 こうした環境の中では、成立しない空港も現れようが、それは淘汰されてしかるべき空港と捉える。 なお、この捉え方は、航空会社の自由競争を除いて、現在の運輸省の施策の方向と異なるものである。 (Nov.09,1998.Add.) 関連項目に戻る (Nov.14,2019Re_ed./Jan.08,1998.Orig.) |