第2章 富山の舞台 第4節 国際社会の中で 第1項 地球は満員
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(1) 人口 (2) GDP (3) 一人当たりGDP (4) CO2排出量 (5) 食糧(カロリー)摂取量 (6) 生活用水消費量 |
一人当たり負荷量と世界比 | |||||||||
世界 | USA | Japan | China | ||||||
単位 | 年次 | 負荷量 | 負荷量 | 世界比 | 負荷量 | 世界比 | 負荷量 | 世界比 | |
GDP | US$ | 2018年 | 11,364 | 62,795 | 5.53 | 39,290 | 3.46 | 9,771 | 0.86 |
CO2 | t/年 | 2014年 | 4.69 | 16.50 | 3.52 | 9.54 | 2.03 | 7.54 | 1.61 |
Cal | cal/日 | 2017年 | 2,917 | 3,766 | 1.29 | 2,697 | 0.92 | 3,194 | 1.09 |
Water | g/日 | 各国 最新年 | 193 | 593 | 3.07 | 378 | 1.96 | 137 | 0.71 |
世界各国の排出量を人口と一人当たり排出量に分けてみると次図のようになる。 日本は排出総量の3%であるが、一人当たり排出量は、8.0t/年で、世界平均の約倍となっている。これは、主要先進国の中では、オーストラリア、カナダ、アメリカ、韓国に次いで大きい。 世界各国の年当たり排出量については、まず中国が2000ゼロ年代以降急速に増大し、ゼロ年代半ばにはアメリカを抜き、さらに増大し続けている。 インドの増加も著しく、現在はアラブ諸国合計を上回るようになり、アメリカに次いでいる。これらに次いで、ロシア、日本がある。。 先進諸国については、EUが1980年代から漸減しており、アメリカは2000ゼロ年代後半から削減に転じているが、ロシア、日本は横這いで方向が明確でない。 CO2排出量が6億t/年以下の国のうち多くの先進国は排出量を漸減させている。 これに対して、多くの発展途上国は、経済的離陸とともに、著しい増加を見せている。 なお、韓国の増加も著しく、このグループの中ではドイツに次いで多くなっている。 国ごとの最近10年間の排出量の変化については、中国、インドの増加が特に目立つ また、中東や東南アジア等の発展途上国の増加も目立つ。 ヨーロッパ諸国についてはトルコ等を除きそれぞれなりに削減しており、アメリカもある程度削減している。これに対して日本の削減は、わずかなものにとどまっている。 ちなみに最近10年間の排出量の変化と一人当たりGDPの相関を見ると、GDPの大きな国(先進諸国)では、ヨーロッパの各国の減少幅は総じて大きいが、国土が広く自動車利用に頼っているカナダ、オーストラリアの減少幅は小さいものにとどまっている。アメリカは、以前は削減があまり進んでいなかったが、バイデン大統領の下でかなり進んできた。そして日本の減少幅はアメリカより小さいが、バイデン大統領の就任に際しての方針転換を聞いて、本気になって削減していくことを改めて表明した経緯がある。 一人当たりCO2排出量について、多くの先進国はそれぞれなりに削減しているが、発展途上国では増勢が続いている。 一人当たりGDPと一人当たりCO2排出量は相関があり、今後、多くの発展途上国の経済成長とともにCO2排出量が増加が予想され、先進国が削減しても、世界全体で減らしていくことはかなり困難であろう。 大局的にみて、先進国が排出を大幅に削減し排出枠を発展途上国に譲るとともに、発展途上国も排出を増やさないよう努めないと、排出量を抑制していけないことは明らかであろう。 2021年11月のCOP21で新たな目標が提示されたが、現在の人類社会には、調整していく能力がないようだ。特に日本の目標はお粗末極まりない。これではグレタさんに叱られて当然であろう。 こうした中で、個人が、地域が、国がどう行動していくか。 「地球に優しく」などという掛け声は聞こえるが、実際には、真摯に取り組んでいるようには見えない。あるいは、知的に行動しているようには見えない。 例えば、風を受けれる自動車に乗っていても、窓を閉め切って冷房をしている車が多い。あるいは、風通しのよい建物の中でも、敢えてその風を活かそうとはしていない。さらにこのような事柄は意味の乏しい言い訳の議論であり、本質的には、自動車の利用自体を大幅に減らしていく、快適性は多少放棄し冷暖房の利用の温度の限界を大きく変えていくのでなければ、個々人がそれぞれの生き方の中でCO2削減に本当に努力していることにはならない。 あるいは、行政施策においても、一旦、「コンクリートから人へ」とのキャッチフレーズがあったが、かなり後戻りしつつある。 なお、自然エネルギーの活用が様々に工夫され次第に普及しつつある。これを極限まで推し進めることは当然必要であろう。 (統計データ) ⇒地球平均気温の推移 (5) 食糧(カロリー)摂取量 一人当たり摂取カロリー量は、各国の食文化によって水準は異なるが、一定の経済水準に至るまでは、増加していくようである。 一人当たりGDPと一人当たり摂取カロリー量は、ある程度の相関を持っている。 今後、多くの発展途上国の経済成長によって、食糧需要が増加していくであろう。単に、カロリー摂取のみでなく、例えば牛肉等の高品質(生産に一層多くの飼料が必要)な食糧の需要増加も伴って、世界の食糧需給が大きく変化していくであろう。 ⇒我が国の食料自給率の推移 現時点で世界の食糧需給を考察する限りは、全体では供給が需要を上回っているが、個々人まで的確に届けられる仕掛けが欠けているとされる。これは、自由主義市場経済の限界が露呈しているものと言えよう。 また、WTO等を通じた貿易自由化の中で、食糧についての対応が課題となっている。ここでは、輸入の自由化は要請されるが、例え一国で食糧不足が起こっても輸出を従前通り行うべきという意味での輸出の自由化は約束されていない。このため、食糧輸入国は極めて危険な立場に立たされている。WTOなどの世界の経済制度が一部の国家の思惑で規定されていることを十分認識して、制度(ゲームのルール)作りにも発言していかなければならない。 さらに、それぞれの国家の食糧安全保障のためには、ある程度の開発輸入も仕組まなければならないであろうし、基本的には、非常時に遅滞なく自国内で自給していける基盤を維持していくことが必要であろう。 この点に関して、地域では農地維持や農業生産体制の保全に努めなければならない。しかし、現状では、表面的な努力はともかく、実態は、真摯に農業を行わない農家の利益ばかりを慮っているように見える。 (6) 生活用水消費量 一人当たりGDPと一人当たり水消費量には相関がある。 ただし、各国の水事情の違いがあり、フランス、ドイツは少な目となっている。これに対して高所得のシンガポールは、マレーシアから輸入し大きな消費量となっている。 日本は、豊かな水に恵まれ、浪費気味とも言われるが世界全体の相関関係にほぼ乗った位置にある。 経済成長、生活水準の向上に伴って、生活で消費する水の量も増加していくことが予想される。 いずれにしろ、各国の経済成長、人口増加、さらには異常気象の発生等によって、地域的に厳しい水不足の問題が発生していくであろう。 水は、工夫によってかなり節約できるとともに、相当程度再利用が可能な資源である。世界的には、このための技術の普及・活用に努めていく必要があろう。 また、水は移動の難しい資源であるが、この可能性も探っていかなければならない。 (統計データ) (Jul.01,2024Rev./Nov.19,2021Rev.) |