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第2章 富山の舞台
第4節 国際社会の中で

第1項 地球は満員
―発展途上国の経済成長と地球的限界―

(1) 人口
(2) GDP
(3) 一人当たりGDP
(4) CO2排出量
(5) 食糧(カロリー)摂取量
(6) 生活用水消費量

一人当たり負荷量と世界比

世界USAJapanChina

単位年次負荷量負荷量世界比負荷量世界比負荷量世界比
GDPUS$2018年11,36462,7955.5339,2903.469,7710.86
CO2t/年2014年4.6916.503.529.542.037.541.61
Calcal/日2017年2,9173,7661.292,6970.923,1941.09
Waterg/日各国
最新年
1935933.07 3781.96 1370.71
 第二次世界大戦後、世界の国々は先進国と発展途上国に二分され、先進国とごく限られた途上国のみが経済成長を遂げ、他の多くの途上国は停滞を続けていた。しかし、1990年代さらには2000年代には、ブラジル、メキシコに加え東アジアの国々、さらにはインドなどかなりの途上国が経済成長を見せ始めている。
 こうした中で、地球温暖化を始め、食糧、水など多様な側面で、世界全体としての限界が明確になってきている。
 もし発展途上国を含めて世界全体の人が、現在の先進国水準の生活を実現するとすれば、地球が2,3個必要ということになろう。
 こうした問題に適切に対処できなければ、人類社会の混乱し、さらには生物大量絶滅の危機が訪れることさえ見え始めている。2020年の今、世界は新型コロナウィルスの感染拡大で混乱に陥り対応に追われている。地球温暖化を始めとする諸課題にも同様の意識を持って対応しなければならないのだが、問題は将来のこととして、危機意識が極めて低い。


 以下では、各国及び世界全体の人口、生産の実態とともに、CO2排出量、食糧摂取量、生活用水消費の動向について、基礎的なデータを整理する。
 人口等の規模の大きな国を個別に示すとともに、その他は地域毎に集計して示した。具体的な地域区分は右表のとおりである。

 なお、世界銀行の統計データペースでは、世界の217か国・地域の1429種類の60年間の統計が提供されている(2020年3月現在)。



(1) 人口
 2018年現在、人口十億人以上の国は、中国及びインドの2か国である。また、人口一億人以上、十億人未満国は、11か国である。
 これらのうち先進国は、アメリカ、ロシア、日本で、先進国を除く10か国はそれぞれなりに経済成長中の国である。


 近年(2010年〜2018年)の人口増加率は、地域別には、アフリカ諸国、中東諸国で著しく高くなっている。
 また、人口大国のインド、その他の南アジア諸国でも高い。
 なお、人口最大国の中国は、ヨーロッパ諸国並みの伸びに留まっており、まもなくインドが最大国になると見込まれる(現在の趨勢では2023年頃)。


 近年、多くの発展途上国の人口増加が著しく、特に南アジア、アフリカ諸国等での増加は、多くの課題をもたらしている。


 先進国の人口は、横ばい気味に推移しており、日本、イタリアなどは既に減少が始まっている。
 また、東欧の戦乱国等でも減少している国がある。



(2) GDP
 2018年現在、GDP1兆US$以上の国は、16か国あり、当然だが、全体としては先進国に偏っている。
 しかし、中国がアメリカに次ぎ2番目の大きさであり、さらにブラジル、インド、メキシコも含まれている。


 2010年代の経済成長率については、アジア、旧ソ連、東欧、アフリカ、南米で著しく高い国が目立つ。
 これに対して、先進国は停滞気味である。


 歴史的に見ても、2000年代に入ってから立ち上がっている国が目立つ。
 ただし、2000年代に横ばいに転じている国も多い。日本がその典型である。




 中国、インドはなお高い成長を続けている。


先進国の年々の経済成長率は5%以下に落ち込んでいる。



(3) 一人当たりGDP
 多くの先進国では、3、4万US$/人水準となっている。
 これに対して、多くの発展途上国は1万US$/人以下である。
 発展途上国の人口の比率に鑑みると、現在成長の著しい途上国が、先進国水準に近付くことによって、各種資源需要等の規模がとてつもないものとなっていくことは間違いない。
 これは、例えば3万US$水準に横線を引き、その下部がすべて埋まると考えれば分かる。


 一人当たりGDPについて、20世紀中は停滞気味であったが21世紀に入って急速に伸びている国が、かなりある。



(4) CO2排出量
 世界の温暖化ガス排出総量は、2018年時点で340億t(CO2相当)であった。このうち中国31%、アメリカ15%、7%で全体の53%と半分を超える。


 世界各国の排出量を人口と一人当たり排出量に分けてみると次図のようになる。
 日本は排出総量の3%であるが、一人当たり排出量は、8.7t/年で、世界平均の約倍となっている。これは、主要先進国の中では、オーストラリア、カナダ、アメリカ、韓国に次いで大きい。
 世界各国の年当たり排出量については、まず中国が2000ゼロ年代以降急速に増大し、ゼロ年代半ばにはアメリカを抜き、さらに増大し続けている。
 インドの増加も著しく、現在はアラブ諸国合計を上回るようになり、アメリカに次いでいる。これらに次いで、ロシア、日本がある。。
 先進諸国については、EUが1980年代から漸減しており、アメリカは2000ゼロ年代後半から削減に転じているが、ロシア、日本は横這いで方向が明確でない。

 CO2排出量が6億t/年以下の国のうち多くの先進国は排出量を漸減させている。
 これに対して、多くの発展途上国は、経済的離陸とともに、著しい増加を見せている。
 なお、韓国の増加も著しく、このグループの中ではドイツに次いで多くなっている。


 国ごとの最近10年間の排出量の変化については、中国、インドの増加が特に目立つ。 また、中東や東南アジア等の発展途上国の増加も目立つ。
 ヨーロッパ諸国についてはトルコ等を除きそれぞれなりに削減しており、アメリカもある程度削減している。これに対して日本の削減は、わずかなものにとどまっている。



 一人当たりCO2排出量について、多くの先進国はそれぞれなりに削減しているが、発展途上国では増勢が続いている。


 一人当たりGDPと一人当たりCO2排出量は相関があり、今後、多くの発展途上国の経済成長とともにCO2排出量が増加が予想され、先進国が削減しても、世界全体で減らしていくことはかなり困難であろう。


 大局的にみて、先進国が排出を大幅に削減し排出枠を発展途上国に譲るとともに、発展途上国も排出を増やさないよう努めないと、排出量を抑制していけないことは明らかであろう。
 2021年11月のCOP21で新たな目標が提示されたが、現在の人類社会には、調整していく能力がないようだ。特に日本の目標はお粗末極まりない。これではグレタさんに叱られて当然であろう。
 こうした中で、個人が、地域が、国がどう行動していくか。
 「地球に優しく」などという掛け声は聞こえるが、実際には、真摯に取り組んでいるようには見えない。あるいは、知的に行動しているようには見えない。
 例えば、風を受けれる自動車に乗っていても、窓を閉め切って冷房をしている車が多い。あるいは、風通しのよい建物の中でも、敢えてその風を活かそうとはしていない。さらにこのような事柄は意味の乏しい言い訳の議論であり、本質的には、自動車の利用自体を大幅に減らしていく、快適性は多少放棄し冷暖房の利用の温度の限界を大きく変えていくのでなければ、個々人がそれぞれの生き方の中でCO2削減に本当に努力していることにはならない。
 あるいは、行政施策においても、一旦、「コンクリートから人へ」とのキャッチフレーズがあったが、かなり後戻りしつつある。
 なお、自然エネルギーの活用が様々に工夫され次第に普及しつつある。これを極限まで推し進めることは当然必要であろう。
 ⇒地球平均気温の推移



(5) 食糧(カロリー)摂取量
 一人当たり摂取カロリー量は、各国の食文化によって水準は異なるが、一定の経済水準に至るまでは、増加していくようである。



 一人当たりGDPと一人当たり摂取カロリー量は、ある程度の相関を持っている。


 今後、多くの発展途上国の経済成長によって、食糧需要が増加していくであろう。単に、カロリー摂取のみでなく、例えば牛肉等の高品質(生産に一層多くの飼料が必要)な食糧の需要増加も伴って、世界の食糧需給が大きく変化していくであろう。

 ⇒我が国の食料自給率の推移

 現時点で世界の食糧需給を考察する限りは、全体では供給が需要を上回っているが、個々人まで的確に届けられる仕掛けが欠けているとされる。これは、自由主義市場経済の限界が露呈しているものと言えよう。
 また、WTO等を通じた貿易自由化の中で、食糧についての対応が課題となっている。ここでは、輸入の自由化は要請されるが、例え一国で食糧不足が起こっても輸出を従前通り行うべきという意味での輸出の自由化は約束されていない。このため、食糧輸入国は極めて危険な立場に立たされている。WTOなどの世界の経済制度が一部の国家の思惑で規定されていることを十分認識して、制度(ゲームのルール)作りにも発言していかなければならない。
 さらに、それぞれの国家の食糧安全保障のためには、ある程度の開発輸入も仕組まなければならないであろうし、基本的には、非常時に遅滞なく自国内で自給していける基盤を維持していくことが必要であろう。
 この点に関して、地域では農地維持や農業生産体制の保全に努めなければならない。しかし、現状では、表面的な努力はともかく、実態は、真摯に農業を行わない農家の利益ばかりを慮っているように見える。

(6) 生活用水消費量
 一人当たりGDPと一人当たり水消費量には相関がある。
 ただし、各国の水事情の違いがあり、フランス、ドイツは少な目となっている。これに対して高所得のシンガポールは、マレーシアから輸入し大きな消費量となっている。
 日本は、豊かな水に恵まれ、浪費気味とも言われるが世界全体の相関関係にほぼ乗った位置にある。


 経済成長、生活水準の向上に伴って、生活で消費する水の量も増加していくことが予想される。


 いずれにしろ、各国の経済成長、人口増加、さらには異常気象の発生等によって、地域的に厳しい水不足の問題が発生していくであろう。

 水は、工夫によってかなり節約できるとともに、相当程度再利用が可能な資源である。世界的には、このための技術の普及・活用に努めていく必要があろう。
 また、水は移動の難しい資源であるが、この可能性も探っていかなければならない。

(統計データ)


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(Nov.19,2021Rev.)