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第4章 堅実な生活
第6節 開かれた生活習慣
第1項 県民生活

2.生活行動
―活動は回復気味だが未だゆとりなし―

(1) 富山県民の各種活動行動者率の変化
(2) 趣味行動者率
(3) スポーツ行動者率
(4) 学習行動者率
(5) ボランティア行動者率
(6) 旅行行動者率
(7) 宗教活動

 経済活動については、多様な統計があり、その動向はそれなりに把握できる。しかし、各人の生活行動については、統計が限られ実態の把握は難しい。こうした中で、総務省の「社会生活基本調査」は、5年毎に実施され、都道府県段階でも一定の標本数(富山県で3,871)があり、貴重な情報を提供している。ただし細分された項目の取り扱いでは不確実さを覚悟しておく必要がある。


(1) 富山県民の各種活動行動者率の変化
 自由生活分野での各種活動(*)の行動者比率は、概して'90s後半以降落ち込んでいたが、'10sに入り、趣味やスポーツ活動で回復の様相を見せている。しかし、ボランティアや旅行行楽活動は横這いが続き、ゆとりある生活の回復には至っていないようである。

  *自由生活分野の活動;三次活動 睡眠・食事等の一次活動、労働・学業等の二次活動を除く自由な活動





(2) 趣味行動者率
 趣味(文化)活動については、1990年代後半に大きく落ち込んだ後、'10sに入ってようやく回復しつつある。(右図再掲)

 ⇒趣味(文化)活動詳述(第5節第1項)


 地域的には、大都市圏域で高いが、富山県もやや高めである。(右図再掲)



(3) スポーツ行動者率
 スポーツ活動については、1990年代から2000ゼロ年代前半まで大幅に落ち込んだ。その後趣味活動と同様に、'10sにようやく回復しつつある。(右図再掲)

 ⇒スポーツ活動詳述(第5節第2項)


 地域的には、関東・関西の大都市圏で高い典型的なパターンである。(右図再掲)



(4) 学習行動者率
 学習活動については、1990年代半ばに大きく落ち込んだが、その後緩やかに回復している。(右図再掲)
 個々人の飛躍のためにも、落ち込んだもままではいれないのであろう。
 ただし、富山県は落ち込んだ後の回復が弱いものとなっており、全国平均と大きな差が出ている。

 ⇒学習活動詳述(第4節第3項)


 地域的には、大都市圏での活動が際立っており、富山県は中程度である。(右図再掲)



(5) ボランティア行動者率
 ボランティア活動については、概して低下気味で推移している。(右図再掲)
 こうした中で、2016年の富山は拡大しており、都道府県の中でも7番目の高さとなった。
 趣味やスポーツ活動とは違い、ボランティア活動については、精神的な豊かさに向かうゆとりが出てこないと、拡大できないのであろう。

 ⇒ボランティア活動詳述(第6節第3項)


 地域的には、他の分野と異なり、大都市圏でむしろ低くなっている。(右図再掲)



(6) 旅行行動者率
 旅行については、1990年代後半から漸減が続いている。
 これは、経済的ゆとりが回復しないことが背景にあるのだろう。


 地域的には、本州中央部で高いのだが、富山県の高さが目立っている。逆に大阪府、静岡県で低い。



 生活行動の経年的変化は、我が国の社会経済全体の基調的変化として捉えられよう。バブル経済の崩壊後、'90s半ばから雇用情勢にも大きな変化が現れ、経済的ゆとりがなくなり、さらには、精神活動ゆとり、ひいては時間的的ゆとりまで乏しくなっていたが、'10s代に入り、ようやく時間的ゆとりを取り戻しつつあるということであろうか。
 また、大都市圏で活動が盛んであるのは、どのようなことが影響しているのであろうか。その他の地域では、共に行動する人が少なく、臨界値に達し難いということであろうか。この点に関しては、インターネット等により、情報の透明化の進んでいる時代であり、また、地域の各放送局や北日本新聞なども地域の諸活動の報道に励んでおり、状況が変化していくことが期待される。
 このような活動の活性化は、誰かがリードする話ではなく、まさしく各自の意欲に基づく、各自の課題である。その上で、地域全体として、盛り上がる(活性化する)ことが期待される。

 しかし、2019年末の世相についての印象だが、ワールドカップやオリンピックなどの「サーカス」に関心が奪われ、社会的課題への関心が薄れ、ポピュリズムへ傾斜しているのではなかろうか。


(7) 宗教活動
 ここで宗教活動に関連して、信者数の統計に触れておく。
 文化庁の「宗教統計調査」によれば、2020年末時点での富山県の神道及び仏教信者数は、それぞれ人口比で121%、115%であり総人口を上回っていた。ちなみに全国平均では、それぞれ70%、67%であった。
 また、仏教信者数について、富山県は都道府県の中では、東京都に次いで全国で2番目に多い。またその他の道府県の仏教信者数は総人口より少なくなっている。
 このように信者数が人口比で極めて多いのは、それぞれの宗教組織が、個々人の信心を確認せず、所掌地区の総人口等を信者数として計上しているためであろう。
 富山で仏教徒が特に多いことについては、老人クラブ加入率が相対的に極めて高く、かつては100%を超えていたことと類似した現象かもしれない。
 なお、全宗教の信者総数について、富山県では2020年末で人口比で239%となるが、2010年末の207%より増加している。また、全国平均では2020年末147%で、2010年末の156%より減少している。いずれにしろ、本統計では、宗教信者数の実態は、まったく把握できていないと言えよう。

 現代社会において、宗教は、虚構としての認識が広まる中で、総じて機能が低下してきていると見られる。しかし、宗教は、人々の倫理観を規定する重要な役割を持っているはずである。このため、今日なりに社会の人々の倫理観を育むために、地域社会の中で、子供達を温かく見守り育てることが、喫緊の課題となっているのではなかろうか。

(統計データ)

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(Dec.12,2021Rev./Mar.25,2015Re-Ed.)