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第4章 堅実な生活
第6節 開かれた生活習慣
第3項 新たな活動

1.ボランタリィな活動
―地縁でのボランティア活動に参加―

(1) 行動者率
(2) 行動者率の変化
(3) 年齢階層別行動者率
(4) 行動日数
(5) 行動者率と行動日数の関係

 富山県では、一見ボランティア活動が盛んなように見えるが、実態は、地縁社会で要請される活動への参加が多い。


(1) 行動者率
  相対的には、家族地域社会に重点を置いてきたと考えられる富山県にあっては、ボランティア活動は、低調であろうと予想される。しかし、「社会生活基本調査(2016年)」によれば、その行動者率(過去1年間にやったことのある人の比率)は、富山県では32.4%であり、全国の26.0%に比して高く、都道府県の中では7番目となっている。
 この行動者率は、滋賀、福井、石川、長野、岐阜など富山の周辺の諸県は高くなっている。
 なお、行動者率の特に低いのは、大都市圏の都府県である。北海道、青森、高知、沖縄も低い。


 ボランティア活動の形態(それぞれの活動の拠りどころとなる組織)について見ると、もっとも多いのは、町内会等の組織である。これは、法的強制力はないという意味では、ボランティアに分類されるのであろうが、義務的参加に近いものと考えられる。


 町内会等の組織での活動の種類としては、まちづくりが最も多いが、町内の清掃等が含まれるのであろう。



(2) 行動者率の変化
 全国各都道府県の行動者率(総数)の変化を見ると、2016年では全国では横這いとなっているが、富山は石川、福井とともに増加しており、特に富山については、7番目までに上がった。


 2016年に富山で特に増加したのは、種類別ではまちづくりのための活動であった。また、高齢者を対象とした活動も増加している。


 形態別では、町内会などの組織で増加している。



(3) 年齢階層別行動者率
 ポランティア活動の行動者率を年齢層別に見ると、34歳以下の若年層で低く、35歳以上の層で高いといった年齢層での違いがはっきりしている(年代論)。これは、世帯形成層で高くなっているとみられ、地域での清掃活動などへの参加が背景にあると考えられる。
 富山県では各年齢層で全国平均を上回っている。



 経年的には、2016年には、55歳以上で行動者率が増加している。


 全国のポランティア活動の行動者率では明確な変化は見られない。




(4) 行動日数
 活動する人の行動日数について見ると、活動日数が最も多いのは、スポーツ・文化等の活動である。これは子供等の活動の指導などが含まれるのであろう。
 逆に少ないのは、災害、まちづくりとなっている。まちづくりについては、決められた特定の日に活動しているものと見られる。




(5) 行動者率と行動日数の関係
 富山県民の各種ボランティア行動を全国と比較してみると、まちづくりや自然・環境保全、安全な生活などのための活動で、行動者の率は高いが、それぞれの行動日数は少ない。多くの人が参加する活動は、結果として、一人当たりは僅かの活動になっているということである。
 逆に、行動者率は低いが、行動日数の多い種類のボランティアもある。

 ちなみに、この2つの種類は、後述のクラスター分析でのクラスターに対応している。


 ボランティア活動の種類別に行動日数を見ると、まず災害に関する者はどうしても限られた日数となっている。次いで、まちづくりについても、地縁社会で一斉に行うボランティア活動であれば、限られたものとなろう。
 一方、スポーツ・文化等の団体でのボランティア活動は、その団体が通年活動しておれば、自ずと行動日数は多くなろう。


 ボランティア活動を構成する各項目の都道府県毎の行動者率の相関係数(R2)を1から控除したものを項目間の距離として、クラスター分析により、指標の相互関係を整理しグループ化を試みると右図のようになる(2011年データーによる)。
 「まちづくり」は、いわゆる町内会活動が太宗を占めている。このため清掃活動を主体とする「自然・環境保守」とごく近縁にある。
 さらに「高齢者支援」とも老人クラブの活動等を通じて近い位置にある。
 他方、子供会や児童スポーツクラブ等の諸活動を通じて「子供支援」と「スポーツ文化等活動」は近縁にある。
 以上の活動に交通安全や防犯活動等を内容とする「安全生活活動」を加えれば、町内会の活動が一通り揃い、明確なグループとなっている。
 以下の諸活動は、それぞれ距離が離れているので、グループについては論じない方がよいであろう。



 以上のようなボランティアに関連する富山県民の行動をどう解釈するか。
 ボランティアといっても町内会の清掃、あるいは婦人会こぞっての施設での活動といった性格のものが含まれ、いわば近所付合いとしての活動が多いものと見られる。こうした活動は、見方によっては、半強制的な意味合いを持ち、純粋なボランティアではないといえよう。もちろん、このような行動を否定的に捉える必要はない。
 しかし、富山でのボランティアの行動者率が概して高いに拘わらず、ボランタリィな活動は低調と捉えることが当を得ているのではなかろうか。

 ボランティア活動の日米比較として、「貧しい人を支援すべきという気持ち」は双方にあり、それ以外では、日本で、知り合いへの活動や義務感がきっかけとする者が多く、アメリカで、自分自身の満足を高めようとする者が多いという。
 これになぞらえて言えば、奉仕活動行動者率の都道府県分布は、日本型ボランティアが、大都市圏で大きく減少し、周縁圏では比較的残っているのであろう。ただし、一部の過疎地域では崩れつつあるようだ。
 また、アメリカ型ボランティアが大都市圏を中心に芽生えつつありながら、人口比では未だ限られたものに留まっている。ただし、大都市圏では、人数がまとまり、多様な新しい活動が始められていると考えられる。

(統計データ)

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(Jul.17,2017Rev./Dec.30,2000.Orig.)