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表紙、◎
第4章 堅実な生活
第1節 絆の強い社会
第3項 豊かな消費
2.耐久消費財普及率 ―物持ちの富山県―
富山県ではゆとりのある住生活の下で、各種の耐久消費財を比較的多く保有している。
耐久消費財の普及率には2つの概念がある。一つは、個々の世帯が少なくとも一台を保有しているか否かを問う保有世帯比率である。これは単に普及率と呼ばれている。他の一つは、世帯当たり合計保有数量である。さらに世帯毎の保有数量別世帯数の分布を検討することもある。
なお、以下ではいずれも、二人以上の勤労者世帯の統計について検討している。
(1) 普及率
富山県での耐久消費財の普及率は多くの財で全国を上回っている。
ゆとりある居住空間の中で各種設備機器が普及している。
特に、温水洗浄便座は、北陸地方共通して高くなっている。
ただし、エネルギー関連の設備機器は、太陽熱温水器はもとより、太陽光発電システム、コージェネレーションシステムも普及率が低い。日照時間が相対的に少ないことの影響もあろうが、地球温暖化ガス排出抑制への意識が低いとも考えられる。
太陽熱温水器については、利用効率が高いと予想される中国、四国、九州で高い普及となっている。
比較的高い家計収入の下で、各種家庭用耐久財についても冷蔵庫、電気掃除機、洗濯機などが揃えられていることはもとより、IHクッキングヒーターなどの普及率も相対的に高い。
ただし、ホームベカリーなど特定の機器で普及率の低い財がある。
自動車の普及率については、西東北、北関東、北陸当等の多くの県で100%近くの普及率となっている。
教養娯楽用耐久財については、パソコンを除くと普及率は若干低い。
ピアノの普及率も約1/3にとどまっている。
各耐久消費財の都道府県毎の普及率による耐久消費財の性格及び都道府県の特性分析について、別途の多変量分析を参照していただきたい。
⇒多変量分析
(2) 保有数量
富山県の耐久消費財の世帯当たりの保有数量については、住宅の部屋数が多いことがかなり影響している。
ルームエアコンの世帯当たり所有数については、都道府県によって大きな格差がある。寒冷地で保有が少ないことは当然であろう。
保有台数別の世帯分布については、住宅の部屋数も大きく影響しているとみられる。
ルームエアコンの使用については、それなりのエネルギーを消費する。特に夏期のピーク電力消費量が、我が国の発電能力の限界を超えそうになることさえある。なお、個々のエアコンのエネルギー効率は著しく改善している。
自動車については、日本海沿岸県や北関東などが多くの台数を保有する地域となっている。
各都道府県の保有台数別の世帯分布については、1台保有世帯を主とする地域から2台保有世帯を主とする地域まで広がっている。
富山県では、2台の世帯が53.9%と最も多いが、3台以上も29.9%となっている。
ちなみに、全国では、1台の世帯が43%で最も多い。
富山県のテレビの所有数は世帯当たり2.7台で福井県に次いで多い。
世帯構成員各自が部屋に保有する個電化が進んでいるとみられる。
テレビの普及の初期には「一億総白痴化」をもたらすと警告されていた。また個電化は、家族バラバラの生活をもたらすという警告もあった。
(3) 普及の推移
耐久消費財の世帯当たり所有数は、各財毎に、これまで急速に普及してきた。
近年目立つのは、新たな情報機器である。携帯電話(PHS、スマホを含む)は、2014年には世帯当たり2.7台である。これは、世帯員1人当たり1台に近く、飽和点に近づいているのではなかろうか。
パソコンについても、急速に伸び続けており、2014年には世帯当たり1.6台に達している。
快適な生活を支える家電製品等の普及も急速である。
ルームエアコンについては、住宅の中での生活を工夫するというより、部屋毎の空調を進めており、いわゆる個電化の一環であろう。
温水洗浄便座や電子レンジは、横這いとなっているが、世帯当たり1台強が飽和点であろう。
こうした中で、自動車、ビデオレコーダー、ピアノについては、2000ゼロ年代に一旦横這いの様相を見せたが、2014年には再び増加している。これは経済の小康状態の中で、耐久消費財の取得が若干増加したということであろうか。
自動車所有の変化
自動車については、2台保有世帯が概ね50%超で最も多く、3台以上保有世帯も30%となっている。ちなみに5年前に比較して、2台保有世帯の比率が約6%ポイント低下し、3台以上保有世帯が約6%ポイント増加している。
これは世帯の中で自動車を運転できる者それぞれが個別に所有する状態に近づいているといえよう。このためより広い駐車スペースが必要で、住宅地は、前面に駐車スペースが並ぶ家並みに変化している。
(4) 心の豊かさ物の豊かさ
我々は1970年代、80年代を通じて、便利で快適な生活をさらに追いつつも、物的な豊かさへの指向は低下し、バブル経済崩壊後には、清貧の思想まで議論された。
しかし、景気の小康状態の中で、我々の意識は、物の豊かさへと後戻りしているようにも見られる。
あるいは、どちらともいえないが減少しており、社会の格差が一層はっきりし、考えが両極化しているのかもしれない。
(統計データ)
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(Oct.10,2015.Rev./Oct.28,2000.Orig.)
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