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第4章 堅実な生活
第1節 絆の強い社会
第1項 大きな世帯

2.世帯規模の縮小
―多世代家族の解消―

(1) 世帯数の変化
(2) 世帯類型の変化
(3) 一般世帯の規模の縮小
(4) 世帯数の見通し

 富山県の世帯の規模は次第に小さくなっており、人口減少にも拘わらず世帯数は増加し続けている。

(1) 世帯数の変化
 人口減少が加速しているにも拘わらず、一般世帯数の増加基調は続いており、2015年から2020年の5年間で3.3%増加した。これは、世帯規模が着実に縮小しているためである。
 他方、施設世帯数は、概ね横ばいで推移している。高齢者の増加による増加が予想されるのだが、実態は把握していない。


(2) 世帯類型の変化
 左図は、富山県の世帯類型別人口について、2015年値を基礎(横軸)に2015年から2020年の増減率(縦軸)を見たものである。
 まず、三世代家族及び拡大家族の減少が目立つ。ただし、兄弟姉妹世帯は実数は小さいが大きく増加している。ちなみに非親族世帯についても増加している。
 核家族では、夫婦と子供世帯が減少し、夫婦の世帯及び片親世帯が増加している。
 単独世帯の増加は予想されるとおり大きい。
 施設等の世帯については、若干の増加となっている。


(3) 一般世帯の規模の縮小
 2020年国勢調査では、富山県の平均世帯規模は、2.50人/世帯となった。
 ちなみに富山の推計人口の統計では、2004年7月に平均世帯規模が3人を割っており、約16年間で0.5人の縮小幅となっている。

 富山の平均世帯規模は、全国都道府県の中では、1990年に山形についで2番目の大きさであったが、'95年には福井を下回り3番目となり、2005年にはさらに佐賀を下回り、2020年まで同順位で推移している。

 世帯規模の縮小速度は、'80年代には相対的に緩やかであったものが、'90年代から加速していた。これは、団塊ジュニア世代が結婚、新世帯形成期に入り、一層の核家族化、世帯分離を起こす時期にあったものである。富山では、若い時期から家を持つ習慣があり、また、家族に関する意識がかつてと比較して変化しており、世帯分離が進んだ可能性もある。
 しかし、2005年以降では、縮小速度が再び若干緩やかなものとなっている。これは、人口ウェーブの周期の概ね25年前である'80年代前半と対応するもので、かつての団塊の世代に代わって団塊ジュニア世代が、新世帯形成後に子供の出生、続いて子育ての時期に入っていることを意味しているといえよう。


一般世帯の規模構成の変化
 国勢調査により富山県の世帯規模別人口分布の変化をみると、6、7人の世帯人口比率が急速に減少し、3人の世帯人口比率が増加している。
 これは、まず多世代世帯の解消が進んでいることを意味している。この背景には、世帯の在り方についての意識が変化しつつあるが、高齢者の介護について施設依存が増えていることも要因として考えられよう。
 一方、3人世帯人口比率が相対的に高くなってきていることについては、夫婦と子どもの標準的な核家族世帯人口が増加していると捉えられるのであろうか。これは上述の団塊ジュニア世代が子育て期に入っているという推測と整合性がある。ただし、4人世帯はあまり変化しておらず、各世帯の子供の数が減少していることを示している。
 他方、富山県の単身世帯人口比率は、全国で最も低い。これは、大学等在学者が少ないことが一つの要因であろう。また、就職しても結婚を経て新世帯を形成するまでは、世帯の独立が少ないこともうかがえる。


 富山県の世帯規模の縮小が、他県に比較して、なぜこのように急速に進んでいるのか。
 まず、核家族化が遅れていた(世帯規模が大きく縮小の余地がある)ことがあげられよう。
 また、高齢者の介護を担う老人ホームの整備等が、急速に進められたことも大きな要因であろう。
 さらに、若い夫婦も一戸建て等の住宅を容易に取得できるような緩やかな土地制度の運用があることも要因の一つと考えられる(この点については、いろいろと議論があろうが、結果としては事実であろう)。
 一方で、若者が、学校を卒業し、就職し、結婚し、世帯を形成していくといった、これまであったライフサイクルを辿ることが困難になってきていることも要因となってきている。


(4) 世帯数の見通し
 ちなみに社会保障人口問題研究所による世帯数の将来推計によれば、富山の総世帯数は、ほぼ現在がピークで、今後減少していくこととなっている。
 ⇒世帯数の将来予測

 現在、世帯規模の縮小が急速に進んでおり、世帯数減少への転換の見通しは、かなり怪しい。
 ちなみに、富山県の一般世帯数は2015年390千世帯から2020年403千世帯となったが、社会保障人口問題研究所の推計では392千世帯となっている。


 富山県の豊かさの基盤は、大きな世帯にあったと考えられるが、これが崩れつつある。これを促している個々の施策は、確かに皆が求めるものであろう。しかし、総合的に勘案し、どのような地域社会の未来を選択していくのかの議論がなされていないのではなかろうか。

(統計データ)

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(Dec.03.2021Rev./Arp.13,2015Re-Ed./Oct.03,1998.Orig.)