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第5章 ゆとりある郷土
第5節 災害と安全
第1項 人為災害

1.火災
―少ない火災―

(1) 発生件数
(2) 発生要因
(3) 死亡

 富山県の年々の火災発生件数は極めて少ない。


(1) 発生件数
 富山県の火災発生率(人口当たり火災発生件数)は、他地域と比べて極めて低い水準にある。
 例えば、2018年の人口当たり火災発生件数は、全国で3.0件/万人であったのに対して、富山県では1.6件/万人であり、全国で最も低く、長期的な経緯を見ても、全国でも極めて低い水準にあることは間違いない。


 各都道府県の火災発生率を見ると、北陸・新潟及び大都市都府県で低くなっている。火災発生が少ないことについては、前者は湿度の高さ、後者は耐火建築の多さ・生活空間での林野等の少なさが関係していると推測される。



 なお、火災の内訳について見ると、富山県では、林野及びその他の火災(空地、田畑、道路、河川敷、ごみ集積場、屋外物品集積所、軌道敷、電柱類等の火災)が極めて少ない。




(2) 発生要因
火災発生率と関連指標との相関係数(R2)

単相関日照時
間との
重相関
富山県全国
平均
住宅事情
持家比率0.01080.35879.666.8
戸当たり住宅面積0.08750.357158109
世帯状況
世帯当たり人員数0.06920.3572.992.72
高齢者のみ世帯比率0.10480.36529.041.8
三世代同居世帯比率0.07340.35822.213.4
治安状況
人口当たり刑法犯認知件数0.00740.38713.918.4
消防体制
人口当たり消防職員・団員数0.02530.4159.7411.6
人口当たり災害時以外
消防出動延べ人数
0.00850.384116103
気象
湿度0.0590.387771
日照時間0.3564-1,6001,887
雨量0.00050.3582,2451,615
 富山県の低さの要因については、色々と説明されているようだが、47都道府県の各種統計と火災発生率の相関を取ってみると、殆ど相関のあるものはない。
 年間日照時間(都道府県庁所在都市)と火災発生率の相関(R2)は、0.356で若干高くなっている。これは、いわゆる実効湿度に対応する指標であり、家屋等が燃え上がり難いことを意味しているのであろう。ちなみに単に相対湿度や雨量では相関がない。

 また、日照時間と併せて重相関を取ると、人口当たり消防職員・消防団員数が追加的説明力を若干持っているように見られる。ただし、回帰式では、係数が正であり、消防職員・消防団員数が多いほど火災が多いと理解するのは不都合であり、火災が多いほど、職員等を多くして対応していると捉えるべきであろう。つまり、因果の方向は逆であろう。



(3) 死亡
 ちなみに、火災による人口当たり死亡者数では、都道府県の中で23番目(2018年)と若干高くなっている。


 なお、都道府県毎の人口当たり火災発生件数と死亡者数は殆ど相関がない。
 富山県の死亡者数の多さについては、取り敢えず、相対的に古い住宅が多いことが考えられるが、精査する必要がある。


(統計データ)

 火災は少ないが、火災死亡者が若干多く対応が必要である。

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(Jun.06.2020Rev./May.13,2006Orig.)