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第1章 地域を捉える ―豊かさの課題―
本章では、地域を総合的に捉える方法論を紹介しつつ、富山県の包括的な理解を試みる。
ただし、地域創りの革命が求められる今日、富山県の現状に余り拘らず、むしろ地球環境の変化に対応した地域の在り方を検討することが重要である。
このため、本章は、一応残しておくが、新たな視点で再整理していく必要がある。
第1項 地域を知る
地域を総合的に捉えていく出発点として、地域の特徴を知るため、体系的で網羅的な統計指標(総務省「社会生活統計指標−都道府県の指標−」)で、富山県の値が平均値から乖離した指標を列挙する。
これによって、富山県の特徴として、降水の多い気候、二次産業に特化した産業、互いに支えあう大きめの家族、空間的なゆとりを持った居住などが見えてくる。
第2項 地域を語る
各種地域指標の多変量解析によって、各地域(47都道府県)の構造的な位置付けを検討する。
これによって、富山については、日本の中央部であると同時に日本海沿岸地域に位置する特色が現れてくる。
また、こうした地域としての特色を背景に置きつつも、富山なりの成り立ち・歴史をフローチャートで描いてみる。
第3項 地域を考える
時代の大きな変化は、富山の特色にどのような影響を与えるか、そしてどのような対応があるか予備的に将来像を考察してみる。
豊かさ指標の試算の多くで富山県は上位に位置している。
これは、富山県民が、平坦に広がった富山平野に分散しゆとりを持って居住し、大きめの家族で互いに支えながら生活し、日本の中央部に位置し先人の努力ともあいまって産業のそれなりの集積があるためといえよう。
ただし、これまでの富山県の豊かさについては、その根底から崩壊しつつあるという懸念がある。産業構造が大きく変わる中で、モノ造りを指向した企業群には弾力的な対応ができていない懸念がある。大きめの家族は急速に縮小しており、支え合う気風も放棄されつつあるが、これを補う県民の意識、質の高い制度の整備が進んでいない。ゆとりある郷土は、都市集積のないまま無原則な土地利用を展開させ、弊害の多い自動車社会を出現させている。
富山県の豊かさについて、どのような評価を下すにしろ、社会が大きく転換していく中で、新たな富山県の方向をしっかりと探っていく必要があろう。
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(Jun.09,2024Rev./Jan.14,2014Rev.)
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