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第4章 堅実な生活
第1節 絆の強い社会
第3項 豊かな消費生活
1.消費支出 ―エネルギー多消費型生活―
以下の内容は、内容毎に順次更新している。
富山県民は、大きな所得によって豊かな消費生活を送っている。
家計の消費生活を捉える統計として「家計調査」がある。ただし、標本数が少なく、さらに相互比較のために世帯類型を限定する必要もあり、統計的な振れが大きい。このため、地域の一定の傾向を捉えるためには、何年間かのデータを眺める必要がある。
我が国の政府統計は、Webサイトの「政府統計の総合窓口」で提供されるようになっており、かなり遅れた整備ではあったが、次第に充実してきている。統計の元締めである総務省の「家計調査」については、各種項目別、地域別はもとより、時点別も含めて、任意に表を設定して統計を入手することができるようにもなってきた。これにより、地域のいろいろな事項の経時変化を取り出して、Excelで即座にグラフ化し、状況を検討することが容易にできるようになっている。
家計消費支出の経時変化については、世帯類型の変化に留意する必要があり、「2人以上勤労者世帯」の統計を使うこととなる。これは単身世帯及び年金生活世帯の地域差、時代差の影響を少なくするためである。なお、かつては、さらに非農家世帯を対象としていたが、現在この区分は廃止されている。このため、ここでの統計は、1999年と2000年の間が不連続となっている。
また、県庁所在都市(富山市)の調査であり、標本数が少ない(概ね60台)ことにも留意しておく必要がある。さらに都道府県庁所在都市と当該都道府県のイメージがかなり異なる地域があることも承知しておく必要がある(例えば、札幌と北海道、京都市と京都府(都市全体の水準がその他地域に対して高い)、東京都区部と東京都、横浜市と神奈川県(都市内部に低所得層の集まりがある)、・・・)
(1) 消費支出
2019-2023年平均では富山市は、330千円/月で都道府県の中では12番目の大きさであった。
大都市圏の都府県で都道府県で消費支出が大きいことは、予想されるところであろう。
世帯の消費支出については、長期的には実収入に沿って推移しているが、短期的には、振れも大きい。
特に、2020年は多くの地域で前年に比べて低下しているが、これはコロナ禍の影響であろう。その後2023年まで回復している。
富山市の世帯の実収入に対する消費支出の割合(消費性向)は60.6%で、都道府県庁所在都市の中では、5番目の低さとなっている。
一般に、消費性向は、所得が大きいほど低くなる傾向があると考えられるが、家計調査では明確な相関が確認できない。
富山市については、大きい所得のもとで余裕があり、消費性向が低くなっていると言えよう。
ちなみに富山市では、2020年54.9%と大きく低下したが、2023年には64.8%に回復している。
全国平均では、'10年代後半に低下に転じているようにみえるが、景気低迷の中で生活防衛的な姿勢が現れたのであろうか。
ちなみに富山市の消費者物価地域格差指数(全国=100)の変化を見ると、概ね99程度で推移している。なお福井も同様であるが、金沢は100程度である。
(2) 消費の特徴
右図は、富山市の家計消費支出を費目別に全国平均と比較したものである。ただし、消費支出全体で若干(5%程度)多いことに留意しておく必要がある。
費目別内訳での大きな特徴は、まず交通通信費が大きいことで、特に自動車等関係費が突出している。
次に、その他の消費支出では仕送り金が大きくなっている。この結果教育費は少なくなっている。
なお、こづかいが、これまでの傾向と異なり全国平均を下回っているが、全国・富山ともに近年大きく減少した結果で、これには使途不明金も含まれ、コロナ禍の影響かと思われる。
また光熱水道費の電気代が特に大きい。
住宅費は家賃地代が極めて小さくなっており、これに対応して維持修繕が大きくなっている。
⇒中分類一覧図
(3) 食料費
食糧費は世帯人員数によってある程度決まり、世帯の所得が大きくなると、消費支出中の食糧費の割合(エンゲル係数)が低下する傾向があるとされる。
富山市のエンゲル係数は、各都市の中では中程の位置にある。
大都市地域で所得が大きいのにエンゲル係数が概して高いのは、地域の物価水準よるものであろう。
⇒消費者物価地域差指数
エンゲル係数は、次第に増加しているように見られる。
特に、富山市については、かつては全国の中でかなり低い位置にあったが、近年は全国平均に近くなっている。
消費支出の総額が大きくなるほど食糧費のウエイト(エンゲル係数)は小さくなるという考えがあるが、家計調査では明確な傾向は確認できない。
ちなみに富山市の消費者物価地域格差指数(全国=100)食料の変化を見ると、近年は103程度の高い位置で推移している。
食料の消費の特徴として、相対的に魚介類(特に生鮮魚介)が多く、肉類が少ないことがあげられる。ただし、魚介類は長期的に減少してきている。
調理食品は近年急増している。
外食は少なく、さらに最近は減少気味で推移している。
⇒富山市の飲食品への消費支出
(4) 住居費
持家率が高いことによって、家賃地代はかなり少なくなっている。ちなみに県民所得統計では擬制家賃として家賃見合い額を個人の生産・所得に算入している。
ただし、これに替えて、設備材料費、修繕サービス費が大きくなっている。
当然ではあるが、持ち家率と家賃地代には明確な逆相関がある。
(5) 光熱水道費
まず電気代が大きいが、これは住居の大きさと関連している。
他の光熱については、灯油等が含まれ暖房のための支出であり、寒冷地として抑えにくい。
上下水道料が高いのは、分散した住居への給排に経費が掛かっているということであろう。また十分に解明している訳ではないが、基盤施設の過剰整備の影響もあると思われる。
47都市の住宅の広さと電気代にある程度の相関が見られる。
47都市の年間平均気温とその他の光熱費に強い相関がある。
この光熱費と自動車関係費については、地球温暖化の中で削減が求められており、積極的な取り組みが必要である。
2022年は全国で電気・ガス等の価格とともに支出が跳ね上がった。富山市は、札幌、青森、山形に次ぎ4番目の高さとなっている。
なお、光熱費や自動車維持関係費(ガソリン代)の動向については、その価格の変動・円レートの変化、及び政府による助成の動向など総合的に見ておく必要がある。
(9) 家具・家事用品
冷暖房用器具が大きくなっている。
かつては、広い住宅での耐久財の保有が目立っていたが、現在は減っているのであろう。
(7) 被服及び履物
額は小さいが、和服への支出が相対的に極めて少ない。
洋服への支出もかなり少ない。
(8) 保健医療費
医療にともなう受診、医薬品への支出が少なく、健康関連用薬、機器の購入が多い。
(9) 自動車関係費
自動車社会の中で自動車関係費への支出も大きい。
ただし、交通費はかなり少なくなっている。
当然ではあるが、47都市の保有自動車台数と自動車等維持費には明確な相関がある。
(10) 教育費
仕送り金で代替されている面もあろうが、授業料等の教育費は小さくなっている。
仕送り金でと授業料等には若干の逆相関が見られる。
(11) 教養娯楽費
月謝類が大きいのは習い事が盛んなことを意味しているのであろう。
(12) その他の消費支出
この中のこづかい、仕送りは、世帯による変動が大きいと予想され、統計的にはかなり不確かになっていると考えられる。
交際費は全国平均とほぼ同じであるが、これは近年急速に減少してきたものである。
富山市の消費支出全体の中でのその他の消費支出の構成比の変化を見ると、'00年代全般に他地域を大きく上回り極めて高かったが、'10年代には概ね他の高い地域の水準までに低下している。
その他の消費支出の変化を費目別に見ると、諸雑費は増加しているが、こづかいは大きく減少している。特に世帯主以外のこづかいの減少が際立っているが、これは団塊ジュニア世代の世帯分離によるものである。なお、交際費の減少は全国と同様の動きである。また仕送り金の減少は、他地域へ遊学している子弟が減少しているためであろう。
⇒近年の富山市の消費支出の変化
富山市での生活を全体として述べると、「富山平野に散らばって、広い持家に住み、自動車を利用して生活しており、エネルギー浪費的だが、享楽的な消費支出は控えめである」といえよう。
中分類支出項目全国比
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