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第4章 堅実な生活
第1節 絆の強い社会
第2項 高い世帯所得
2.所得の平準度 ―急拡大する格差―
全国・各都道府県毎の世帯間の所得格差は次第に拡大している。
また、富山県の世帯の所得格差は、他の都道府県に比してかなり小さい。
世帯(あるいは家計)の所得の平準度(平等度)は、所得階層別世帯数等を示す統計から求めることができる。ただし、この種の情報は収集し難い面があり、都道府県まで細分した段階では、十分な標本数と精度がある統計は期待できない。実際には、「全国消費実態調査」の集計でジニ係数の算定がなされているが、「就業構造基本調査」からも算出することは一応できる。2つの調査はともに5年毎の調査であるが、調査年がずれており、適宜、補いながら利用できる。
⇒ジニ係数と貧困率
(1) 就業構造基本調査によるジニ係数試算 ―急拡大する格差―
就業構造基本調査の統計から、一般世帯(二人以上世帯)の所得の分布についてジニ係数を試算すると、次第に格差が拡大しており、2022年には一層拡大した。
こうした中で富山県も相対的に格差は少ないが、5年間で0.33から0.36へと増加している。ちなみに京都は4.0を超えた。
コロナ禍による労働市場の混乱によって格差が一層拡大したようだ。また、高齢者世帯の増加も格差拡大に寄与しているであろう。
都道府県ごとのジニ係数を見ると、2022年調査の富山は全国で宮崎に次いで低く、平準度の高い地域であることを示している。
ちなみに、別途二人以上勤労者世帯について見ると、大都市都府県の格差が大きく出るが、ここでの一般世帯には、年金のみ高齢者世帯も含まれており、東京都などの格差はむしろ少なくなっている。このことについては、さらに分析してみる必要がある。
所得階層別の世帯数の構成比を見ると、富山については、300万円〜600万円未満の層に集中しており、この範囲外の低所得及び高所得の世帯の比率がかなり小さい。この結果、全体として格差の少ない地域となっている。
統計上の誤差もあり厳密なものでないが、別途全国消費実態調査から算出したジニ係数でもこのような傾向は見られる。
(統計データ)
(Aug.21,2022Rev.)
(2) 家計調査での所得分布
富山では高い所得層が多く、低所得層は少なくなっている。
なお、標本数は富山市で各年100世帯程度である。また、二人以上勤労者世帯に限定しており、単身世帯や年金のみ生活者世帯を除いていることに留意が必要である。
右図は、上図の低所得の部分の目盛の区分を粗くし高所得の部分に近づけたものであるが、この方が実態のイメージを捉えやすいであろう。
ちなみに、この統計から、幾つかの仮定を置いてジニ係数を推計することもできるが、都道府県庁所在都市の統計であり、都道府県のイメージとかなり異なるものになってしまう。
右図は、全国での所得分布を10等分した階層を設定し、各地域の各階層に該当する世帯数の構成比を表したものである。これでも高い所得層で全国平均を超えている。
これらの結果でも、富山市は所得の平準度が高いとともにその水準も高いということになる。
(3) 全国家計構造調査での所得分布
これまでの全国消費実態調査は2019年に全国家計構造調査に改められた。
取り敢えず、二人以上勤労者世帯の所得分布を掲げておく。
当然ではあるが、結果は前述の2つ調査と同様のものとなっているようだが、詳細を見ると異なる点もあるようだ。
富山県については、800〜,900〜万円層の比率の多さが一層際立っている。
世帯の一次所得のジニ係数について見ると、全国の0.436に対して、富山は0.396であり、都道府県の中では4番目に小さい。滋賀が全国で最も小さく、これに次いで北陸3県がある。
ちなみに、ジニ係数が大きいのは、高知、愛媛で、大阪も比較的大きい。
さらに、再配分後の可処分所得でのジニ係数を見ると、全国の0.288に対して、富山は0.261であり、都道府県の中では5番目に小さい。北陸3県とともに広島、岩手が小さい県となっている。
ちなみに、最も大きいのは沖縄で、高知、愛媛とともに東京なども大きくなっており、各種の社会保障制度が十分に機能しているのか懸念される。
一次所得と可処分所得のジニ係数の相関については、決定係数で0.5を割っており、これは地域によって社会保障についての対応に差があることを予想させる。
(統計データ)
(Feb.11,2022Rev.)
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(Aug.21,2023Rev.)
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