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第3章 モノづくり指向の産業
第2節 経済変動

第3項 国際化
―積極的な海外進出―

(1) 進出企業
(2) 進出時期
(3) 進出国
(4) 進出業種
(5) 進出の狙い

参考
 富山県にある企業の海外進出の状況については、(公財)富山県新世紀産業機構の「2020 年富山県企業海外進出状況実態調査報告書」があるが、回答企業数 668社で回答率 40.64%であり、一部主要企業が欠けている。このため、集計数は富山県企業の概況を捉えるものとはなり難い。
 もちろん、回答した個々の企業の個別の状況を詳しく知るものとして利用できる。





 以下に、かなり古い資料だか、2011年の調査を掲げておく。
 富山県商工労働部により、富山県内に本社をもつ1800社へのアンケート調査の結果として『富山県企業の海外事業所調査(2011年3月)』がまとめられている。
 各事業所の事業内容等の記述については、調査の性格上、業種や業態を整合性のある概念で統一的に捉えることは難しく、また空欄も多い。
 以下では、業種、業態を事業内容から適宜判断し、仮の集計を試みた。特に、事業内容の記述のないものについては事務所とするなど、かなり強引な整理であるが、富山県企業の海外事業所の概要を掴むことはできよう。

(1) 進出企業
 海外に事業所を持つとして報告があった企業は87社であり、全体で348事業所となっている。
 ただし、YKK鰍ェ、1社で、142事業所を開設しており、全体のほぼ40%を占めている。
 これに続いて、兜s二越、三光合成梶A北陸電気工業鰍ェ、それぞれ10所を超える事業所を開設している。




(2) 進出時期
 事業所の開設時期について見ると、不明を除けば、2000年以降が約半数を占めている。


 詳細な時間的経緯については、まず、1980年代前半までは、開設は限られ、年平均で2事業所程度に留まっている。さらにYKK鰍除けば、極めて限られていたといえる。
 次いで、1980年代後半に入って、YKK鰍含め年4,5カ所の開設が見られるようになった。これは、わが国のバブル経済の中での事業活動の延長として新たなフロンティアを求めたものであろう。
 1990年代当初は、バブル経済の崩壊の中でYKK鰍除いて、開設が一旦停滞しているが、その後1990年代半ばで、年10カ所以上の開設に拡大している。これは、中国経済が離陸する中で、人件費の高い日本では生産の持続が困難だという認識が高まり、企業活動の海外展開の気運が高まったためと捉えられよう。こうした動きは1990年代末には若干鎮静化している。
 しかし、2000年代に入って、再び開設が盛り上がっており'00年代半ばにはピークを見せ、特に2004年には、23カ所の開設となっている。これは、インターネットの普及等により新たな国際化、真のグローバル化が展開しているものと考えられよう。'00年代後半でも、順次開設が続いている。
 この統計は、2011年年初現在の状況であり、過去に開設された後、廃止された事業所は含まれていない。


(3) 進出国
 事業所の開設を国別にみると、中国が188カ所で全体の半数を超えている。さらに、ASEAN地域、東アジア地域での開設が見られ、アジア地域全体では、263カ所で全体の3/4を超えている。
 ちなみにアジア以外85カ所中YKK鰍ェ51カ所で60%を占めている。


 開設年代別に国・地域の構成をみると、1980年代までは、ほぼ半数以上がヨーロッパ・北中南アメリカ等のアジア以外の地域であった。
 1990年代に入って、中国を含むアジアが拡大し、'00年代後半では90%以上がアジアとなっている。
 なお、近年、中国から東南アジアさらには南アジアへの移行が話題になっているが、富山の統計では確認できない。



(4) 進出業種
 次に開設事業所の業種別構成を見る。ただし、ここでの分類は、正式の産業分類名でなく、適宜命名した区分である。
 まず、雑貨がもっとも多く136事業所となっているが、これは、ほとんどがYKK鰍フファスナー関連事業所である。ちなみにファスナー製造は、製造業の分類では、その他製造業となっている。
 なお、アルミサッシ関連事業所については、建材として分類した。建材については、15事業所数2/3がYKK鰍ナあり、他社の海外進出はあまり進んでいない。
 雑貨に次ぐのは、一般機械であり、兜s二越がその半数を超えているが、古くから海外進出しているキタムラ機械鰍始め、多くの企業がある。
 次いで、電気・電子機器があり、北陸電気工業鰍ェ10所を超えているが、さらに鞄本抵抗器製作所、コーセル鰍ネどが並んでいる。ちなみに富山県内に本社を持つ企業ではないが、県内には半導体などの国際的企業もある。
 プラスチックでは、プラスチック成形の三光合成鰍ェ10所を超えているが、さらに潟^カギセイコー、黒田化学鰍ネどが並んでいる。これらは、製品納入関連会社の海外進出と歩調を合わせているものも多いのであろう。
 化学については、日本カーバイト工業鞄凾フ事業所を分類している。なお、医薬関連については、ダイト の1事業所のみが載っている。現時点ではリードケミカル鞄凵A海外事業所を持つ企業があるが、いずれもこの調査時点以降ということであろうか。
 金属については、サンエツ金属鰍ネどがある。
 1990年代半ばに中国からの製品輸入が増え、競争力から見て太刀打ちできず、今後は国際展開が避けられないとされた繊維については、助野靴下梶A北陸エステアール協同組合などがあり、川田ニット鰍煌に1985年に中国へ進出しているが、総数では11所に留まっている。
 ちなみに食品については、稲作が卓越する富山県では食料品製造業が少なく、進出事業所も材料調達、製造を行っている竃リ下食品1カ所に留まっている。(?)
 他方、進出企業を支援することを目的に進出している金融、情報関連企業等もある。竃k陸銀行がその典型である。
 建設としては、佐藤工業鰍フ3カ所などがある。建設の内、特に土木については、かつて既に1970年代に国内事業の限界から今後は国際展開が必要だとされたものだが、全国的にも殆ど進んでいない。
 運輸・観光関連企業の国際展開は、当然のこととであろうが、富山県関連では、5事業所に留まっている。
 ちなみに農業は、YKK鰍フブラジルの事業所である。


 開設年代別の業種の構成については、1980年代前半以前の業種は雑貨以外は、一般機械などに限られてたが、その後、特に2000年代に入って、多様な業種での進出が見られるようになっている。


 事業の業態の分類は、かなり曖昧なものである。
 事業内容に、明確に、「製造」あるいは「生産」と記されている事業所が146カ所ある。事業所の従業員数は記載されていないものが多いが、記載されているものだけで、製造事業所を中心に合計で1万人を超えている。
 事業内容のまったく記載されていないものは事務所として集計した。これらの事業所の中には、いろいろな形で販売を行っているものも多いであろう。
 研究開発とされている事業所は限られているが、情報システムの開発まで含めると、8事業所となる。
 なお、派遣社員の人数については、多くの事業所で1,2人に留まっている。事業所開設準備には、多くのスタッフが必要かもしれないが、定常的な営業では、コストからみて最小限の運営とされているのであろう。


(統計データ)

(5) 進出の狙い
 富山県の地場企業海外進出については、多様な目的がある。
 それぞれの目的について、主たる業種として以下のものがあげられよう。
◎技術を持った企業の生産財等の輸出販売、現地生産
 機械、プラスチック、雑貨
◎消費財の製造・販売
 繊維
◎原材料入手・製品販売
 食品、木材、医薬品、小売
◎事業拡大
 建材、建設、飲食
◎ネットワークサービス
 運輸、観光、通信
◎進出企業支援
 金融、広告

 ⇒進出企業の例


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(Oct.18,2021Add/Mar.18,2016Re-Ed.)