第5章 ゆとりある郷土 第6節 県土利用の再確認 第4項 県土経営の転換
地球温暖化、人口減少等々への総合的対応として、県土利用の在り方を再考していくべきことは明らかである。 土地利用計画を一層詳細で厳しいものとしていくと同時に、これを遵守していくことが求められる。権利の上に胡坐をかくことは否定される必要がある。 また、個々の事業の可否を判定する関係者は、殆どがその利害関係当事者であり、偏りのない判断が難しくなっている。このため、内容を詳らかに公開し、広く議論を起こすことが重要である。 (1) 生活空間の再設計 今後の共生社会のために、社会に開かれた生活が展開できる触れ合いのある街が求められる。 また、省エネの要求に鑑みれば、街中の交通網、街を繋ぐ交通網の有機的な再整備が求められる。 富山市では、コンパクトシティの形成を進めているが、この趣旨が十分に明確にされていないのではなかろうか。 まず、人々の触れ合い、高齢化、省エネ等に鑑みれば、歩いて生活できる街の形成が求められよう。そして交流できる空間として、コミュニティコンビニなどを拠点とした生活の核づくりも意味があるだろう。 人口減少の中で、空家も増え続けており、もはや新たな宅地の整備はほぼ禁止し、さらに住宅の整備も抑制されることが必要である。なお市街地中心への居住を図るため、大規模な集合住宅(マンション)の整備がなされているが、これは人々の交流を促さず好ましくない。また、長期的な維持管理にも危うさがある。 交通網の整備に関しては、街を繋ぐ鉄道と街中の鉄道をネットワーク化しより利用し易いものに転換していく必要がある。鉄道利用がある程度促されれば、かつてあった街中の路面電車の復活等を図り、病院等の施設の利用も可能にしていきたい。 (2) 耕地の保全・拡張 我が国の食料供給は非常に危うい状況にある。今後の地球温暖化による混乱の中で、世界の食料需給が厳しくなった時、既に、我が国は資金力によって食料を買い集めることはできない。さらに、これまでの貿易協定では、専ら輸入の義務化が議論されてきていたが、輸出の義務化には触れられず、食料生産国は緊急時には輸出禁止措置をとることは間違いない。このためそれなりに自給できる体勢が必要なことは間違いない。特に、耕地の維持さらには拡大が必要であろう。 ただし、人口と一人当たり米消費量双方の減少の中で、どのような耕作物をどの程度必要とするか、そのための潜在的な生産力をどのように維持していくか、見通すことがかなり困難な状況にある。 これまでの土地管理では、農業振興法の農用地区域を設定し農地の保全が図られてきた。しかし、地域毎の農業委員会の匙加減で容易に宅地化が認められてきている。現在の農業経営の体制では、農地の転売による所得の魅力からは逃れがたく、宅地化が現在も進んでいる。農地所有者、農協その他農業関係者の中に、本当に耕地を守ろうとする者が見られない。このため、地域なりにしっかりと議論し、宅地化を厳しく制限するとともに、耕地の維持管理の実効的な仕掛け整備する必要がある。 (3) 防災 地球温暖化の中で多様な災害が予想される。既に我が国では、暴風雨等による災害が増加している。また、長期的には、海の水位の上昇による海進への対応も必要である。 短期的には、予期される水害への対応が必要である。富山は相対的には、自然災害の少ない地域ではあるが、耕地の宅地化による雨水の流出係数の上昇により、中小河川の溢水による浸水が増加しているとみられる。この意味でも耕地の保全は重要である。 また、大河川の洪水防止も課題であるが、本当に必要な事業の選択が厳しくなされていない懸念がある。富山県での近年の国事業のダム等は、その必要性、採算の計算がかなり危ういようだ。立山砂防ダムについても、適正さの判断がよくわからない。治山治水の専門家は全員が事業関係者で、バイアスのない判断がなされるメカニズムが作られていない。としても、判断の一部始終を詳らかにされることが必要であろう。 他方、長期的には、今後の海進の可能性に鑑み、街の海岸線からの撤退が必要である。公共施設の整備での配慮するとともに、海抜の低い地域の危うさを吹聴し、自ずと撤退が進むことを促するのであろうか。現時点での展望は難しい。 本頁の内容は検討不十分であり、表現も練れていないが、取り敢えず掲げておく。 (Jul.03,2022Rev.) |