どんな地域を望むか・どう生きるか(はじめに)

 富山がどんな地域であることを望むか。そして、自分はどう生きていくか。
 地域の在り方が広く合意されることは難しいだろう。
 ここで、私なりの考えを述べておく。ただし、内容の整理が極めて不十分で他者に理解できるものとなっていないかもしれない。


【生きていることに事前的な目的、意味はない】
 まず、我々とはどんな存在なのか。
 宇宙137億年の歴史を振り返ると、最初のインフレーションでエネルギーの詰まった宇宙が生成された後は、物理法則に従って変化してきた。当初の僅かな揺らぎと不確定性原理に基づく偶然が重なり、現在の地球、生物、人類そして私が存在している。
 このため、生命に事前的な目的、意味はないようだ。これは仏陀の認識でもある(人我無相)。
  ⇒137億年のメッセージ

【皆で仲良く生きていくことを目指したい】
 このため、まず「どう生きたいか宣言すること」からる始める必要があろう。
 我々が存在する背景として、生き続けることを強く志向していることは間違いない。そして生き残るために争ってきた。生物、人類の歴史は争い(生存競争)の歴史であったとも言えよう。
 しかし、人類は、協調して生きることに良さを見つけ、そのための仕掛けを創ってきた。世界大戦が終結して約3四半世紀経っているが、人類が争わず協調して平和に生きていくことができるか、新たな階梯に登れるか、これに賭けてみることはできないだろうか。
 大上段に構えることはともかくとして、皆で仲良く生きていくことを目指したい。
 I.イリイチの用いた言葉に、「コンビィビィアリテイ(共愉)」があるが、共に楽しく生きていくことを目指していきたい。
 それなりに楽しく誇りある生き方を目指す、他者と触れ合い他者から認められることは、目的とは言わないが自分なりに納得できるだろう。
  ⇒地域創生目標の再考

【正しく考えそれに沿って生きる】
 次に、こうした前提の下で、正しく考えそれに沿って生きることが必要となる。
 地域の在り方、自分の生き方を検討する際に、勝手に虚構を挟んでは、どんな弁明でも可能になってしまう。正しく生きることは、これも仏陀の教え(八正道)である。
 この正しくには、正義(justice)に沿うことと真実(true)に沿うことの2の内容がある。
 正義については、多様な議論があるが、リベラルかコレクティブかの2軸に沿って整理して見ることができそうだ。ここで各自なりに立場を宣言しておくことが必要である。私自身はリベラルに偏るが、究極的には、自由に発想しながも、社会全体の在り方をも慮る姿勢が好ましいように思える。
 他方、真実に沿うとは、虚構を解体し、根拠ある(科学的な)言説に従って生きようとすることである。
 社会の在り方としては、こうした発想を基礎として、皆で議論(熟議)していく必要がある。
  ⇒2つの正しさ
  ⇒正義_倫理


【正しく生きることの困難さ】
 しかし、このような議論は、熟議によって合意を形成できるのだろうか、また、実践可能なものだろうか。

 一つは、現在の生き方を変えていく覚悟ができるのだろうか。現在の社会では、多くの人の目的が、より多くの所得を得ることになってしまっている。社会正義など考えることは忘れてしまい。法に触れなければ何をしてもいい、さらには見つらなければ何をしてもいいという風潮になっている。今日の金融資本主義市場メカニズムは破綻していると考えられるが、この専ら経済的価値を志向する発想から脱却できるのだろうか。
 成長の限界を認識するとともにITの可能性に期待し、その成果を分け合うことができれば、我々の生きる道も見つけることができるのではと思われる。(ただし、ITの危うさも十分認識しておく必要がある。)

 また、そもそも、あるべき社会についてしっかり考え、課題を理解し、対処していこうとする姿勢、能力を我々は持っているのだろうか。パンとサーカス(食とエンタメ)に興じ、社会を考えようとする発想を失っているのではなかろうか。判断を他者に委ね、短視眼的な発想で賛否を表明するポピュリズムが蔓延している。
 しっかりと社会について考え、生命力のある生き方を求めつつ、皆で一緒に生きていくことを忘れたくない。

 さらに、いろいろと考える姿勢があるとしても、様々な虚構・偏見から逃れることは極めて難しい。
 信仰を持つ人に、宗教からの離脱を求めることはできるのだろうか。この問い自体が危ういものでなかろうか。
 アイデンティティ(各人が生きていく足場)を求める集団主義が道を誤ることを避けれるのだろうか。

【富山の課題】
 以上のような発想を前提として富山の課題を考えていきたい。
 地域を生活、郷土、産業に分けて捉えているが、暮らしやすい地域づくりの柱として次の3つを掲げたい。
  開かれた生活宣言(繋がりの積み上げ)
  土地管理機構創設(持続可能な土地利用)
  産業クラスター形成(繋がりあう産業)
 また、現在のグローバルな課題は国民国家の世界システムの下では解決できず、破滅に至りそうである。このため地域として可能な役割を果たしていく必要があり、次の2項を掲げておきたい。
  温暖化ガス排出ゼロ宣言(持続可能な生き方)
  平和への努力(誇りある生き方)

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(Jan.12,2020)