地域創生目標の再考

 地域づくりのための多様な努力は、それぞれの地域で営々と続けられてきている。現在の地方創生の話題は、2014年に増田寛也外著『地方消滅』が公表され、政府が国家施策として支援方策を打ち出してからである。国から補助金が交付されるとなれば、地方自治体が踊るのは当然であろう。その中核に人口減少抑制策が挙げられている。しかし、これにはあらゆる地域振興策が該当し、本当に意味のあるのは何か分からなくなっている。
 人口減少の大きな要因として、若い人が結婚し子どもを産み・育てることに極めて不安が大きいことが挙げられる。これは、人口減少抑制のためというより、これ自体改善されるべき大きな課題である。1億総活躍のためにその障害を取り除くというのは、発想が逆転しているだろう。
 また、人口減少自体をどう捉えるか。生物にとってその個体数の増加は繁栄の証であり、人口増加を望むことはごく自然であろう。そして今日の経済社会のシステムは、成長し続けることによって成り立つ自転車操業のシステムであり、停滞・縮小は避けなければならない。
 しかし、地球全体で70億人を越す過剰な状況となっている。地球温暖化ガスの排出に鑑みれば、そして潜在的な食糧供給力に鑑みれば、人口減少のシナリオを明確に描くべきではなかろうか。実現の難しさはともかくとして、経済社会システムを大きく変革し、縮小を目指すとともに分け合う時代に入っていると捉えるのが素直ではなかろうか。

 このためには、まずどのような社会を目指していくのかが問題となる。国連の持続可能な開発目標(SDGs)は、発展途上国の課題と捉えられがちであるが、日本にも課題は多い。究極的には、皆で楽しく活き活きと生きていける社会を描ければいいのではなかろうか。コンビビアルな社会である。
 このためには、現在の生産物・所得の分配システムを変更していくことがポイントとなろう。現在の我々の持つ生産力に鑑みれば、多くの人がそれなりに生活していくことができるはずである。近代社会では、分配の基礎に、資本主義市場経済と国による社会保障制度がある。この再検討は当然として、それと同時に、地域なりにこれを補っていくことが重要である。

 地域に住む人それぞれが、もう少し開かれた生活をし、人と人の繋がり=ソーシャルキャピタルを積上げ、地域の人が困難に陥ることを防いでいく。これが地域創生の近道であろう。
 既に、こうした試みはいろいろと行われている。新しい地域社会のイメージを共有し、地域の相当程度の人がその気になれば、地域が大きく変わっていく可能性はある。こうした新しい地域文化を地域に住む自身が創っていくことこそが課題であろう。これは、個々人が取り敢えず取り組める課題でもある。


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(Jan.22,2020)