次頁(第4節)節目次章目次表紙

第2章 富山の舞台
第3節 経済構造の変革

第5項 富山県の財政運営
―県債残高は年間予算の2倍―

(1) 富山県の2023年度当初予算
(2) 富山県の歳出の特徴
(3) 財政状況(決算額)の推移の都道府県比較
(4) 公債の評価


(1) 富山県の2023年度当初予算
 2023年度富山県一般会計当初予算の総額は632十億円であった。
 当初予算の規模は、1999年度以降減少傾向にあったが、2009年度以降景気雇用対策として増加した後、横ばいで推移していた。しかし、2021年度以降は、コロナ対策で大きく増加した。
 このため、今後5千億円台へと減少するだろう。


 このうち歳入については、県税・消費税清算金は1/3に留まり、地方交付税・国庫支出金も1/3と自立性を発揮し難い構造となっている。



 県税収入については、法人税、個人税それぞれ1/4、合わせて約1/2となっている。また、地方消費税も1/4程度である。


 また、歳出については、コロナ禍の影響で商工費が18%で最も大きく、以下教育費、交際費、土木費、民生費と続いている。


 歳出を性質別にみると、人件費、扶助費、公債費は義務的経費と言われ、合計45%となっている。貸付金が大きくなっているが、これは主として商工費に対応するものである。また、普通建設事業費は13%にとどまっている。



 歳入側では、国庫支出金及び諸収入が急拡大している。
 このうち諸収入には商工費の貸付金に対応した元利返済が含まれている。歳出・歳入総額の急拡大は、そのまま地域の負担になる訳でなく、このように相殺するものが含まれている。


 歳入決算額の推移をみると、国庫支出金及び地方交付税がそれぞれ1997年度、1998年度をピークとして減少しており、2010年代に入って若干の回復を見せたが、再び減少し続けている。
 地方債は、バブル経済崩壊後に急増した後、1999年度から一旦減少したが、国庫支出金、地方交付税の趨勢、及び地方税の変動を補う形で、が2000年度を底に再増加し、2010年代に入って減少に転じている。

 そして、2020年以降は、コロナ禍の影響で、国庫支出金、諸収入が、一気に拡大している。


 2020年度の富山県決算の歳出総額は617十億円で、前年度比129十億円(26.5%)増となった。これは、コロナ禍の中で、商工費及び衛生費が急拡大したためである。
 このようにコロナ禍で2020年度から財政の基調が大きく乱れており、今後どのうよに変化していくかは定かではない。

 歳出決算額の推移を見ると、1998年度をピークに減少しているが、2008〜2010年度には一旦増加し、その後再び減少している。
 目的別には、土木費、農林水産業費の減少が大きい。
 教育費は'00年代に減少しいたが現在は横ばいとなっている。
 これに対して、民生費は漸増を続けている。
 また、公債費は、今世紀に入って100十億弱円で横ばいで推移している。

 そして、2020年以降は、コロナ禍の影響で、商工費、衛生費が、一気に拡大している。


(統計データ)

***************************
 富山県の2021年度予算財政規模(県のみで市町村財政を含まない)は、一般会計で634十億円、特別会計を含めた普通会計で700十億円、さらに収益会計、企業会計を加え、合計で833十億円である。



 このような歳入変動の収支について、基準財政需要額から収入額を控除した不足額の変動で見ると、概ね2000ゼロ年代に減少し、'10年代に横這いの推移ととなっている。


 以上のような歳入の変動の結果、県債残高は、概ね'90年代急増、'00年代前半漸増、'00年代後半急増、'10年代に入って'13年からようやく横這いの推移となっている。



 実質の税収については、県税収入143十億円に地方消費税を清算し、市町村交付金を控除すると121十億円となる。

***************************

(2) 富山県の歳出の特徴
 都道府県の財政については、政令指定都市等に道府県の事業の一部が移管されていることなどにより、単純には相互比較できないことに留意が必要である。

 富山県の歳出の特徴として目的別歳出額の特化度(富山県と都道府県合計の構成比の比)を見ると、農林水産業費、土木費の大きさが目立つ。この過去の支出の結果として、公債も大きくなっている。なお、商工費は、これまで0.6倍程度であったがコロナ禍で企業への貸付が膨れ相対的にも大きくなっている。
 ちなみに、これまでの我が国の財政運営の中では、各種の公共土木事業や農業振興事業は、産業振興を通じた、生活保障的な意味合いを持っていた。



 歳出の特化度を性質別で見た場合、公債費が特に大きいこと、補助費が小さいことなどが目立つ。


 ちなみに、目的別歳出と性質別歳出は、相当程度対応しており、概要は次の通り。
 民生・衛生・交付金→補助費等
 農林水産・土木→普通建設事業費
 商工→貸付金
 警察・教育→人件費
 公債→公債費



(3) 財政状況(決算額)の推移の都道府県比較
 冒頭で説明したとおり、コロナ禍で2020年度決算額は大きく変動しており、以下では、2019年度までのデータによる説明に留めておく。


 歳入総額は、リーマンショック対応として2009年度に財政の拡大を図った以降、次第に減少しており、現在人口1人当たり50万円を割っている。




 歳入中の地方税の割合は、富山県では、'10年代に増加し概ね30%となっている。



 歳入中の地方交付金の割合は、富山県では、概ね20%半で推移している。


 歳入中の国庫負担金の割合は、富山県では、現在10%台の下半までに低下している。


 公債費比率は、1980年代を通して漸増していたが、1990年代に入ってバブル経済崩壊以降急増し、1990年代末以降は、20%前後で変動していた。しかし'10年代に入り低下し、一旦15%を割ったが、2019年度は15%を超えている。



 富山県の財政力指数は、現在50%を若干割る水準で推移している。


 財政不足率(基準財政需要額と基準財政収入額の差の基準財政需要額に対する比率)は、富山県では、50%台で推移している。


 富山県の県債残高の歳出総額に対する比率は、2019年度決算で243%となっており、静岡県に次いで大きい。



 富山県の人口一人当たり県債残高は、新幹線建設の最終段階となった2014年度をピークとして漸減し、2019年度末で113万円となっている。



 歳出総額中の普通建設事業費の割合は、'90年代後半以降大幅に減少し、富山県では2015年度以降20%を割っていたが、2010年代末に反転し再び20%を超えた。

 ⇒行政投資(第5章第6節第3項詳説)


 目的別歳出で普通建設事業費の太宗を占める土木費についても都道府県の中では相対的に高い水準で推移している。近年は新幹線建設があったが、その影響を超えて高い水準にあるといえよう。


 県の産業の中で農林水産業の比重はかなり小さいのだが、歳出の中で農林水産業費はある程度の比重を占めている。ちなみに、農業土木がかなり含まれている。


 歳出の中で民生費の割合は次第に増加し、2019年度で13%台となっている。ただし、富山県を含め北陸3県は、都道府県の中では相対的に低い。


 歳出総額中の公債費割合は、富山県では、'00年代は10%台後半で推移し、2019年度では18%で都道府県の中で奈良に次いで大きい。


 歳入総額中の人件費の割合は、富山県2019年度で27%となっている。


 歳出総額中の扶助費の割合は富山県ではほぼ1%で、2019年度では都道府県の中で新潟に次いで低い。


 歳出総額中の義務的経費(人件費、扶助費、公債費)の割合は、富山県では'10年代に増加し、2019年度には45%となっている。



(4) 公債の評価
 以上のように、2019年度末の富山県の県債残高は、1兆183十億円、歳出額比では243%で都道府県の中で2番目であり、人口当たりでは113万円と大きなものとなっている。このため、債務返済のための公債費は、歳出額比で18%であり都道府県の中で2番目に高い。さらに、歳入額比15%を上回る新たな地方債が発行されている。
 ちなみに、公債返済時に基準財政需要額に組入れられ、国からの交付金に算入される制度があり、国による地方の歳出の操作となっている。これまで、富山県はこれを利用して、公債の発行を増やしてきた。実は、このような操作に最も詳しいのが石井富山県知事だったとされている。
 このように富山県の財政事情は、年々の財政運営の自由度が低下しており、厳しい状況にあるが、債務残高の多さについての評価は難しく、必ずしも危機的なものではないだろう。

 他方、国の公債の残高は、1100兆円を超え、人口当たりで872万円、GDP比で240%近くの膨大なものとなっている(右図は2018年度末まで)。さらに、現在、コロナ禍の中で国債の発行が上乗せされている。
 (国、県さらに市町村の公債を加えれば、富山県の人は一人当たり、約1千万円の借金を抱えていることになる。)
 この額は、危機的なものと言えると考えられるが、今後どのようなことになっていくのか。
 実は、国債を日銀が引受け、外国から返済を迫られ窮地に陥るようなこともなく、金利も殆どない限り、何もおこらないようにも考えられる。しかし、このような通貨供給の拡大は通常はインフレをもたらすものであり回避すべきものである。また、時の政権の節度のない財政支出の拡大は、ファシズムに繋がる危険性をはらんでいる。そして国内での財政のばら撒きは、国際的な評価の低下に繋がり、信用の失墜から、突然の円安、所得水準の陥落、経済の混乱へと進む可能性が十分にある。
 国債の評価については、そのメカニズムが極めて分かり難いが、危機的状況にあることは間違いないだろう。


次頁(第4節)節目次章目次表紙

(Apr.18,2024Rev.)