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第2章 富山の舞台
第3節 経済構造の変革

第5項 富山県の財政運営
―県債残高は年間予算の2倍―

(1) 富山県の2021年度当初予算
  @外観
  A前年からの変化(新知事による予算)
(2) 富山県の歳出の特徴
(3) 財政状況(決算額)の推移の都道府県比較(2019年度決算統計)
(4) 公債の評価

 2021年度富山県一般会計当初予算の総額は634十億円であった。
 このうち歳入については、県税・消費税清算金は31%に留まり、地方交付税・国庫支出金が33%、県債が12%と自立性を発揮し難い構造となっている。こうした中で、地方交付税、国庫支出金については、2000ゼロ年代に大きく減少している。
 また、歳出については、土木費、農林水産業費が2000ゼロ年代に大きく減少している。
 こうした中で、2010年前後に県債を大きく積み増し、2021年度末には、1213十億円、予算総額の1.9倍となっている。
 現在、県債残高の積み増しは、抑制しつつあるが、景気浮揚の要請と社会保障費等の増加の中で、厳しい財政運営となっている。


(1) 富山県の2021年度当初予算
@外観

 富山県の2021年度予算財政規模(県のみで市町村財政を含まない)は、一般会計で634十億円、特別会計を含めた普通会計で700十億円、さらに収益会計、企業会計を加え、合計で833十億円である。



 2021年度の歳入予算額については、県税23%で最も多く、次いで地方交付税22%、県債12%等となっている。

 ⇒国地方間の財政資金の流れ


 県税収入の内訳については、地方消費税31%と最も多く、次いで個人県民税が27%、法人事業税18%、さらに、自動車税12%等となっている。



 実質の税収については、県税収入143十億円に地方消費税を清算し、市町村交付金を控除すると121十億円となる。


 歳入決算額の推移をみると、国庫支出金及び地方交付税がそれぞれ1997年度、1998年度をピークとして減少しており、2010年代に入って若干の回復を見せたが、再び減少し続けている。
 地方債は、バブル経済崩壊後に急増した後、1999年度から一旦減少したが、国庫支出金、地方交付税の趨勢、及び地方税の変動を補う形で、が2000年度を底に再増加し、2010年代に入って減少に転じている。



 このような歳入変動の収支について、基準財政需要額から収入額を控除した不足額の変動で見ると、概ね2000ゼロ年代に減少し、'10年代に横這いの推移ととなっている。


 以上のような歳入の変動の結果、県債残高は、概ね'90年代急増、'00年代前半漸増、'00年代後半急増、'10年代に入って'13年からようやく横這いの推移となっている。



 2021年度歳出予算額を性質別にみると、人件費が21%で最も多く、次いで、補助費が19%、貸付投資16%、公債費が14%、普通建設事業費13%等となっている。



 一般会計歳出予算を目的別にみると、商工費が17%、教育費も17%で最も多く、次いで公債費14%、土木費等となっている。なお、商工費については、前年度比92%の急増となっているが、これは新知事の新成長戦略に沿ったものである。



 投資的経費について見ると、普通建設事業のうちの補助事業費が56%を占めており、さらに国直轄事業負担金13%もあり、県単独事業は25%にとどまっている。


 歳出決算額の推移を見ると、1998年度をピークに減少しているが、2008〜2010年度には一旦増加し、その後再び減少している。
 目的別には、土木費、農林水産業費の減少が大きい。
 教育費は'00年代に減少しいたが現在は横ばいとなっている。
 これに対して、民生費は漸増を続けている。
 また、公債費は、今世紀に入って100十億弱円で横ばいで推移している。



 歳出額が最大であった1998年度から2021年度へは総額では76%に減少している。
 これを目的別歳出で見ると、増加したのは、社会保障関連を含む民生費、新幹線建設費等の返済の公債費、消費税の移転等の交付金等であった。
 人件費が主体となる警察費・教育費については、減少しているが総額より減少率は小さい。
  これらの費目に対して、建設事業を主体とする土木費、農林水産業費は半分以下となっている。


 同期間の性質別の変化については、目的別の変化と対応し、普通建設・災害復旧建設を含む建設等(統計での名称は「投資的経費」)の減少が特に大きい。
 増加を示した補助費には、国民健康保険会計等が含まれる。



A前年からの変化(新知事による予算)
 新知事の88政策は、それぞれ予算に反映されているであろう。
 しかし、歳出予算の目的別の金額で見ると、商工費が前年比92%の増加で極めて大きい。これは、事業者等への融資が含まれているのであろう。ちなみに性質別では貸し付けが大きく伸びており、歳入では諸収入が大きくなっている。
 次いで衛生費の伸びが大きいが、これはコロナ対策であろう。
 また、普通建設事業では、単独事業の伸びが大きい。


 性質別では、貸付に次いで、補助金の伸びが大きい。これもいろんな事業者等への支援が含まれるのであろう。

 歳入予算では、諸収入(74%増)に次いで、国庫支出金(18%増)の伸びが大きく国の資金を活用することとなっている。また、県債(12%増)も大きく、積極的な財政展開が窺える。


(統計データ)


(2) 富山県の歳出の特徴
 都道府県の財政については、政令指定都市等に道府県の事業の一部が移管されていることなどにより、単純には相互比較できないことに留意が必要である。

 富山県の歳出の特徴として目的別歳出額の特化度(富山県と都道府県合計の構成比の比)を見ると、農林水産業費、土木費の大きさが目立つ。この過去の支出の結果として、公債も大きくなっている。
 ちなみに、これまでの我が国の財政運営の中では、各種の公共土木事業や農業振興事業は、産業を通じた、生活保障的な意味合いを持っていた。



 歳出の特化度を性質別で見た場合、公債費が特に大きいこと、補助費が小さいことなどが目立つ。



(3) 財政状況(決算額)の推移の都道府県比較

 歳入総額は、リーマンショック対応として2009年度に財政の拡大を図った以降、次第に減少しており、現在人口1人当たり50万円を割っている。




 歳入中の地方税の割合は、富山県では、'10年代に増加し概ね30%となっている。



 歳入中の地方交付金の割合は、富山県では、概ね20%半で推移している。


 歳入中の国庫負担金の割合は、富山県では、現在10%台の下半までに低下している。


 公債費比率は、1980年代を通して漸増していたが、1990年代に入ってバブル経済崩壊以降急増し、1990年代末以降は、20%前後で変動していた。しかし'10年代に入り低下し、一旦15%を割ったが、2019年度は15%を超えている。



 富山県の財政力指数は、現在50%を若干割る水準で推移している。


 財政不足率(基準財政需要額と基準財政収入額の差の基準財政需要額に対する比率)は、富山県では、50%台で推移している。


 富山県の県債残高の歳出総額に対する比率は、2019年度決算で243%となっており、静岡県に次いで大きい。



 富山県の人口一人当たり県債残高は、新幹線建設の最終段階となった2014年度をピークとして漸減し、2019年度末で113万円となっている。



 歳出総額中の普通建設事業費の割合は、'90年代後半以降大幅に減少し、富山県では2015年度以降20%を割っていたが、2010年代末に反転し再び20%を超えた。

 ⇒行政投資(第5章第6節第3項詳説)


 目的別歳出で普通建設事業費の太宗を占める土木費についても都道府県の中では相対的に高い水準で推移している。近年は新幹線建設があったが、その影響を超えて高い水準にあるといえよう。


 県の産業の中で農林水産業の比重はかなり小さいのだが、歳出の中で農林水産業費はある程度の比重を占めている。ちなみに、農業土木がかなり含まれている。


 歳出の中で民生費の割合は次第に増加し、2019年度で13%台となっている。ただし、富山県を含め北陸3県は、都道府県の中では相対的に低い。


 歳出総額中の公債費割合は、富山県では、'00年代は10%台後半で推移し、2019年度では18%で都道府県の中で奈良に次いで大きい。


 歳入総額中の人件費の割合は、富山県2019年度で27%となっている。


 歳出総額中の扶助費の割合は富山県ではほぼ1%で、2019年度では都道府県の中で新潟に次いで低い。


 歳出総額中の義務的経費(人件費、扶助費、公債費)の割合は、富山県では'10年代に増加し、2019年度には45%となっている。



(4) 公債の評価
 以上のように、2019年度末の富山県の県債残高は、1兆183十億円、歳出額比では243%で都道府県の中で2番目であり、人口当たりでは113万円と大きなものとなっている。このため、債務返済のための公債費は、歳出額比で18%であり都道府県の中で2番目に高い。さらに、歳入額比15%を上回る新たな地方債が発行されている。
 ちなみに、公債返済時に基準財政需要額に組入れられ、国からの交付金に算入される制度があり、国による地方の歳出の操作となっている。これまで、富山県はこれを利用して、公債の発行を増やしてきた。実は、このような操作に最も詳しいのが石井富山県知事だったとされている。
 このように富山県の財政事情は、年々の財政運営の自由度が低下しており、厳しい状況にあるが、債務残高の多さについての評価は難しく、必ずしも危機的なものではないだろう。

 他方、国の公債の残高は、1100兆円を超え、人口当たりで872万円、GDP比で240%近くの膨大なものとなっている(右図は2018年度末まで)。さらに、現在、コロナ禍の中で国債の発行が上乗せされている。
 (国、県さらに市町村の公債を加えれば、富山県の人は一人当たり、約1千万円の借金を抱えていることになる。)
 この額は、危機的なものと言えると考えられるが、今後どのようなことになっていくのか。
 実は、国債を日銀が引受け、外国から返済を迫られ窮地に陥るようなこともなく、金利も殆どない限り、何もおこらないようにも考えられる。しかし、このような通貨供給の拡大は通常はインフレをもたらすものであり回避すべきものである。また、時の政権の節度のない財政支出の拡大は、ファシズムに繋がる危険性をはらんでいる。そして国内での財政のばら撒きは、国際的な評価の低下に繋がり、信用の失墜から、突然の円安、所得水準の陥落、経済の混乱へと進む可能性が十分にある。
 国債の評価については、そのメカニズムが極めて分かり難いが、危機的状況にあることは間違いないだろう。


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(Jun.10,2021Rev.)