13年前の冬、古ぼけた倉庫の屋根裏に入った私は、懐中電灯に照らし出された60年前の「梁」に出会いました。
その瞬間、私は眠っていた「時」の中に吸い込まれて行く様な気持ちになりました。
それは「長い沈黙の時間」との出会いであり、何よりもその長い時間を生き続けた「空間の息吹」との出会いでした。 

私は「梁」を磨き、「床」を張り、「壁」を建て、一つの空間を創りました。
それは「長い沈黙の時間」から「空間の息吹」を解き放つ作業です・・・・
思えばそれが、私のプロデューサーとしてのスタートでした。
そして同時に本物を求める旅への始まりでもありました。
私にとっての本物であると同時に全ての人にとっての本物、それは、長い時間を経ても決してその命を失わないもの。
その様な本物を訪ねる旅で、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ミロ、ピカソといった歴史上の巨人や、
ルイス・バラガン、ルイス・カーン、フランク・ロイド・ライト、ル・コルビュジェ、ミース・ファンデルローエなどの
建築界の巨匠に出会い、ニューヨークのイサム・ノグチの庭園美術館では場所を選ばぬ力強いストーンアートに圧倒され、
バルセロナのモンセラット山脈の有り様にアントニオ・ガウディの創造の原点を垣間見、
スイスのピーター・ ズントーの建築に「現代の古典」というべき普遍性を 感じました。

そして旅の途中で2人の友人と出会い、共に志を共有する仲間となりました。
建築家の広谷純弘さんとデザイナーの小泉誠さんです。
私は旅を重ねて行くうちに、世界的な巨匠達が何に向かい合って作品を作り上げて行ったのか
少しずつ感じることができる様になりました。
そして、故郷富山の自然と向かい合うことの大切さを教えてくれたのです。
それは私のルーツと呼ぶべき環境です。

私は故郷に帰り、そして13年前に、手をつけていなかった「残りの場」と対峙し、
私の気持ちをこの「場」に込める事にしました。
それが「土の間」「紙の間」「素の間」「木の間」「風の間」です。

今ここに13年の時を経て、仲間達と共に「VEGA」を完成させる事が出来ました。



VEGA 貫場幸英
デザイン 小泉誠


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