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第4章 堅実な生活
第4節 学び続ける暮らし
第1項 教え育てる

4.子どもの課題
―急増する不登校―

(1) 不登校
(2) いじめ
(3) 暴力
(4) 意識
(5) 給食費

 文部科学省は従来の「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」を2017年度に「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸問題に関する調査」と改称した。これは不登校を必ずしも否定的な問題と捉えないという発想である。

 なお、この数値の変動については、実態の変化ばかりでなく、教育委員会の問題への取組み姿勢の変化も含まれているとみられる。ちなみに、いじめや暴力の発生がなかった学校名を公表する措置が新たにとられており、関連する保護者がチェックできるようになったことの影響も大きいと考えられる。

 2020年度の調査では、富山県を含め各地域の不登校が急増している。これをコロナ禍と関連付た説明もあるが、増加は'10s年代後半からの趨勢である。




(1) 不登校
 2023年の富山県の小学校での不登校児童は1,100人、千人当たり23.95人であった。全国では21.37人であり、都道府県の中では7番目とかなり高くなってきている。


 1980年代、1990年代に長期欠席児童・生徒が急増し問題視された。その後横ばいが続いていたが、2010年代後半に再び増加している。
 富山でも全国と同様に推移し、2017年度以降急増している。
 児童の不登校の背景には家庭問題等もあるとされるが、富山にあっても課題を抱える世帯が増加していることが懸念される。

 なお、長期欠席児童・生徒の統計は、かつては50日以上欠席が基準とされていたが、現在は30日以上を基準としていることに留意が必要である。

 ⇒20世末の長期欠席児童・生徒の変化

 不登校児童の統計は信頼性のおける統計と考えられるが、地域によっては年によって大きく変動している。これは実態が変化しているのか、定義(捉え方)が変化しているのか疑義がある。


 2023年度の富山県の中学校での不登校生徒は1,531人、千人当たり60.69人であった。これは、全国の率67.10人/千人の90.5%であり、都道府県の中では11番目に低い位置にある。高校進学が不登校を抑えているのであろうか。

 富山での不登校は、都道府県の中で相対的に小学校が多くと中学校が少なくなっており、対照的な位置にある。ただし都道府県毎の2つの統計の相関は低い。


 全国平均は2000ゼロ年代末から一端低下しその後増加しているが、富山では大きく低下しその後横ばいで、この結果、全国で最も低くなった。ただし、2018年度以降、急増し続けている。


 2023年度の富山県の高校での不登校生徒は614人、千人当たり25.1人であった。これは、全国の率23.5人より若干高く、19番目となっている。
 高校進学率は都道府県間で大きな差異がある訳でない。進学してから不適合を起こす生徒が相対的に多いということであろうか。


 2020年度の富山県の高校の中退者は264人、生徒千人当たり1.0人であった。これは、全国の率1.1人/千人よりやや低く、都道府県の中では24番目の位置となっている。
 不登校が多くても中退が少ないというのは、モラトリアムを許さない富山の傾向が現れているということであろうか。





(2) いじめ
 2023年度の富山県でのいじめ認知件数は2,228件、児童生徒当たり31.6件/千人であった。全国の57.9件/千人に対して、約半分であり、都道府県の中では8番目の低さとなっている。


 都道府県毎の児童生徒当たり認知率の推移を見ると、殆どの地域で、2016年以降かなり増加し続けている。これは文部科学省がいじめを積極的に発見するよう指導したことも背景にあり、実態がどう変化しているかは、必ずしも明確でない。
 富山では2018、2019年度に増加しているが、ことについて富山県教育委員会は、積極的に認知するよう努力した結果だとしている(2021年2月8日)。なお、2020年度は、富山を含め、全国で減少しているが、これはコロナ禍とどんな因果関係があるかは定かではない。

 富山でいじめが少ないのは、間違いないであろうが、いじめを積極的に認知しようとする姿勢がまだ欠けているのではという懸念はある。



(3) 暴力
 2023年度の富山での暴力発生件数は1,379件で児童生徒当たり14.2件/千人であった。全国の8.7件/千人を大きく上回り、都道府県の中では8番目と多い。
 ちなみにこの統計での各都道府県のいじめと暴力の発生率には全く相関がない。


 富山では、2000ゼロ年代半ばに急増し全国平均に達し、その後若干低下していたが、2017年さらに2018、2019年度と急増し、その後2020年度には一服したが、2023年には急増している。
 なお、各地域の統計は、乱高下しており、実態の把握は難しい。


 問題行動等は、適切な定義が困難で、さらに各都道府県の教育委員会の意向が挟まれるようで、実態の把握が難しい。
 富山県の問題は、相対的に軽微と捉えてよいのであろうが、学校ばかりでなく、地域社会と連携し実態に合わせた対応が必要である。


(統計データ)


(4) 意識
 2021年度の「全国学力・学習状況調査」で小学6年生、中学3年生の規範意識、自己有用感、生活習慣が調べられている。各項目の点数の意味が分かり難いので、右図は各項目について47都道府県の標準偏差を1として偏差値を求め表現した。
 富山については、どの項目も概ね全国平均に近い。
 ちなみに、秋田、青森、山形などは総じて高い値であるが、日本海沿岸の稲作地域で富山との共通性はないのだろうか。

(統計データ)


(5) 給食費
 2018年5月時点での、都道府県毎の小学校給食費を見ると、全国平均で4,343円/月であった。
 これに対して、富山県では4,784円/月であり、かなり高い。都道府県の中では、長野、新潟、鳥取、に次いで4番目の高さとなっている。
 他方、低い地域については、下から順に、鹿児島、沖縄、茨城、滋賀などが並んでおり、全体としては、千円以上の大きな差となっている。

 都道府県毎の額の分布状況については、図で見るように、日本海沿岸諸県で高いことは明らかである。しかし、その他の地域も含めて、その背景は明らかでない。
 給食の内容自体が異なるのか、その調達コストに違いがあるのか、あるいは父兄の負担能力の差(地域間所得差、個人間所得格差)に対応するのか、いろいろ可能性があり、それぞれ部分的には適用できそうだが、これらを組み合わせるとしても、全体としての説明は難しい。
 結果として、高い給食費を肯定的にとらえるべきか、否定的に捉えるべきかは判然としない。

(統計データ)

  別途、人口の章に掲載・・・日本語指導が必要な児童生徒の状況

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(Nov.06,2024Rev.)