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第3章 モノづくり指向の産業
第4節 就業環境
第2項 就業機会

2.就業機会の変化
―サービス経済化の中で急変―

(1) 就業者総数の変化
(2) 産業別変化
(3) 職業別変化
(4) 産業別・職業別変化

 医療福祉等の専門的サービスを除きほとんど就業者が減少してきている。情報通信業及び学術研究、専門・技術サービス業の伸びは全国平均に比し低いものにとどまっている。


(1) 就業者総数の変化

2015年2020年増減数増減率
富山総人口10663281,034,814-31,514-2.96
労働力年齢人口605545568,052-37,493-6.19
労働人口556356545,680-10,676-1.92
就業者数538839528,961-9,878-1.83
全国総人口127094745126,146,099-948,646-0.75
労働力年齢人口7628873672,922,764-3,365,972-4.41
労働人口6152332759,949,767-1,573,560-2.56
就業者数5891903657,643,225-1,275,811-2.17
 2020年の国勢調査では、富山県の就業者総数は528,961人であり、'15年から9,878人(1.8%)の減少となっている。
 各産業の就業者数の変化は、働く人の総数の変化、生産される財サービスを消費する人口総数の変化、そして技術等の環境の変化が背景にあることを意識しておく必要がある。
 例えば総人口の近年5年間の変化は、富山県では3.0%の減少であったが、全国では0.8%の減少にとどまっている。これに対して労働人口では富山県の1.9%の減少に対して、全国では2.6%の減少となっている。



(2) 産業別変化
 産業別就業者数の最近5年間の変化について、まず消費者の減少とその所得の低迷から、卸小売り、飲食宿泊、生活等で大きく減少している。
 農林漁業については、就業者の高齢化の中で、退出超過が続いている。
 また、政府の財政的限界及び景気低迷の中で建設投資が低迷し、建設業でも就業者数の大幅減少が起こっている。
 金融保険については、低金利政策の中で収益が上がらず、就業者の減少となっている。
 製造も減少しているが全国に比して減少は小幅にとどまっている。
 他方、就業者数が大幅に増加している業種としては、まず医療福祉が挙げられる。これは人口の高齢化により需要が拡大しているものである。
 また、教育学習支援でも増加が見られた。その他サービスの増加は、人材派遣業の回復をもたらしたのかもしれない。
 情報及び学術は、増加してはいるが、全国に比して極めて小幅のものとなっている。
 不動産等での増加は、他産業からの退職高齢者の中でアパート経営を業とする者がいるかもしれない。


 ⇒経済センサスによる説明


(3) 職業別変化
 職業別就業者数のの最近5年間の変化について、増加したものとしてまず専門的・技術的職業従事者が挙げられる。資格要件を求める産業が増加している結果であろう。
 また、運搬清掃包装等が増加しているが、これは外注により独立して現れてきているのであろう。
 他方、減少したものとして、まず販売・サービス従事者があるが、多様な消費サービスの減少にともなうものである。
 また、農林漁業・建設採掘従事者は、大きく減少した各産業の中核的職業である。


 ⇒就業構造基本調査による説明



(4) 産業別職業別変化
 産業別職業別に細分して就業者の増加したものを見ると、まず、産業、職業とも分類不明の増加が3090人と極めて大きい。
 医療福祉業及び教育学習支援での専門技術(PB,OB)は資格要件のが要請されるものであろう。
 他に分類されないサービス業及び運搬清掃包装等(RK)は外注化の請負サービスの増加であろう。
 卸小売りでの運搬清掃包装等(IK)の増加は、職務区分の明確化であろう。
 また他に分類されないサービス業で事務(RC)が増加している。



 一方、就業者が減少したものとしては、各産業の中核的職として、卸小売業、製造業のでの販売(ID、ED)、宿泊飲食業及び生活サービス業のサービス職(ME、NE)の減少が多い。また製造業の製造工程(EH)建設業の建設採掘(DJ)、生産工程(DH)、農林漁業の農林漁(AG)での減少が目立つ。
 金融の事務職(JC)の減少は業務内容の効率化等であろうか。


 いわゆるサービス経済化の実態としては、生活関連サービス業・飲食宿泊業のような積極的な生活を享受するサービスはむしろ減少し、福祉関連のサービスが増加している。また、マニュアルワークの減少が多くの業種で進んでいるが、業務によっては、それぞれの企業から外注化(アウトソーシング)が進み運搬清掃包装等の増加が見られる。
 このような産業構造、職業構造の変化は、妥当な所得分配の維持や積極的な生活の享受に支障をもたらさないよう留意が必要であろう。

(統計データ)

 以上のような就業者総数の減少、構造の変化がある中で、個人、特に、大学等で学び、今後、職業人として生きていく人は、どのような技術を身につけ、どのような産業で働いていくことを考えればいいのか。
 各人各様の生き方があり、特定の正解はないだろう。
 しかし、基本的には、今後出てくるいろいろな新しい問題に立ち向かい解決していく力が求められよう。具体的には、パソコンが使えて、データを整理し、理解し、対応を考えていく力を持つことではなかろうか。さらに、敢えて、特定の能力といえば、語学力(英語)を持つことが望ましいのでなかろうか(長期的には自動翻訳が普及し、不要になるかもしれない)。


 また、地域社会としては、どのような態勢を構築していけばよいのか。
 世界経済の変動の中でしたたかに生きていける企業群の形成が望まれるが、意図して形成さるものでないかもしれない。
 「モノづくり富山」を誇示することはそれなりに意味があろうが、モノづくり企業群を核に多様な業種が連携し合う、産業クラスターの形成が必要ではなかろうか。
 また、諸般の事情で失業に陥った人への対応については、一部の職種を除けば、就業に繋がる職業訓練もかなり難しくなっていると思われる。そうであっても、地域企業としっかりとした連携を取って、職業訓練・職業紹介をしていく態勢が求められる。このため、現在、各地域の労働局(厚生労働省の組織)の仕事を地域でしっかりと受け止めていくことが必要であろう。
 また、いろいろな方法で、仕事を分け合っていくことにも配慮が必要であろう。
 これらの態勢の整備のためには、地場で生まれ育った企業の活躍にこそ期待される。


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(Jun.01,2022Rev.)