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第3章 モノづくり指向の産業
第5節 21世紀産業の構想

第3項 既存産業の主体的変革
―産業保護政策の転換―

(1) 農業の成長産業化
(2) 建設業等の新展開
(3) 銀行・電力

 当然だが、あらゆる経済政策は産業の在り方に影響を与えるが、だからといって森羅万象を述べることはできない。また、国全体の政策を地域政策として議論しても意味を持ち難いものも多い。さらには、政策の是非に関し議論が一致しないことも極めて多い。
 こうしたことから地域の産業政策に関連する議論を展開することにはかなり制約がある。筆者なりに気がかりな経済政策については別途述べるとして、ここでは、特に地域なりの政策が必要と考えられることに言及する。
 ⇒経済政策の在り方


(1) 農業の成長産業化
 競争力のある企業化された農業は、兼業稲作を中心とした農業とは異なる。このため、現在の農業生産というより農家政策は、大きく転換していく必要がある。
 特に、稲作では土地の集約が課題であり、土地利用の厳格化、農用地区域の除外などを原則禁止するほどのことが必要であろう。現行制度でも原則禁止とも読めるが、農業委員会によって極めて柔軟な運用がなされている。この規制の徹底によって農地転用による転売期待がなくなればかなり事情が変化していくであろう。
 集落営農が展開されてはいるが、実態は、とりあえずの土地管理の手段であり、新たな農業の展望が見えてはいない。
 現在、農家は急速に減少しており、今が政策転換の潮時であろう。




(2) 建設業等の新展開
 土木事業の分野は主として公共投資によって担われているが、既にかなり減少してきている。しかし、地域での個々の事業を見ると、厳しい財政事情の中で、敢えて施工すべきか否か疑問を感じるものも多い。ただし、個々の事業については、国の予算配分によって決められることとなっている。このため、地域は大所高所からの判断をする必要がない仕掛けとなっており、多々益々弁ずとしてひたすら事業の実施を要望し続けている。国の各省庁、各部局もこの要望を必要性の現れとして、事業継続を主張し続けている。民主主義の機能不全が露見している課題だが、マスコミや学識者等しかるべき人の発言が求めらている。
 建築のうち太宗を占める住宅建築については、人口減少から間もなく世帯数減少も始まり、空き家もかなり増加しており、新たな住宅建築の増加は見込めない。経済政策としても住宅建築を奨励するような景気浮揚策は、もはや好ましくない。住宅資産の価値の維持そして回転を促すことこそ必要であろう。住宅建築業者や不動産業者にはリフォームや中古住宅売買に力点を移しつつあるものも出始めている。
 いずれにしろ、建設業を取巻く環境の変化は古くから見通されてきたことであり、対応が求められている。




(3) 銀行・電力
 富山県の2大企業は、銀行と電力である。両企業は、いろいろな形で地域を支えてきており、今後とも重要な役割を担っていくことが期待される。しかし、双方の業種とも厳しい構造転換の淵に立っている。
 銀行については、本来産業活動に必要な資金提供という重要な役割を担っているのだが、経済全体の成長の限界から資金需要が低迷し、金利もゼロとなっている。こうした中で、個人カードローンや賃貸住宅建築融資に活路を求めたりしているが、これらは必ずしも健全な資金活用とはなっていない。また、フィンテックと称して個人等の資産運用を促す事業もあるが、経済活動に追加的価値を殆ど産まない所から利益のみを搾り取ろうとしており、結果として労働配分率の低下、社会の所得格差を産むこととなっている。さらに、様々な資金管理から手数料を集めようともしているが、IT技術の浸透も絡み、限界がある。
 このような状況の中で、銀行はどのように生きていくのか、金銭管理事務といった役割は当然必要だが、新規事業展開への融資については、極めて限られたものとなっていこう。今後は、当然ではあるが、地域の様々な起業の可能性を掘り起こしていくことを主力にしていく必要がある。さらに地域の人々が長期安定株主となり、地域と共に活きていく企業を創っていくことに活路を求めることができないだろうか。ただし、規模はかなり限られるであろう。
 電力については、発送電の分離、電力販売の自由化が進められ、大きな転換期に直面している。また、地球温暖化が進む中で事業のあり方を大きく転換していくべきことは明らかである。この意味で石炭火力には限界がある。さらに、世界の多くの国で原子力からの撤退が進んでいるが、地震国の日本こそ原子力にしがみついておれない。
 こうした中で電力会社がどう生きていくか。多様な自然エネルギーによる発電を多角的に集め、また自らも多様な発電を展開していくことが必要であろう。小水力、太陽光、風力など様々な可能性がある。これに必要なコストは電力消費者が負担する必要があるのだが、現在の制度変革のもとでは、1社だけによるこのような方向への努力は難しくなっている。果たして国は、どの様な方向を考えているのだろうか。
 いずれにしろ、富山の2大企業は極めて厳しい事態に直面していることを認識しておく必要があろう。

(統計データ)

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(Jul.10,2017Rev./Apr.06,2016Orig.)