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第3章 モノづくり指向の産業
第1節 主要業種概観
第2項 第1次産業

2.林業・漁業
―高齢化し限られた就業者―

(1) 林業
 ・ 林業産出額
 ・ 木材生産
(2) 漁業

 林業、漁業については、地域でその活動のイメージは大きいが、経済活動全体の中での比重は極めて小さい。就業者がかなり少なくなっているが、今後、団塊の世代の退出により一層の減少が見込まれる。
 このような分野について、財政的支援をどの程度続けていくかは、しっかりと検討すべきことであろう。



(1) 林業
・林業産出額
 富山県の2019年の林業産出額は、35.9億円であった。
 都道府県の中では32番目の大きさであり、富山県より少ないのは大都市圏の都府県と福井・佐賀などである。富山には山が多く、一見林業が盛んに見えるが、山地は急峻で林業に向く里山は少ない。
 ちなみに林業にはきのこ栽培が含まれ、その産出額の林業全体に占める割合は、全国で48%、富山県で79%である(後述)。


 林業就業者も少なく、2015年の国勢調査では562人となっている。


 林業就業者のうち65歳以上の者が20%を占めており、今後団塊の世代の退出によってさらに減少していくことが見込まれる。


 さらに、林業産出額の約4/5は、きのこであり、限られた工場で生産されている(八尾中核工業団地のホクトなど)
 きのこの生産は、90年代半ばに増加し、木材生産の減少期と重なっており、結果として林業産出額全体では長期間横ばいが続いたが、'10年代末には栽培きのこの一層の増加で、林業産出額合計は35億円を超えた。


 なお、全国の栽培きのこ類生産はほぼ横ばいが続いているが、木材生産は'10年代に入って次第に増加に転じている。


 なお、森林資源の蓄積量(育成林立木の量)について見ると、富山県は全国で9番目に少ない。
 山に富んだ県であるのだが、急峻な山が多く、林業は極めて乏しい。



・木材生産
 次に木材生産に関する素材需要量について見ると、2020年富山県では259千m3となっており、都道府県中28番目と中ほどにある。


 ただし、輸入材のみでは、121千m3で、都道府県の中では4番目の大きさである。これは北洋材の利用が都道府県の中でも最も大きいためである。


 富山県の製材量の変化を見ると、戦後、国内材の生産が70s半ばまで減少し、その後10年程度横ばいが続いたが、80s年代の後半から再び減少し、'00s年代に再び横ばいとなっている。
 一方、外材(北洋材)については、'70s年代半ばまで急拡大し、その後'90年頃まで横ばいで推移した後、現在まで急激に減少している。
 (ちなみに、環水公園は製材工場の跡地等である。)

 近年の変化を詳しく見ると、'10年代後半以降、外材の下げ止まりで総量は増加気味に推移している。
 国内材については、'10年代全体で、概ね、他県材は増加、富山県建材は横ばいで推移している。


 国全体では、国産材の製材が長期減少から21世紀に入って横ばいから若干の増加傾向で推移しており、外材の製材は'70s初めのピーク以降、減少を続けている。


 林業は木材価格と生産費用の関係で、わが国では成立しなくなっている産業であると考えられ、長期的には杉ではなく広葉樹に切り替えていく方向が示されている。しかし、現時点では、これまで植林し育ててきた蓄積があり、またこのための負債があり、今後どう対応していくか難しい課題がある。今後可能なシナリオを整備し、公的にも必要な対応を明確にとっていくことが求められている。

(統計データ)

(Apr.03,2020Rev./Apr.30,2015)



(2) 漁業
 2019年の富山県の海面漁業生産額は111億円で、全国の0.8%にとどまり、39臨海都道府県の中で31番目と少ない。


 産出額の年々の変動はかなりあるが、2020年は前年に続き低迷が続いており、今後の変化を注視していく必要がある。

 魚種別の生産額では、マグロ27%、イカ21%、サンマ14%、エビ8%が太宗を占めている。


 ちなみに魚種別の生産量では、いわし類22%、まぐろ類13%、さんま(その他魚類の内数)12%が太宗となる。


 漁法別での生産量については、定置網による漁獲量が62%で半分を超えており、次いでさんま棒受網が12%となっている。
 全国で42%ある巻き網は、富山県では生産量が示されていない。


 2018年漁業センサスでは富山県の漁業就業者数は1,216人となっている。
 なお、2015年の国勢調査での漁業就業者数は、942人であり、センサスには兼業者が含まれている。


 漁業センサスで漁業就業者数の推移をたどると、次第に減少しており、現在では半世紀前の1/4程度となっている。21世紀に入って減少幅が少なくなっているようでもあるが、今後を注視していく必要があろう。


 2015年の国勢調査での漁業就業者について、65歳以上が31%を占め、さらに60歳以上では41%となっている。



 (統計データ)

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(Apr.01,2022Rev./Apr.30,2015)