参考 地域創りの意思決定 第2節 行動原理 ―正しく生きる― 第3項 社会の構想 1.競争と優しさと望ましい社会の形成を促す仕掛けの構築 (計画とは)地域社会の総合的な計画とは、望ましいと考えられる社会を直接作ってしまうものではない。多様な個人がいる社会では、望ましいと考えられる社会が形成されていくように各個人が行動する仕掛け(社会システム=マイクロストラクチャ)を作ることこそが求められる。 こうした仕掛けの形成が社会のいろいろな段階で意図的に形成されていくことが社会の計画となろう。 競争の原理と優しさの原理このための基本として、競争の原理を導入することが必要となる。ただし、この原理だけで社会を構成することはできず、一方で優しさの原理を持った仕掛けがあって、個々人のミニマムを支えていくことも不可欠である。この2つの原理は、それぞれ個人主義・自由・能力原則の系列及び集団主義・平等・必要原則の系列に属するものであり、それぞれの世界ではそれぞれの理念が十分に発揮されることが求められると同時に、全体として2つの理念のこの適切な均衡こそが大切である。 能動的な個人の原則各人は、競争の原理の下で能動的に行動する者として振る舞うことが原則である。皆が社会に支援を求めては、社会は成立しない。しかし、生活のある側面、あるいは生涯のある時期には社会に支援を求めざるをえず、この2つの原理のバランスするところで生きていかざるをえない。また、支援を求めることを卑下することなどもとよりない。 競争の原理競争原理による社会は、能動的な個人が必要な資源を活用して行動を起こすことが基本である。この行動は、社会の人がどう応えるか、物を買ってくれるか、サービスを活用してくれるかといった投票によって評価される。これによって、個人の行動が増幅あるいは縮小され、結果として望ましい社会の形成に近づいていく。この際、個人が行動を起こす環境は、明確なルールとして示されていることが原則である。なお、この場のルールは、個人主義・自由・能力原則の理念が貫徹したものであることが要請されている。 また、活用可能な資源の所在に関する情報も十分透明になっている必要がある。 現在、社会の改革の方向として規制緩和が唱えられ、明確なルール、透明な情報が強く主張されている。これと同時に投票システムの構築(社会でのビルトイン)が達成された始めて、変革へと動き出すものと考えられる。 この投票システムは、現在、インターネットの発展で自然に構築されつつある。具体的には、何かの課題で人探しをする場合、インターネットの検索システムで、広範な探索が可能になってきているが、こうした中では、例えば自らの活動の内容を提示しない研究者は、頼りにされなくなっていくであろう。 優しさの原理優しさの原理による社会は、個人を支援する制度を直接形成していく必要が大きい。しかし、この側面も行政にのみまかせるものではない。むしろ子供の養育や老親の介護等は家族で支えていくことが必要であるし、家族を超えたボランタリな活動も大いに活かされる必要がある。 優しさの原理による社会は、こうした各人の自発的な活動が積極的に促されるシステムを保持していることが肝要である。これがなければ、際限のない社会の負担が求められよう。 参考 → 「総合社会政策を求めて 第3章」 (Feb.10,2016Rev.) |