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参考 地域創りの意思決定
第2節 行動原理 ―正しく生きる―
第3項 社会の構想

2.2軸への懐疑

単純化による成功
 競争社会の原理と優しさの原理それぞれが支配する2つの社会システムを想定することによって、それぞれの原理が単純化され、行動規範が明確となり、社会のあり方を検討し議論することが可能となっている。
 具体的には、この規範によって、社会システムの諸課題が線形システムの均衡解として捉えられ、多くの社会計画を検討するための枠組みとなり、それなりの成功を収めている。
 特に、競争社会の原理については、市場経済の社会として、明確な普遍的規範が提示され、国際社会の基準とされ、これに反するものは異質なものとして排除されさえしている。また、日本型システムも異質とされ、その正統性(あるいは普遍性)を説明することが求められているがほとんど対応していない。

2つのシステムの調和
 しかし、それぞれの社会には、一方で優しさの原理で働くシステムの存在が欠かせない。2つのシステムを調和させる原理は必ずしもないが、各地域それぞれの伝統の中で、宗教心等も背景として、一定の均衡を保ち、社会を安定させている。
 西欧のシステムを取り入れた日本にとって、この調和の課題に明確に対処していく伝統はなく、2つのシステムがそれぞればらばらに語られ、整合性のある社会像が描き難くなっている。
 この解決方法としては、「ソーシャルミニマム」を設定し、その水準を社会的に保障していくという考えがある。しかし、これは不足の時代の発想である。豊かな時代では、低い水準では尊厳を欠き、高い水準では自立心を削ぐといった困難が避けられない。

統一原理の要請
 このような課題は、本来2分法に問題が存在し、2つの原理を統合した原理を導入することが求められる。近年自然科学の分野で複雑系に関する知見が著しく拡大している。社会科学の分野でもこれを援用し統合原理を形成していくことが求められているといえよう。
 これは、力学(物理学)の大統一理論が求められていることに対応しよう。具体的には、カタストロフィーの理論の社会科学の応用など、従来から試みがあった。さらに、複雑系の科学の発展の中で新たな挑戦が試みられている。

当面の対応
 しかし、このような社会科学の識見が深化することを期待しつつ、現時点では、2分法的発想を修正しつつ活用していく他はないと考えられる。

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(Feb.10,2016Rev.)