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豊かさ指標詳述

(1) 国民生活指標―豊かさ―
(2) 法政大学試算―幸せ度―
(3) 日本総合研究所試算―幸福度―
(4) 東洋経済新報社試算―全都市住みよさ―
(5) ブランド総合研究所アンケート―幸福度・魅力度―


(1) 国民生活指標―豊かさ―
指標作成の経緯
 新国民生活指標は、国民生活の多様な側面をきめ細かく把握するとともに、地域社会の生活の実態や特色をとらえ、真の豊かさとは何かを考える上での参考に供し、国民生活の質の向上に寄与することを目的として、経済企画庁国民生活局で策定されていた指標である。
 かつて社会の発展を総合的に表す指標の代表として、もっぱら所得統計が取り上げられていた。しかし、1960年代末に公害問題が社会の大きな課題なった時、所得統計だけでは、社会の発展が示されないとして、新たな指標が求められた。
 各種の生活関連社会指標を総合化する試みとして、1970年から「社会指標(SI:Social Indicators)」の検討が開始され、1984年には「新社会指標(NSI)」、さらに1992年には「新国民生活指標(PLI)」として試算値が発表されてきていた。

指標の構成
 PLIは、各種の社会指標を領域分けすることによって指標の枠組みを形成している。現在の指標では、生活の活動領域に沿った領域分けと生活の評価軸に関する領域分けの2つの枠組みが提唱されている。  各種社会統計を相対比較ができる指標として捉えるため、地域間比較を行っている。まず指標の合成のための共通の尺度を設定するため、各指標を平均値50、標準偏差10に換算(正規化)し、偏差値を作成している。指標の合成は、活動領域別の指標では、偏差値の単純平均を領域毎に行っている。また、生活評価軸の指標では、別途、人々の選好度調査を実施しこの結果により、先の偏差値の加重平均を領域毎に行っている。

指標の見方
 各領域の中にどのような指標を採用するかは、指標の結果を左右する大きな課題である。この問題を含め、指標作成の手続き全体について、論理的な考え方は必ずしもなく、多くの課題がある。このため、この国民生活指標は、絶対的真実というのではなく、社会を捉える重要な参考指標として見る必要がある。より詳細な検討には、各領域の個々の指標に入り込んで検討していかなければならない。

 例えば、各領域の指標値の水準をレーダーチャートにした図は、新国民生活指標の報告書にも掲載されている。
 しかし、原統計の正規化はなされているが、8領域に合成された指標の標準化はなされていないので、数学的には、領域の相互比較は直接にはできない。
 領域別指標は、合成した原統計の数が多いほど平均化され分散の小さな(50に近い)値となっている。
 さらに、地方自治体等が8領域を平均し総合指標として順位を見ている。これが元の報告書に掲載されていないのは、総合化の論理(8領域の相対比較のための尺度)がないとともに、数学的にも錯誤があるからであろう。
 ただし、富山県の「住む」が突出している事実を表現しているなど、この図なりに価値があることは否めない。
 なお、レーダーチャートの基本的な問題として、目盛りの取り方、特に中心点の値をどう取るかによって、図のイメージが大きくことなることに留意しておく必要がある。例えば右図は中心点が40であるが、45にすると相当違ったイメージの図となる。

 8領域を敢えて並べるとすれば、それぞれの都道府県順位を表現することが可能であろう。
 しかし、都道府県間の相対的な位置が、それぞれの県民にとって積極的な意味を持つかは、疑問がある。
 ただし、この指標は、地域が変容する可能性を示唆しているとも考えられよう。








 一方、新国民生活指標は、確立した指標ではなく、検討中で試行錯誤が続けられている指標である。
 例えば、各年の都道府県順位を並べて見ると、領域によっては、年によって大きく変動している。これは、試行錯誤中の結果であり、地域の実態が毎年変動している訳ではない。もっとも個別指標を詳細に見ると、消費者物価指数などのように、年によって大きく変動する指標も含まれている。
 また、この試行錯誤の後に、内容が収斂する可能性は乏しいと考えられ、国民生活指標はこの程度の意味を持つものと認識する必要があろう。

 なお、このような地域を相互比較する指標は、多くの関心を集めるが、その割には、論理的根拠が弱いため、評価が低く表れている地域等からクレームがつき、1999年を最後に、国で作成して発表することは取りやめとなった。ちなみに富山県は、中沖知事の下で、2年毎に同じ手法で試算値を作成していた。もちろん他県の数値は発表されていない。



(2) 法政大学試算―幸せ度―
 幸せ度指標として法政大学ランキングがあるが、ここでも、北陸3県を高く評価している。

高い幸せ度ランキング
─法政大学ランキング─


 法政大学坂本光司教授のグループによる『「幸せ度」ランキング』では、富山7.20点(2位)、石川6.90点(2位)、福井7.23点(1位)と北陸3県が揃って高い位置にある。
 この指標は、地域住民の幸福度を端的に示していると思われる40の指標について都道府県をランク付けし1〜10点を付しその平均点を求めたものである。坂本教授は高いランクにある北陸3県は、日本海側に位置し、東京から離れた人口100万人前後の県で、ものづくり第二次産業が集積し、就業環境や子育て環境も整っているとしている。

 もちろん、「幸せ度」や「豊かさ」としてどんな要素を選ぶかについては、個々人によって異なり、こうした指標は誰もがそのまま賛同するものとはならない。敢えて言えば、こうした指標の作成者は大都市に住む人の視点を持って、住宅など大都市地域で欠けるものを強く求め評価しがちという側面もあるように思われる。

(Dec.03,2011)




(3) 日本総合研究所試算―47都道府県幸福度ランキング―
 日本総合研究所の47都道府県幸福度ランキングでも、北陸3県は高く評価されている。

47都道府県幸福度ランキング
─日本総合研究所─


 東洋経済新報社刊
 65指標によるランキング。
 現行指標;現状における経済や社会の安定度。
 先行指標;個人の将来ありたい姿や社会の将来あるべき姿の実現という、未来の幸福に向けた地域の潜在能力。
 基本指標;各地域における経済活動や社会的基礎的状況を示す指標。
 分野別指標;人々の幸福に一定の影響を与える具体的要素の状況を示す指標。
  各分野はそれぞれ5指標で設定、うち2指標が現行指標、3指標が先行指標を構成。

 富山を東京と比較し、富山が優れ東京が劣っているのは現行指標・生活分野であり、逆に富山が劣り東京が優れているのは先行指標・文化分野である。資料の原本を入手しておらず詳細は分からないが、採用する指標によっては、そのような評価もあり得よう。

(統計データ)

(May.27,2018)




(4) 東洋経済新報社試算―全都市住みよさランキング―
 全都市住みよさランキングとして、全国の都市についても、同様の試算がされており、ここでも富山の各都市は、それなりの住みよさがあると評価されている。

東洋経済新報社試算

全都市住みよさランキング
総合評価の順位
砺波市1
富山市4
高岡市8
黒部市26
魚津市73
滑川市90
新湊市180
小矢部市188
氷見市395
 東洋経済新報社の「全都市住みよさランキング1998年」の総合評価では、671都市の中で、砺波市1位、富山市4位、高岡市8位などと富山県内の都市の順位が極めて高い。
 地域を総合的に評価する試みが、ほとんど論理的根拠を持ち得ないことが分かっていても、なんとなく嬉しくなる結果である。


 しかし、なぜこのように高い位置にあるのか。
 ランキングの計算に使われた指標は、5分野合計16指標であり、指標の高低の要因は容易に分かる。
東洋経済新報社「全都市住みよさランキング(1998年)」の構成指標
安心度病床数、85歳以上人口比率、出生数
利便度小売販売額(1人当たり)、大型小売店舗面積(1人当たり)、
金融機関数(1万人当たり)、通勤時間
快適度下水道普及率、都市公園面積(1人当たり)、3年間の転出転入人口
富裕度財政力指数、課税対象所得額(納税者1人当たり)、高額納税者数
住環境充実度1世帯当たり住宅延べ面積、住宅地地価、持ち家比率



 各都市について、5つの分野それぞれの全国順位を見ると、低い位置にある分野も結構多い。これだけでは、総合評価が極めて高いものとなることは予想し難い。


 しかし、指標の合成では、偏差値を平均しており、富山県の都市の多くは、住宅延べ面積や持ち家比率が極めて高い値を示し、他の指標が平均前後でも総合評価が極めて高くなっている。これは経済企画庁の新国民生活指標でもある程度見られる傾向である。
 なお、富山市については、住環境充実度は必ずしも高くないが、利便度が高く総合評価が高くなっている。これは、通勤時間の短さなどが大きな要因となっているのであろう。

(May.16,1998)


2019年版
 東洋経済新報社「住みよさランキング2019」では、812市区の中で総合上位50番までの都市について、総合偏差値及び分野毎の都市順位をWeb上で公表している。
 1998年版とは採用している統計指標も異なり、都市の順位もかなり異なっているようである。このような方法でのランク付けでは当然起こることであろう。
 ただし、富山県内の市を含め北陸3県の市が総じて高い位置にあることには、1998年版と同様である。


 分野別では、黒部市、滑川市の利便度がかなり低くなっているが、これは小売店や飲食店の利便性などである。実際には、富山市等がこの利便性を補っているということになろう。





 (統計データ)

(Jul.10,2019)



(5) ブランド総合研究所アンケート
 人々の意識を調査するという方法もある。
 ただし、このような意識(イメージ)調査では、生活環境の諸指標を合成したものとはかなり異なる結果になる可能性がある。特に、他者の評価では、富山は諸指標合成の場合より相対的に低く出ることが予想される。
@幸福度ランキング
 幸せかどうかという調査では、中部地方や南九州の諸県で、幸せとする者の比率が高くなっている。
 ただし、富山県については、都道府県順位で24番目に留まっている。
 幸福度について生活環境の諸指標を合成したものとアンケートによるものには差異があり、特に富山県も異なるが、南九州などは逆の位置にある。幸福度を求めるために諸指標を合成するという手法は、かなり空論なのかもしれない。

 2019年調査(右図のみ2021年調査結果)
住民に対し「あなたは幸せですか」という問いを投げかけ、「とても幸せ」「少し幸せ」「どちらでもない」「あまり幸せではない」「全く幸せではない」の5段階から1つ選んでもらった。回答はそれぞれ100点、75点、50点、25点、0点として全回答の平均を「幸福度」とした。アンケートはインターネットにて実施1万5925人から回答を得た(一部を除き各都道府県から約340人)。


 住んでみたい地域かどうかという調査では、大都市地域の都道府県が選ばれるようだ。
 富山県は都道府県順位では33番目となっている。

「各自治体に住んでみたいと思いますか?」という問いに対して、「ぜひ住みたい」を100点、「できれば住みたい」を50点、「住んでもよい」を25点、「どちらとも言えない」を0点、「あまり住みたくない」を0点として、加重平均した数値から算出した。アンケートはインターネットにて実施、有効回答数:全国3万1369人。

 住み続けたい地域かどうかという調査では、やはり大都市指向が見られるが、過密の課題がある中核都府県は若干評価が下がるようだ。
 富山県は都道府県順位では30番目となっている。

住民に対し「今後も住み続けたいと思うか」という問いを投げかけ、「ぜひ住み続けたい」「できれば住み続けたい」「どちらでもない」「機会があれば他県に移住したい」「すぐにでも他県に移住したい」の5段階から1つを選んでもらった。回答はそれぞれ100点、75点、50点、25点、0点として全回答の平均を「定住意欲度」とした。アンケートはインターネットにて実施1万5925人から回答を得た(一部を除き各都道府県から約340人)。

 住んでみたい地域と住み続けたい地域の評価は若干の相関がある。


 幸せかどうかの評価と住んでみたい地域、住み続けたい地域の評価については、相関が全く見られない。


(統計データ)

(Mar.18,2020)


A魅力度ランキング
 豊かさとはかなり意味が違うが、都道府県の魅力度についての意識を調査もある。
 「各自治体について、どの程度魅力を感じますか?」という問いに対する回答それぞれ(「とても魅力的」100点、「やや魅力的」50点、「どちらでもない」「あまり魅力を感じない」「全く魅力的でない」0点)に点数をつけ、それらを加重平均して算出。
 47都道府県と国内1000の市区町村を対象に、全国の消費者3万5489人から有効回答を得て集計。
 富山県は24番目で都道府県の中間的な位置にある。
 都道府県毎の魅力度は上述の住みたい都道府県と高い相関がある。

(統計データ)

(Feb.14,2022Add.)

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(Feb.14,2022Rev./Feb.08,1998Orig.)