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第4章 堅実な生活
第4節 学び続ける暮らし
第1項 教え育てる

5.地域と学校の協働
―極めて低い学校運営への住民参加―

(1) 学校評議員制度
(2) 学校運営協議会
(3) 学校支援地域本部
(4) 地域学校協働本部
(5) 学校運営協議会設置の努力義務化

 文部科学省の諸施策は、多様な制度が積み重ねられ、錯綜している。Webサイトでの説明も十分ではなく、門外漢には内容が分かり難く、実態を掴むことが困難である。間違いもあると思うが分かる範囲で整理しておく。


(1) 学校評議員制度
 2000年に学校評議員の制度が設けられた。保護者や地域住民などの相互の意思疎通や協力関係を高めるための制度で、学校評議員は、校長の求めに応じ、学校運営に関して意見を述べることができる。

 評議員制度設定後の設置校比率の推移を見ると、2004年以降急速に増加し始めているが、これは文部科学省あるいは県教育委員会等の督促で急速に上がっているものと推測される。

 文部科学省のホームページでは2007年以降の評議員等設置校の連続した統計が見つからない。


 評議員の設置は、地域住民の活動の意向とともに、地域の教育委員会の姿勢も関係している。富山県にあっては、地域住民のボランタリィな活動は低調な用で、教育委員会の活動を開放し活性化していこうとする姿勢も低調なのではなかろうか。




(統計データ)

(Feb.18,2011Rev./Jan.21,2006Orig.)



(2) 学校運営協議会
 2004年に学校運営協議会の制度が設けられた。地域社会の意思に基づく学校運営のために一定の権限を有しており、学校評議員制度とは同時に置くことももできる。この設置校をコミュニティスクールと称している。

【2013年の状況】
 2013年4月現在で、全国で1,570校となっている。


 特定の市域などでまとまって制度導入が行われている傾向があるが、主に大都市圏での導入が進んでいた。
 こうした中で、未だ1校も導入していない地域は、5道府県であったが、この中に富山県が含まれていた。



(3) 学校支援地域本部
 2008年度からは、学校内の環境整備・少人数指導や習熟度別指導・登下校時の安全指導などの学校支援ボランティアによる学校支援地域本部事業が開始されているが、これも、富山県では2016年度現在実施している市町村はない。




(4) 地域学校協働本部
 さらに、2015年中央教育審議会の答申に基づき、地域学校協働本部が制度化されている。地域住民、学生、保護者、NPO、民間企業、団体・機関等の幅広い地域住民等 の参画を得て、地域全体で子供たちの学びや成長を支えるとともに、「学校を核とした地域づくり」を目指 して、学校と地域が相互にパートナーとして連携・協働して行う場とされている。
  学校支援地域本部と地域学校協働本部の関係ははっきりしない。


(5) 学校運営協議会設置の努力義務化
 2017年4月には、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正により、コミュニティ・スクール導入よう教育委員会が努力することを義務付けている。


 設置が努力義務化されたことにより、富山県でもようやく取り入れ始めたようだ。2018年度現在、富山市で小学校4校(呉羽小学校など)、中学校2校(堀川中学校など)となっている。

 富山県は、国が制定する多くの制度をいち早く導入する傾向があるように思えるが、コミュニティースクールについては、学校評議員制度と同様、積極的には導入しようとしていない。
 これは、金銭的支援が伴う制度ではないこと、現在の学校関係者にとっては面倒な追加的業務となることと同時に他者から注文を付けられる事態となることなどが要因となっていよう。
 さらに、地域の人たちが、子ども達の教育を担う学校運営に参加しようとしていない、その必要性を感じていないことが、基本的な背景としてあろう。
 しかし、残された県となって、そろそろ対応に動き始めたようである。

(統計データ)


 学校は、学齢期の子供達が、今後の生活に必要な基礎的な知識を身に付けるための組織である。同時に、子供達は、生活の大部分の時間をそこで過ごし、社会生活の知恵も身に付けていくこととなる。
 このような重要な機能を持つ組織の運営を学校関係者のみに任せてよいのか。子供達の両親や地域社会に住む人々もなんらかの形で参画していく必要があるのではなかろうか。「不登校」や「いじめ」の問題によって、このような議論が高まった。

 我々は、生活の多くの分野で、かつて家族・地域社会が持っていた機能を外部の政府や企業などの組織に依存するようになってきている。
 このような機能の外生化は、社会の近代化の中での家族・地域社会の変化として捉えられている。
 しかし、外生化して放り投げながら、外部が提供するサービス、そのための金銭的負担の増加について不満を述べ続けていることが多い。

 我々は、これまで家族・地域社会が持っていた機能を単に外部に投げ出したままにしていいのだろうか。
 各自なりに、関連する組織に、ボランタリィに参画する必要があるのではなかろうか。
 かといって、個々人に、参画する準備があるのだろうか。小生もこのような発信をするだけで、体を動かしている訳ではない。

 NPO法人が制度化された当初の立ち上がりのように、富山県では、このようなボランタリィーな社会参画には、疎い面があるようだ。
 コミュニティ・スクールについても、NPOの設立の場合と同様に、もう少し各県に普及すると行政が旗を振って導入を促すこととなるのだろうか。

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(Apr.27,2020ReEd./Dec.23,2001.Orig.)