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第4章 堅実な生活
第3節 健やかな暮らし
第2項 医療

1.医療環境
―病床数が要―

(1) 各種医療関係諸指標
(2) 医療関係諸指標の相関
(3) 人口当たり病床数
(4) 人口当たり医療費
(5) 人口当たり歯科医療費


(1) 各種医療関係諸指標
 受診関連統計は患者の住所地で、医療施設等統計は施設等の住所地でそれぞれ集計されている。また外来診療では大都市圏を中心に都府県堺を超えた受診がかなり予想される。以下の分析ではこのことに触れていないが留意が必要である。

 病床数を人口10万人当たりでみると、全国の1298床に対して、富山県では1614床とかなり多い。しかし富山県は都道府県の中では15番目である。これは大都市圏が人口当たり病床数の全国値を引き下げているためである。


 人口10万人当たり医師数については、全国値240人に対して、富山県は242人でほぼ全国平均に近い。都道府県の中では25番目となっている。


 人口10万人当たり歯科医師数については、全国値80人に対して、富山県は59人でかなり少ない。都道府県の中では7番目に少ない。


 2017年度の富山県の人口当たり国民医療費は、340千円であり、全国の値と同じであり、都道府県の中では28番目となっている。
 北海道と四国、九州、中国で、人口当たり国民医療費が大きくなっている。

 ちなみにこの地域分布は後期高齢者医療事業費での一人当たり診療費とある程度の相関がある(R2=0.51)。

 ⇒後期高齢者医療事業の診療費



 他方、富山県での人口あたり歯科医療費は、18.9千円/人で全国値22.9千円/人の84%に留まり、都道府県の中では4番目に少ない。


 また富山県での人口あたり薬局調剤費は、51.9千円/人で全国61.6千円/人の87%に留まり、都道府県の中では6番目に少ない。
 (この要因については、よくわからない。)



(2) 医療関係諸指標の相関
 次の表は、医療関連の各都道府県の統計指標(人口当たり指標)の相関を整理したものである。

国民
医療費
高齢化
比率
後期
高齢化
比率
医師数病床数入院率外来率平均
在院
日数
看護師
・准看
護師
有訴率日常
生活に
影響の
ある者
国民医療費1.000








高齢化比率0.618 1.000








後期高齢化比率0.627 0.975 1.000







医師数0.686 0.178 0.222 1.000






病床数0.921 0.616 0.645 0.590 1.000





入院率0.920 0.586 0.618 0.592 0.986 1.000




外来率0.572 0.376 0.390 0.343 0.468 0.453 1.000



平均在院日数0.693 0.495 0.514 0.442 0.817 0.796 0.388 1.000


看護師
・准看護師
0.869 0.652 0.700 0.590 0.945 0.940 0.514 0.751 1.000

有訴率0.291 0.084 0.041 0.405 0.094 0.099 0.123 -0.012 0.053 1.000
日常生活に
影響のある者
0.609 0.629 0.677 0.536 0.506 0.479 0.305 0.349 0.544 0.573 1.000

 以下で述べる概要を予め整理しておく。
 まず国民医療費と相関の高いのは、病床数、入院率、医師数、高齢化比率などである。
 このうち病床率と入院率の相関は極めて高い。
 病床率については、さらに在院日数や看護師准看護士数等との相関も高い。
 高齢化比率は、他指標とある程度の相関があるが、必ずしも高くはない。


(3) 人口当たり病床数
 前項でみた入院受療率は、人口当たり病床数と極めて高い相関がある。これは医療機関がその病床の状況に応じて入院の是非を判断しているとも見られよう。
 医療関係の諸指標は、病床数と強い関連を持っている。


 また、人口当たり病床数は、在院日数ともある程度の高い相関がある。


 次に、医師数及び高齢化比率を用い、病床数を回帰分析で求めると、その重相関(決定係数)は0.596となりある程度の説明力がある。
 ちなみに富山県、石川県、福井県の2014年の人口10万人当たり病床数はそれぞれ1643床、16798床、1571床であり、概ね医師数と高齢化比率での説明に対応している。(2015年データによる)





(4) 人口当たり医療費
 医療費は病床数の多寡で決まる面が強い。

 国民総医療費は厚生労働省によって、まず翌年度に概算医療費が発表される。ただし、この積算は医療保険関連医療費で労災や全額自己負担医療は含まれない。そして翌々年度に確定値としての医療費が発表され、概算は確定値の約98%となっている。
 統計の利用ではこの二つの統計を混同しないよう注意が必要である。

 各都道府県の医療費は、病床数とかなり強い相関がある。
 富山県は、病床数が若干多い割には、医療費は若干少なめとなっている。


 医師数と医療費についても相関はあるが、それほど高くはない。


 高齢化比率と医療費の相関は低いものに留まっている。

 なお後期高齢者医療事業費の診療費との相関はある程度ある。



回帰統計
係数標準誤差tP-値
医師の追加説明力
重相関 R0.9375 切片196.5587 12.4072 15.8423 0.0000
重決定 R20.8789 病床数0.0708 0.0059 12.0461 0.0000
補正 R20.8732 医師数0.2065 0.0621 3.3252 0.0018
高齢者の追加説明力
重相関 R0.9217 切片218.3138 17.7338 12.3106 0.0000
重決定 R20.8495 病床数0.0791 0.0069 11.4204 0.0000
補正 R20.8426 後期高齢化比率1.0814 1.4911 0.7253 0.4722
医師・高齢者の追加説明力
重相関 R0.9419 切片166.8344 20.7410 8.0437 0.0000
重決定 R20.8872 病床数0.0620 0.0076 8.1845 0.0000
補正 R20.8792 医師数0.2351 0.0628 3.7461 0.0005


後期高齢化比率2.3866 1.3519 1.7654 0.0848
 各都道府県の医療費は病床数に強い説明力があり、医師数がそれを補っている。高齢者比率の説明力は弱い。


 右図は医療費の決定要因を図示したものであるが、詳細は省略する。
 


 このような分析から見れば、各地域の人口あたり医療費の多寡は、病床数、医師数といった医療サービスの供給要因から決まる面が強く、高齢者比率といった需要要因は弱いということになる。

 際限のない医療への努力は、財政的困難をもたらしている。これは、既にイヴァン・イリイチが指摘しているとおり、医療行為自体が我々の手から取り上げられ自己増殖的に拡大しているということであろう。
 我々は、欲望を全開にするのでなく、自然の生を素直に受け入れていくことを検討していく必要があるようだ。日常生活でも、医療、保健の現場でもこれをシステムとして内包していくことが求められている。
 しかし、医療サービスの需要に対して潤沢な供給が望ましいことは事実であり、その抑制は、医療サービスの実態をしっかりと観察しつつ、対応していくべきであろう。




(5) 人口当たり歯科医療費
 都道府県毎の人口当たり歯科医療費については、当地で従業する歯科医師数と相関がある。
 医師が増えれば医療費も増えると考えられよう。ただし、治療需要が多ければ医師が増えるという因果関係も否定できないだろう。


(統計データ)

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(Sep.30,2019Rev.)