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世帯変化の構造
─ライフサイクルの移行に伴う世帯類型の変化─

 国勢調査での世帯類型は、同一世帯に2組の夫婦がいる場合は若い方の夫婦を基準としてその親、その子供などという表現をしている。
 同じ年齢で子供がいる世帯に属する人でも、その人自身は親(基準となる人)の場合も子供の場合もあり、注意が必要である。


 個々人のライフサイクルの推移に伴う所属世帯類型の変化の典型的なパターンとして、「@出生時に両親がいる世帯(場合によっては祖父母もいる世帯)から出発し、A青年期に単身となり、B結婚して夫婦世帯となり、Cほどなく子どもが生まれ夫婦と子供の世帯となり、D子供の独立によって再び夫婦のみ世帯となり、さらにE配偶者との死別により単身世帯となる(子供夫婦と同居する三世代世帯に身を寄せる場合、あるいは施設等に住む場合もある(D))」という推移が描けよう。


 こうしたシナリオについて富山県と全国を比較すると、富山県は、夫婦がその親と住む三世代居住の比率が高い。これは家族が支え合って生活していることを意味し、肯定的な県民性として捉えられる。県内で勤めるのであれば、大概自宅からの通勤が可能であり、敢えて転居する必要がないことが背景にある。またこうした事情もあり、広い持ち家があることが、同居をさらに容易にしている。
 これは一般的には、安定した生活を支える世帯類型となっていると言える。



 このようなライフサイクルの推移に伴う世帯類型の変化の典型的なパターンに対して、近年問題となっているのは、一つは母子世帯(A)である。


 夫との死別の場合もあるだろうが、離別が増えているとされる。この場合父子世帯を形成することは少なく、母子世帯となることが多い。そして、母一人での所得は十分でなく、父親からの養育費の提供も乏しいことが多いとされる。


 また、単身世帯も急速に増加している。
 単身者の増加は、非婚の増加、死別のある高齢者の増加が背景にある。
 ただし、富山県では、全年齢層を通じて単身世帯が少ない。


 非婚による単身世帯の増加は、主体的選択としての単身の増加もあろうが、実質的には結婚を意図しても経済的理由等で世帯形成が困難な単身者(B)が増加しているとされ、社会的課題を抱えている。


 現在、有配偶率のピークは、女では60歳代前半にあり、男では70歳代後半にあり、概ね80%前後であるが、今後低下していくと見込まれる。


 ちなみに、ある程度の年齢となっても、親の世帯に同居し続ける独身者(C)も増加しているとされている。例えば、富山県の高齢者の65-84歳層では配偶者のいない子供がいる者が40%程度いる。
 かつてはパラサイトシングルと呼ばれ、独身を謳歌する者として捉えられることも多かったが、現在では否定的に捉えられることが多い。


 各自にとっての世帯の類型は、結果としては個々人の選択であろうが、それが意図しない、やむを得ない選択であれば問題含みと見る必要があろう。そして、所得補填、税、住宅等々の制度については、特定のシナリオに乗った世帯類型のみを支援するのでなく、多様な世帯類型の存在を許容していくことが必要であろう。
 例えば、非親族が共同して一つの住宅に住むことがもっとあってもいいのかもしれない(ただし、家計を一つにしない限り、世帯は別となる)。


家族を巡る課題
 家族の形態の選択は極めて個人的課題であり、外からとやかく言うことではない。しかし家族生活が営まれる社会環境は、家族に大きな影響を与えるとともに、その社会環境の整備は重要な社会的課題である。

 福祉の充実は当然必要であるが、家族の自立指向を阻害するようなものであってはならない。社会福祉と自立の均衡の取り方は、社会の選択である。
 高齢者の支援方策として施設と在宅の仕分けをどうしていくかも社会福祉施策のありようにかかっている。ゴールデンプランは在宅を旨としているが、そのための対応も慎重に準備されなければならない。
 一方、高齢者が社会的に支えられるようになれば、高齢期の支援を期待して困難な子育てを行う気持ちは萎えてくる。このため、社会全体では子育てが不可欠だが、只乗りを決め込む人が増えてくる。これに対応し、子育てへの動機付けをどのように維持していくかも困難な課題となっている。
 さらに、規模が小さくなり、足腰の弱くなった家庭を外から支える仕掛けとして、地域社会をどう再構築していくか、ボランタリーな活動をどう展開していくかも課題となっている。

(統計データ)

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(Dec.05,2021Rev./Nov.01,1997Orig)