次頁節目次章目次表紙

第4章 堅実な生活
第2節 安心した暮らし
第3項 介護保険

1.介護サービス
─高い介護度認定、施設利用への特化─

(1) 要介護度の認定率
(2) 介護サービスの種類と費用額
(3) 要介護度別利用介護サービスの構成
(4) 利用介護サービスの構成の都道府県比較

 これまで、富山県の介護保険料が相対的に高額であった背景には、高い介護度の認定が多いこと、サービスとして施設利用に偏っていることが挙げられる。しかし、状況は大きく変わりつつあるようだ。


(1) 要介護度の認定率
 75歳位以上の高齢者(後期高齢者)の要支援・要介護の認定を受けている者の比率は、富山県では千人当たり321人で、都道府県の中では、25番目の多さとなっている。
 この認定率は地域によって偏っており、関東、中部の都県で低く、一般に、四国・中国・九州、近畿の一部で高いようだ。
 このような差異の要因としては、@地域によって健康度に差があるため、A後期高齢者だけでも地域によって年齢構成が異なるため、B健康状態と認定の関係が一定でないためなどがあろう。
 富山県の認定率については、率自体は次第に高くなっているが、近年、都道府県の中での相対的位置では下がってきているようだ。


 前後期高齢者に分け、介護度別に認定率を見ると、後期高齢者については、要支援では相対的に低いが、で要介護ではかなり高くなっている。これは健康度の実態とは考え難い。むしろサービスを受給し易いので認定しているという面があるのではなかろうか。


 ちなみに前期高齢者、特にその要支援1,2の認定率はかなり低くなっている。これは、要支援の認定を受ける価値をあまり認めていない面があるのだろう。

(Sep.20,2021Rev.)




(2) 介護サービスの種類と費用額
介護保険によるサービスの種類
 数値は富山県の2022年度費用額(百万円) 総額111310
居宅サービス40180 訪問通所34219  訪問介護10230
  訪問入浴介護361
  訪問看護1970
  訪問リハビリテーション395
  通所介護13608
  通所リハビリテーション3904
  福祉用具貸与3751
 短期入所4725  短期入所生活介護4196
  短期入所療養介護(老健)493
  短期入所療養介護(病院等)31
  短期入所療養介護(医療院)5
 居宅療養管理指導499
 特定施設入居者生活介護(短期利用以外)736
 特定施設入居者生活介護(短期利用)1
居宅介護支援5206
地域密着型サービス22770 定期巡回・随時対応型訪問介護看護711
 夜間対応型訪問介護3
 地域密着型通所介護4018
 認知症対応型通所介護1326
 小規模多機能型居宅介護(短期利用以外)4407
 小規模多機能型居宅介護(短期利用)3
 認知症対応型共同生活介護(短期利用以外)8692
 認知症対応型共同生活介護(短期利用)3
 地域密着型特定施設入居者生活介護(短期利用以外)22
 地域密着型特定施設入居者生活介護(短期利用)-
 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護2882
 複合型サービス
(看護小規模多機能型居宅介護・短期利用以外)701
 複合型サービス
(看護小規模多機能型居宅介護・短期利用)1
施設サービス43154 介護福祉施設サービス19339
 介護保健施設サービス15461
 介護療養施設サービス314
 介護医療院サービス8040
 保険給付の費目には多様なものがあり、さらにしばしば区分が変更されている。近年では、幾つかの施設での「短期利用以外」と「短期利用」の区分け、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」、「複合型サービス」、「介護医療院サービス」の追加などがあるが、これらは新設というより、既存施設の区分が明確化されたもので、各施設の経年変化を見る場合には留意が必要である。特に、2016年度から、これまでの居宅サービスの訪問通所介護の一部が、地域密着型に繰り入れられているので注意が必要である。
 同一費目のサービスの単価(当該サービスを受ける者一人当たりの利用額)には地域差はないようであるが、地域によって多様なサービスの利用の度合いが異なることが総費用の格差の背景にある。


 こうした制度の下で、2022年度の介護費用額の総額は、全国で12兆4947億円となっており、65歳以上高齢者1人当たりでは、301千円であった(ただし、予防は含んでいない)。
 このうち富山県は、費用額1113億円、高齢者1人当たり332千円で、都道府県の中では6番目の大きさとなっており、相対的に急速に増加している。


保険料と介護費用額の相関
 当然のことではあるが、保険料は介護保険の利用に係る費用額と相関がある。
 ちなみに、富山県については、費用額の割には、保険料は若干低めとなっている。


 保険給付額の地域によっての差は、まず被保険者の年齢構成の差異によるところが大きいであろう。ただし、このために起こる保険料負担の格差は全国ベースで調整されていることはいうまでもない。
 次いで、介護度の認定状況の違いがあり、さらに、利用サービスの選択の問題がある。


 サービス毎の利用者一人当たり給付額を見ると、毎日終日サービスを受ける施設入所サービスが当然に高くなり、中でも医療系の療養施設サービスが最も高くなっている。(在宅系サービスでは、一人の人が複数種類のサービスを受ける可能性が高いことに留意しておく必要がある。)
 また、地域密着型の施設利用も高く、居宅系サービスでも通所・短期入所といった施設利用型で高くなっている。



(3) 要介護度別利用介護サービスの構成
 右図は、富山県での支援・介護度別にサービス給付費用額の構成を表したものである。
 まず、要支援の構成比は全体の4%に満たない。要介護では介護度3が比較的大きく、介護度1・2は若干小さい。
 サービス項目の構成では、当然であるが介護度が高いほど、施設サービスの構成が大きくなっている。


 右図は、全国の支援・介護度別サービス給付費用額の構成であり、富山県に比べて療養施設サービス・医療院サービスの構成がかなり少ないことなどが目立つ。



(4) 介護サービスの構成の都道府県比較
 全体の費用を居宅サービス(居宅介護支援を含む)、地域密着サービス、施設サービスに分け構成比を都道府県間で比較すると、富山県は施設サービスの構成比が高くなっている。


 ちなみに、介護度別に構成を見ると、富山県では介護度4,5で施設サービスがかなり高くなっている。


 右図は要介護度別の利用介護サービスの構成を都道府県比較したものである。富山県では高い要介護度で、利用が施設サービスに偏っていることが明らかである。


 次に、居宅サービスの費用額を通所、短期入所、その他に分けその構成比を比較すると、富山県では、施設利用以外のその他が特に少なく、短期入所がかなり大きくなっている。


 富山県では、介護サービスの利用が施設利用に偏っており、さらにその中では療養医療に偏っている。このため、給付の総額が高いものとなっている。


 介護度別に構成比の変化を見ると、介護度が上がるにつれて、保健から福祉、さらに療養医療へと移っていく。


 ちなみに、施設サービスの定員を福祉、保健、療養に分けた構成比では、富山県では療養が特に大きい。



 このようなサービスを選好し、高い保険料を甘受するのであれば、それなりの見識であろうが、所得の少ない人への別途の手当の充実が必要であろう。
 これに対して、県等では、在宅でのサービス利用の比率が高まるよう呼びかけている。
 たしかに、在宅が正常な形といえるかもしれないが、多様な事情から、また施設が充実しており、施設利用偏重となることは、避け難いようである。

 富山県は、なぜ施設指向になったのか。
 かつて1970年代には、高齢者当たり入所型高齢者福祉施設の定員数が全国で最も少なかった。そして、家族で支えあっており、他地域ほどに施設を充実する必要がないという説明があった。多少は病院が福祉施設の代替をしていたという事情があったとしても、その時点なりの事実であったと考えられる。
 しかし、1980年代以降、特別養護老人ホームの整備充実に鋭意努力し、2000年頃には全国平均を超え、介護保険制度のもとでも施設増強の努力を続け、全国でもかなり充実した(定員数の多い)県となっている。
 結果として、収容できる施設があるので、その定員の範囲で活用しており、富山県であっても入所を希望して待機している人が多い。

 ⇒サービス受給者延べ数の構成

(統計データ)

次頁節目次章目次表紙

(Oct.27,2023Rev./Mar.09,2011Orig.)