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第4章 堅実な生活
第2節 安心した暮らし
第2項 高齢者の暮らし

3.社会保険
―大きな公的年金―

(1) 年金保険
(2) 医療保険
(3) 介護保険

 高齢者の生活にとって、各種社会保険は重要な意味を持っている。
 特に、富山県での年金受取額は極めて大きいようだ。
 医療保険、介護保険については別項で触れ、ここでは保険料について見ておくが、富山県での支払い保険料は、都道府県の中では中程度となっている。


(1) 年金保険
 年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)には、地域統計の集計がなく、ここで入手できた情報を整理しておく。
 家計調査の二人以上勤労者世帯の統計には家計収入として公的年金が掲載されている。これによると、富山市の世帯の公的年金収入額(2017〜2019年平均)は58千円/月であり、全国の23千円/月の約2.5倍となっている。さらに都道府県の中でも最も大きく、2番目の福井の40千円/月とも大きく離れている。
 統計が二人以上勤労者世帯であり、高齢者の同居率が高いことにもよるが、高齢者自身の受取額が大きいことも間違いないであろう。


 働く世代(20〜59歳)の公的年金への加入状況を都道府県毎に見ると、富山県は加入者の構成では第2号被保険者(雇用者保険本人)の比率が高く、また非加入者の比率は低い。これは、就業者の状況から見てある程度予想されることである。現在年金を受け取っている世代でも、雇用者保険の比率が高く、結果として、大きな額となっているとみられる。

厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」による検討

(統計データ)

(2) 医療保険
 後期高齢者医療保険(2020,2021年度)の平均保険料月額は5,742円であり都道府県の中では22番目の高さとなっている。
 概して大都市都府県で高く、東北等で低いと言えよう。
 この医療保険については、給付額の約1割を賄うこととなっており、実際の給付額に換算すれば、高齢者一人当たり平均月額57千円程度となる。
 5742/0.1=57420



 ちなみに、後期高齢者医療保険(2020,2021年度)の収入年額187万円の人の保険料は、富山では4,449円/月となっており、都道府県の中では25番目の高さとなっている。
 この保険料が高いのは北海道、九州・四国などの諸県であり、平均保険料の分布とはかなり様相が異なっており、むしろ、保険医療費の分布と重なっている。


 なお、後期高齢者医療保険料は、全国平均では、着実に増加している。
 しかし、富山県については、2010年代半ばは横ばい気味に推移しておりが、2010年代後半以降急速に上がっている。




(3) 介護保険
 富山県内の第8期(2021-2023年度)第1号保険料(65歳以上)月額は9保険者平均で6,301円であり、都道府県の中では高い方から14番目に位置している。なお第7期では、6,028円で22番目となっていた。
 かつて月当たり保険料が、5,000円を超えると、支払いが厳しくなる人がかなりでてくるとされていたが、既に困難な状況に陥っていることは事実であろう。
 都道府県毎の平均保険料については、例外はあるが概して日本海沿岸諸県で高く、関東、東海の都県で低い。
 ちなみに第1号保険料は、介護保険給付額の約2割(18%)を賄うこととなっており、実際の給付額に換算すれば、高齢者一人当たり平均月額35千円程度となる。なお第7期のこの額は30千円であった。
 6301/0.18=35006

 なお、介護保険料は、基本的には増加基調で推移しているが、制度の変更で緩急がでている。
 富山県については、第7期(2018-2000年度)は前期に比して横這いであったが、第8期でかなり増加している。


 対象となる年齢層の違い、実際の保険料の所得による違い、さらに年齢層による平均的受給額の違いなど、整合性は全くないのだが、取り敢えず、介護保険と医療保険について、高齢者は月々約12千円負担し、87千円受け取っていると言えよう。
 この差額は、他の年齢層の被保険者の保険料及び税で賄われている。


 県内の各保険者毎の保険料については、富山市の6,600円から、下新川の5,578円までの差がある。
 この差の要因は分析できていないが、氷見では介護保険制度が開始された2000年時点でも保険料が最も低く、やはり社会福祉協議会の活動がしっかりしているといわれていた。また下新川では(特に宇奈月地域では)、社会福祉協議会がしっかりと活動し、在宅での介護を実現していると聞いている。
 ⇒第7期富山市介護保険料



 このような負担は、団塊の世代が後期高齢者となる'20s以降は極めて厳しくなり、破綻するのではなかろうか。
 高齢者にとっての保険料の負担が限界にきているとよく言われるが、本質的には保険利用の限界にきているようにも思われる。
 今後、両保険制度をどう改革していくかは、国全体の課題であるが、地域としては、全体の給付額が極力少なくなる工夫をしていく必要がある。
 ただし、単純に在宅介護を推奨するなど負担を他者に転嫁することは極力避ける必要がある。
 このためには、まず、地域の人々それぞれが、健康で自立して生きていける期間がなるべく長くなるよう、生活習慣を工夫していくことが必要であり、各自がそれぞれなりに範を垂れるよう努めることが肝要であろう。
 また、既存の家族を超えて、いろいろな機会に共に活動し、普段から地域社会での多様な繋がりを形成し、自立が困難になって来た際もある程度までは、共に支え合う仕掛けとなるよう工夫していくことも重要であろう。
 どうも、新たな「心の習慣」を形成していくことが求められているようだ。

(統計データ)

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(May.19,2021)