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第3章 モノづくり指向の産業
第3節 事業所

第1項 事業所の特性
―県民サービスは小規模多数の事業所―

(1) 業種別事業所
(2) 従業者規模別事業所分布
(3) 資本金階級別事業所分布

 製造業の事業所は比較的規模が大きくある程度多数あるが、県民サービス関連の事業所は小規模で多数あり、都市型サービス(対事業サービス)の事業所は小規模で少ない。

 「経済センサス-基礎調査」は、統計法(平成19年)によって定められた新たな基幹統計調査で、事業所及び企業の経済活動の状態を調査し、すべての産業分野における事業所及び企業の従業者規模等の基本的構造を全国及び地域別に明らかにすることを目的としている。また、各種統計調査実施のための基礎資料ともなる。なお、これまでの事業所統計等を引き継ぐものでもある。
 なお、調査対象範囲は、すべての事業所及び企業であるが、農林漁家に属する個人経営の事業所、家事サービス業及び外国公務に属する事業所は除かれている。
 国勢調査による産業別就業者数と異なり、農林漁家に属する個人経営の事業所は含まれないため、多くの兼業農家での農業従事者(主として高齢者)を除外する結果となっているが、富山県などでは、より産業の実態を表すのかもしれない。


(1) 業種別事業所
 事業所総数は、ほぼ5万5千所(54,613所)あった。
 産業大分類の業種では、卸売業・小売業(14,498所)が際立って多い。
 次いで、建設業(6,021所)宿泊業,飲食サービス業(5,735所)製造業(5,132所)生活関連サービス業,娯楽業(4,816所)となっている。

 ⇒業種中分類詳述

 富山県の人口当たり事業所数を全国と比較すると、まずものづくりの建設、製造で多い。農林業も多い。第3次産業では、卸小売、生活関連サービス、教育学習支援の対生活サービスで多いが、これは散居する県民にサービスを提供するという経緯があったためといえよう。医療福祉も全国より若干多いが、この普及は自動車社会となってから公的施策として展開したため細かく散らばらなかったといえよう。
 一方、情報通信や不動産など都市的サービスは人口当たり事業所数が全国に比して少ない。
 なお、金融保険、その他のサービスなどは生活サービス・事業所サービスともに含まれ、多くなっている。公務の事業所が多いことも際立っている。



事業所数従業者数事業所当たり
従業者数
全産業5461356184610.3
農業,林業435581313.4
漁業3979420.4
鉱業,採石業,砂利採取業432886.7
建設業6021420777.0
製造業513213079725.5
電気・ガス・熱供給・水道業101420141.6
情報通信業397785119.8
運輸業,郵便業11182373921.2
卸売業,小売業144981009697.0
金融業,保険業10241266212.4
不動産業,物品賃貸業203076403.8
学術研究,専門・技術サービス業1902116796.1
宿泊業,飲食サービス業5735405227.1
生活関連サービス業,娯楽業4816214454.5
教育,学習支援業22852465310.8
医療,福祉39347121918.1
複合サービス事業432521412.1
サービス業(他に分類されないもの)4161365538.8
公務(他に分類されるものを除く)5101373026.9
 一方、従業者総数は約56万人(561,846人)であった。これは2010年国勢調査の就業者総数は546千人を上回っている。
 産業大分類では、製造業(130,797人)が最も多く、次いで、卸売業,小売業(100,969人)である。製造業は事業所当たり従業者数が25.5人/所と特に大きい。これに対して、卸売業,小売業は7.0人/所と小さい。
 二大業種に次いで、医療,福祉(71,219人)、建設業(42,077人)、宿泊業,飲食サービス業(40,522人)が並ぶ。建設業は、事業所当たり従業者数が7.0人/所に留まっている。



人口当たり事業所数
富山が少ない富山が多い









富山が小さいH 運輸業,郵便業
L 学術研究,専門・技術サービス業
M 宿泊業,飲食サービス業
G 情報通信業
K 不動産業,物品賃貸業
P 医療,福祉
D 建設業
N 生活関連サービス業,娯楽業
Q 複合サービス事業
I 卸売業,小売業
O 教育,学習支援業
J 金融業,保険業
R サービス業(他に分類されないもの)
C 鉱業,採石業,砂利採取業
S 公務(他に分類されるものを除く)
富山が大きい
B 漁業
F 電気・ガス・熱供給・水道業
E 製造業
A 農業,林業
 産業大分類で富山県の事業所数(人口当たり事業所数)と事業所規模(事業所当たり従業者数)を全国と比較すると、富山県の産業の特徴が浮かんでくる。
 製造業の事業所は比較的規模が大きくある程度多数あるが、県民サービス関連の事業所は小規模で多数あり、都市型サービス(対事業サービス)の事業所は小規模で少ない。



(2) 従業者規模別事業所分布
 製造業事業所数の従業者規模別分布については、小規模な事業所が圧倒的に多いのだが、相対的には、富山県では、中堅から大規模な事業所が多くなっている。
 これは石川県・福井県とは明確に異なる特徴である。


 製造業事業所規模別の従業者数の分布が、中堅から大規模で多いが、これらの事業所は誘致企業もあるが地場で生まれ育った企業も多く、ことが、富山県の雇用の強さに繋がっていると考えられる。




 小売事業所数の従業者規模別分布については、小規模な事業所が圧倒的に多く、富山県では相対的にも大規模な事業所が少ない。




(統計データ)


(3) 資本金階級別事業所分布
 2016年の経済センサス活動調査(速報)で、富山県に本所がある企業の常用雇用者数について、資本金階層別での構成比をみると、他の県に比べて資本金規模が大きい企業のウエイトが大きくなっている。富山県より大規模企業のウエイトが高いのは、東京・大阪・愛知・千葉・京都・神奈川で、富山県はこれらに次ぐ埼玉・広島・福岡と並ぶ位置にある。
 つまり大都市圏以外の地域では、地場の大企業の雇用者の比率が最も高いと言えよう。
 そしてこれらの企業の経営者の多くは、地域社会のリーダーとして多方面で活躍しておられ、自ずとその雇用環境を良好なものとなっている。結果として、富山県全体としても、非正規雇用の比率が低いなど、働くための優れた場が形成されている。


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(Sep.16,2017Rev.)