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第5章 ゆとりある郷土
第2節 居住環境
第2項 給排施設

2.汚水処理
―高い下水道普及率―

(1) 汚水処理
(2) 処理方法
(3) 処理方法の選択

 富山県での下水道の整備は、一部の市町を除き、概ね一段落している。


(1) 汚水処理
 排出する汚水が下水道や合併浄化槽等により処理がされている人口の比率は、富山では、96.8%(2018年度末)であり、大都市圏の都府県に次いで高くなっている。


 富山県の処理率が高いのは、公共下水道の精力的な整備の結果である。
 下水道の整備には時間がかかるが、富山県の普及率は、1980年代末以降急速に上昇している。これは、小矢部川流域下水道の供用が始まった時期である。



(2) 処理方法
 汚水処理の手段を大別すると、各戸の汚水を下水道で一カ所に集めて処理する方法と、戸別に浄化槽(合併浄化槽)で処理する方法、及びバキュームカーで収集し処理する等の方法がある。

 富山県での下水道の整備は、市町村によって差があるが、全体としてはその整備事業のピークを超えている。また、これまで整備が遅れていた地域でも急速に整備を進めている。
 なお、南砺の五箇山や黒部の宇奈月など人口がまばらな地域では、合併浄化槽の導入により早い時期から、汚水処理を実現していた。




(3) 処理方法の選択
 人家が散らばっている地域は、下水道整備では整備効率が悪く、浄化槽を選択することとなる。ちなみに、浄化槽による処理は各戸にとっての負担はあるが、その処理水準は、決して不十分なものではない。
 このため、総人口を分母としている下水道普及率は、100%を目指すべき指標ではないし、そのまま都道府県間の比較をする指標でもない。
 下水道の普及について、国勢調査で都市地域と規定される人口集中地区(DID)との比をみると、富山県は224%で長野に次いで高い。下水道整備の範囲の目安として下水道本管と各戸、各集落の位置関係等が規定されており、DID(人口密度40人/ha超で5000人以上の集積する地域)が、下水道整備の目安という訳ではない。しかし、公共下水道が都市地域を超えて散居地域に広がっていることが分かる。




 各都道府県での3つ型の下水処理の構成とDID人口比率との関連を見ると、公共下水道の比率が高いのは、大都市地域のDID人口比率の高い地域である。DID人口比率の低い地域では、浄化槽等もかなり用いられている。
 こうした中で、富山県はDID人口比率が低いにかかわらず、公共下水道の比率が高い。

 ちなみに、国土技術政策総合研究所は、各地域で人口減少が進む中で維持更新可能な汚水処理システムとして、人口500人規模のユニット型の開発を進めている。費用は現在の公共下水道に比して4割減とのことである(北日本新聞2014.8.23.)。



 下水道と浄化槽との選択については、古くから議論されてきた課題であり、国からの補助金制度との関係で、事業総体としての経費からみれば、下水道の選択が過剰に行われてきているとはしばしば指摘されてきた。
 富山県にあっては、かつて流域下水道の整備が選択されて、小矢部川流域の高岡から砺波平野全体にかけての地域が、あるいは神通川左岸の富山市の海岸線から八尾までの地域がその範囲とされ、個々の市町村がこの決定の下で整備を行ってきており、個々のきめ細かな判断がなされなかった経緯がある。
今後は、維持管理費の負担が厳しいものとなっていく恐れがある。
(一概にこのように言うことができないという指摘もあろう。しかし、かつての砺波平野の市町村内部での流域下水道の整備に対する疑問の声を聞いたこともある。ただし、現在の国から補助金が支給される制度の下で、このようなことを公に述べることは困難であることにも留意しておく必要がある。)

(統計データ)

 上述の内容は、マクロ統計の分析から推測したものである。
 2012年の『富山県全県域下水道化構想2012』では、各種処理方法の経済性等を比較検討した計画であるが、浄化槽処理人口は、35千人(2012年)から26千人(2021年)に減少することになっている。
 これは既存の浄化槽処理区域に新たに下水道を整備していくとともに、ある程度の人口減少も見込まれるということであろう。そして、浄化槽処理がふさわしいような人家のばらな区域で追加的に整備すべき個所は存在しないということであろうか。少なくとも市町村による整備事業としては計上されていない。

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(Sep.13,2017Rev.)