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第5章 ゆとりある郷土
第2節 居住環境
第1項 住宅

2.住宅建設
―住宅投資の終焉―

(1) 建築戸数の推移
(2) 住宅取得のタイミング
(3) 貸家建築の増加
(4) 戸当たり面積


(1) 建築戸数の推移(利用関係別)
 富山県での新設着工住宅戸数の推移を利用関係別に見ると、かつては持家が主体であったが、バブル経済期以降は貸家もある程度の比重を占めるようになっている。
 長期的に見て、持家の着工は、人口の変動と対応しており、団塊の世代・団塊ジュニアの世代の結婚・新世帯形成期にピークを形成している。現在は団塊孫世代に入りつつあり、これが着工数の横ばいとなって現れているとみられる。今後、2020年代には一層の減少局面へと移行していくであろう。
 貸家の着工については、景気変動、経済施策の展開と対応しており、相続税の課税強化や低金利の中での資産運用等で着工が一端増加したが、2017年以降これが落着き減少している。つまり貸家の着工については、貸家を求める借手の需要というより、貸家の建築を求める家主の建築需要が現れている。今後は、消費税引き上げ対策にともなう変動があろうが、長期的には、一層の減少の可能性がある。
 以上のように新設着工住宅戸数が次第に減少していく可能性が高いが、一方で県内の総世帯数、住宅の耐用年数に鑑みれば、リフォーム需要がそれなりに増加していく可能性もある。このため、今後の住宅建設需要の検討については、新設以外の建築需要も勘案していく必要があろう。


 2023年は総数で5034戸となった。
 長期的減少の趨勢の中で、まもなく5千戸を割るのではなかろうか。今後の動向を注視していく必要がある。


 このような経緯の結果、2020年の富山県の新設着工住宅戸数の構成を見ると、持家の比率が58%を占めている。この比率は、貸家の着工で2017年では50%を割っていたが、再び大きくなり、都道府県の中でも8番目となっている。



(2) 住宅取得のタイミング
 ちなみに、富山県では世帯を形成すると早期に住宅を持つ傾向があり、世帯主の年齢別に持ち家率を見ると、30歳代後半には60%までに届いている。
 この結果、持家の着工戸数は人口の変動(年齢ウェーブ)と連動することとなっている。


 なお、現居住地の所有率を年齢階層別に見ても、当然ではあるが概ね同様の傾向である。

(統計データ)

(May.24,2020Add.)



(3) 貸家建築の増加
 新設着工住宅戸数を所有関係別に建て方別の構成を見ると、持家ではほぼ全てが戸建て、貸家では過半が長屋建てなどとなっている。


 新設着工住宅の戸数の構成を建て方別で見ると、長屋建てが'90末から漸増し、'00年代央以降には1000戸/年台で横ばいで推移している。このタイミングでの増加は、退職期に至った団塊の世代の資産運用が背景にあると考えられる。
 さらに2016年には、相続税対策としての増加が見られたが、その後は減少している。


 なお、全国各地域でも富山と同様の推移が見られる。
 特に、富山県では、'90年代の半ばまで、長屋建ては殆どなかったが、その後急増し、'10年代後半に入って減少に転じている。



(4) 戸当たり面積
 2018年の富山県の新設着工住宅の戸当たり面積は101m2で、都道府県の中では、8番目の広さとなっている。
 これは、貸家の比重が高まったことが背景にあり、全体平均で次第に狭くなってきている。


 全国各地域でも漸減の傾向が見られる。


 新設着工住宅の戸当たり面積の推移を利用関係別に見ると、持家については、次第に縮小し、かつては170m2/戸近くあったものが、現在では130m2/戸に近づいている。
 貸家は、50m2/戸で横ばいが続いている。ちなみに、この水準は全国平均に近いものである。


 建て方別での着工住宅の面積は、概ね戸建が持家に、長屋建てが貸家に対応してい変化してきている。


 地域社会全体として見た場合、既に空き家率が高く、人の口減少から世帯数の減少がはっきり見えだす段階で、今後とも空き家率の上昇が予想される。
 このため、資産運用としての貸家建設は極めて危ういこととなっている。
 新たな住宅建設を直接抑制することはありえないだろうが、少なくとも景気浮揚策や省エネ策として建設を浮揚させる施策は、好ましくないのではなかろうか。
 また、都市整備の見地から、しっかりとした土地利用政策の展開が必要である。
 いずれにしろこのような住宅建設を取り巻く環境についての認識を社会で共有していくことがまず大切であろう。

(統計データ)

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(Mar.01,2024Rev.)