4.地域づくりの方向性

(リベラリストの立場)

 地域社会づくりの方向性として、「@一体となって力強い社会」、「A多様性を許容して豊かな社会」といった異なる方向性の主張がある。
  ⇒倫理的立場についての詳述

 @の方向は「保守」の立場で、どちらかといえば、現在の我が国の方向性であり、【生活】については、多様性を許容せず、効率的ではあるが結果として画一的な社会を指向する。【産業】については、技術を極め振興を促す。建設業や農業も含め、モノづくりに一層邁進する。ただし、このための財政的支援には限界がある。【郷土】については、さらに基盤施設の整備を続けようとする。これには景気浮揚の狙いも含まれる。ただし、都市をコンパクトにまとめることは実現しにくい。
 Aの方向は「リベラリスト」の立場で、【生活】については、各種格差の是正に配慮し、一人ひとりの自由な活動を謳う。しかし、現時点では内容が十分に見えず、実際にどれ程の人が生活の仕方を変え始めるか疑問がある。【産業】では、事業経営者が進取の気性を持って取り組むことが基本となる。ただし、自律的に活性化できるか懸念が大きい。【郷土】では多様な既得権等の制限が必要となる。しかし合意を得ることが難しい。

 「富山を考えるヒント」でのシナリオは、Aの方向によるものである。
 しかし、国政全体が@に傾いており、国政に拘わらず、県としてこのような方向を採ろうと主張しても、現在の財政制度等の中では実現の難しいことが多い。
 さらに、現在の県政自体も@に沿っている。
 こうした中で、地域社会でのAのシナリオは、どのような意味を持ち得るのか。極めて弱い主張となってしまう。しかし、@に沿ったシナリオの危うさを指摘し、それなりの変更を促す可能性はあろう。
 このシナリオを契機として、地域社会の在り方について議論が深まれば幸いである。

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(Aug.19,2016Rev./Jan.02,2015Orig.)