地域社会の捉え方

集団類型論の系譜
テンニースゲマインシャフトゲゼルシャフト
クーリー第一次集団第二次集団
マッキーバーコミュニティアソシェーション
高田保馬基礎社会派生社会
【社会類型論】
 社会集団の類型として、大きく近代以前の類型と近代以降の類型に二分する捉え方がある。

マッキーバーの類型の概念
コミュニティ地域性と共同生活の存在と共属感情による
基礎的社会集団
共同関心により成立
なんらかの自足性を持つ
アソシェーション特定の類似の関心に基づいて限定的目標を
達成するための集団
人為的に構成
 ちなみに、社会学では、マッキーバーがコミュニティに対峙し、地縁に縛られないボランタリィな集団として、アソシェーションを挙げている。


パットナムによるソーシャルキャピタルの分類
性質Bonding(結合型)
例;民族ネットワーク
Bridging(橋渡し型)
例;環境団体
形態Formal(フォーマル)
例;労働組合
Informal(インフォーマル)
例;バスケットボールの試合
程度Thick(厚い)
例;家族の絆
Thin(薄い)
例;知らない人に対する相槌
志向Inward Looking(内部志向)
例;商工会議所
Outward Looking(外部志向)
例;赤十字
(資料)内閣府「ソーシャル・キャピタル:
豊かな人間関係と市民活動の好循環を求めて」
調査委託先(株)日本総合研究所 平成14年度
【ソーシャルキャピタル】
 現代社会の中での人と人の繋がりの重要性を喚起したのは、R.パットナムであり、「ボーリング・アローン」の出版等を契機に我が国でもソーシャルキャピタルの議論がなされている。
 敢えて整理すれば、ソーシャルキャピタルでの人と人の繋がりで、結合型を核とした人の集まりがコミュニティとなり、橋渡し型を核としたものがアソシェーションとなろう。


【公共圏】
 他方、社会組織の歴史的な変遷として、社会学者J.ハバーマスは、公共圏を提起している。
 かつて近代化以前の社会では、都市地域を除けば、生活の殆どはそれぞれの村の範囲内で、家族・地域社会が助け合い自給自足で行われていた。近代化以降、次第に市場経済が入り込み、雇用されて働き、給与を得、商品を購入し、消費するという生活が一般的になっていった。さらに、様々な社会の課題を解決するため、政府が多様な役割を担い、我々の生活を支えるようになってきた。そして、従来、家族・地域社会が担っていた機能は、市場・政府に委ねるようになり、かえって自らの発想による主体的生活を失っていった。
 こうした中で、自らを取り戻すために、主体的に議論することが必要で、その場が必要であるとしたのは、J.ハバーマスであり、公共圏での熟議を提唱している。民主主義の機能不全が言われる今日、大切な視点であろう。ただし、しかるべき議論がなされるか疑問があるとしてN.ルーマンと論争がなされていた。
 また、市場・政府が導いていくところは、必ずしも我々の思うところでないにも拘わらず、次第に巻き取られていってしまうと注意を促したのは、H.アーレントである。こうした課題は、現代社会に生きる者に取って、日々考えていくべき不可欠な主題となっている。


 現代社会の具体的な課題としては、先進国での経済成長が続かなくなり、市場経済の下では配分の課題が解決できず、様々な格差が生じ、暮らし難さが顕在化してきたことであろう。自由主義経済を標榜する政府の下では、様々な格差是正策が十分には機能せず、多様な課題が顕在化している。
 こうした中で、市場・政府には、委ね切れないものがあるとして、家族・地域社会の在り方が議論され、コミュニティ、ボランティアといった言葉が飛び交っている。
 ただし、市場・政府が担わない機能を再び家族・地域社会が安易に引き受けることにも課題があろう。J.ハバーマスの言う公共圏での熟議を展開し、政府の在り方の変更を促していくことがまず大切であろう。
 これを前提とした上で、家族・地域社会の繋がりの中で、改めて多様な機能を形成していくことは、否定する必要はない。


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(Feb.20.2020Rev.)