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過去の国による人口予測
―偏った予測―

 かつて統計学の世界では、人口推計は、将来推計の中で最も確実なものとされてきた。これは、出生率が比較的安定し、死亡率は着実な低下を続けていたためである。
 しかし、昭和40年代末以降この前提は崩れ、短期間に破綻を来す推計が重ねられるようになってきた。
 現在の出生率・死亡率の趨勢に必ずしも新たな変化は見られないが、国の推計には一定の偏りがあるのではなかろうか。
 なお、2006年12月に行われた推計では、出生率に関しては、こうした偏りからは解放されたようである。
 (国の公式の人口推計は、社会保障人口問題研究所により、概ね5年毎に、国勢調査の結果を踏まえて行われている。)

出生率の仮定
 具体的には、人口推計の基本的なパラメーターである出生率(合計出生率)については、その低下は程なく止まり再び上昇するという仮定を続けてきており、その修正を繰り返してきた
 出生率が昭和48年をピークとして低下し始めた当初は、石油危機の時期と重なっており、経済変動による先行き不安による低下で、景気回復とともに出生率も回復するとした。次いで、出生率の低下は、晩婚化の進行による低下で、晩婚化の限界で回復するとした。現在は、生涯未婚率の低下に限界を設定し、夫婦の生涯出生率を仮定し出生率が減少後一定程度回復するとしている。

 出生率の仮定は難しく、回復のための積極的な施策展開がないのに自律的に回復するということにはできないであろう。


死亡率の仮定
 一方、人口推計のもう一つのパラメーターである死亡率については、平均寿命が世界最高水準となり、各年齢階層それぞれで先進諸国の中での最低の死亡率が限界としたが間もなく破綻した
 現在は、死因別死亡率から推計を組み立てているが、人はいずれかの死因で死ぬのであって、死因間の相互関係の調整が難しく、推計が必ずしもうまくいっていない。
 なお、死亡率の低下については、現実に、下げ止まりの兆候が現れ始めている。


 しかし、これまでの変化の趨勢は、逓減しているわけではなく、やはり偏向が伴っているようである。
 特に女の趨勢の押さえ方が厳しい。




ミニマックス原理に背く仮定の偏り
 以上の結果、これまでの人口推計では、合計特殊出生率、死亡率とも実際より高く見積もり、結果として高齢者比率を低く見積もり続けてきている。
 このような乖離は、高齢化社会への対応策の検討においては、高齢化の程度を低くみることで、結果として不十分な対応になってしまう危険性を孕んでいた。
 これまでの年金制度等の検討でも、結果として、甘い推計を繰り返してきていた訳である。
 人口を始めとする各種の将来推計は、中立的推計を行い、社会の正しい共通認識を形成することがまず必要である。
 その上で、政策の検討では、ミニマックス原理に基づき、高齢化が最も進んだ場合でも、対応可能な内容を検討していくことが当然であろう。
 起こりうる損失(最大の損失)をできるだけ小さくすると考えればミニマックス、確実に獲得できる利得(最小の利得)をできるだけ大きくすると考えればマックスミニ戦略。

(統計データ)

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(Feb.21,2015Rev./Mar.13,1998.Rev.)